米国は中国のIT産業にも神経をとがらせ、通信機器の大手メーカーを締め出さんばかりの施策を打ち出している。だが、つながる世界の事情はそう単純ではない。ITやデジタルの分野で世界を牽引してきた米国のシリコンバレーと中国のIT産業は仕事の面でも人材の面でも直結している。

 かつてはデジタル技術の研究開発をシリコンバレー企業が担い、それを様々な機械に搭載する段階で、日本メーカーに試作を依頼、中国のメーカーの下で量産するという分担があった。ところが中国企業が力を付けてくるにつれ、試作の段階から中国側が受注する動きが顕著になり、日本企業はバイパスされつつある。

 さらに、ここへ来て中国側の技術競争力が高まり、開発自体を中国で進め、一部の業務をシリコンバレーに発注する逆転現象がみられるようになっている。中国でコンピュータサイエンスを学んだ優秀な学生がシリコンバレー企業に就職、その後米国で独立、起業したり、中国に戻って起業し、シリコンバレー企業と連携したりするといったことは当たり前になった。さらに米国の優秀な学生が中国のIT企業に入ることもしばしばある。

 一方で数年前、こんなことがあった。日本のIT企業と中国のIT企業をマッチングするイベントがあった際、訪中した日本企業の幹部は「一緒に組んで米国市場を開拓しよう」と話し掛け、中国企業の幹部はにこやかに応じていた。だが、イベントを企画した担当者によると「出席した中国のIT企業はすべて米国と取引実績がすでにあった」という。

 米国のIT企業の経営トップはめっきり日本に来なくなった。中国を定期訪問する際、時間に余裕があれば日本に数時間立ち寄る程度である。

 貿易戦争で日本が叩かれたのも、ハイテク日本ともてはやされたのも過去の話だ。オープンな世界の中で日本企業はどう存在価値を発揮していけばよいのか。