コロナ禍でテレワークやオンライン会議をはじめとした非対面でのビジネスが当たり前になる中、システム・メーカーやIT企業などの開発部門におけるテレワーク対応が難しくなっている。ものづくりの開発に携わる現場やマネージャーはこうした時代をどう乗り切っていけばいいのか。数多くの企業に対して開発部門のテレワーク化を支援してきた、ゴール・システム・コンサルティング チーフコンサルタントの真道久英氏にポイントを聞いた。聞き手は大石基之(日経BP総合研究所クリーンテックラボ所長)

真道久英氏(写真:西 雄大氏)

コロナ禍でテレワークが進む中、システム・メーカーやIT企業などの開発現場を取り巻く環境はどうですか?

真道氏 弊社のクライアント企業のうち開発部門について見ると、程度の差はあるものの緊急事態宣言が出てからは全体の9割近くの現場でテレワークとなりました。同宣言が解除された後は、それらのうち6割以上の現場でテレワークは緩和されています。

 開発現場では、必要に迫られてテレワークを実施したところが多くありました。当初はツールの使い方ひとつ取っても戸惑いがあり、生産性が落ちました。

 その後、担当者レベルではツールの使い方にも慣れることで、オンラインで関係者と資料共有をしながら議論したり、些細な相談事はチャットでやり取りするなどして普通に業務を進めることができるようになったと聞いています。

 ただ、画面上では相手の表情が読み取りづらく、本当のところ相手がどう考えているのかわかりづらいということはあるようです。1対1ならオンラインでも良いですが、複数人だと議論がしづらいと感じている人も少なくありません。

 一方で、マネージャー層からは、指示に基づいて担当者が検討した内容が、出来上がってみるとイメージしていたものと違い軌道修正が必要となり、ロスが発生しているという声がよく聞かれます。

 マネージャーは、直近よりも中長期的な視点での心配が強く、「現在は何とかやれているものの、今後新しいメンバーが入ってきた場合にどうなるのか?」と考える傾向が強いようです。既存のメンバーについてはその「人となり」が分かっているので、非対面であっても仕事を任せて、ツールも活用しながらミーティングもして仕事を進められるわけです。

 しかし、これから入ってくる新入社員が相手だと、「一体どうなるのか見えない」という不安がマネージャー側にあります。現段階で開発パフォーマンスの大きな劣化は見られないものの、今後についてはどう対応していくべきなのか見通せていません。

 少なくとも完全なリモートワークで業務が円滑に進む様子は想像できず、対面・非対面をどうやって組み合わせるべきか悩んでいるようです。テレワークが一時的あるいは緊急避難的なものにとどまらない場合、今後の大きな不安要素になってくると思います。

真道久英氏(写真:西 雄大氏)

真道さんは、数多くの企業向けに、開発部門のテレワーク化を支援してきていますが、どういう分野がテレワークに対応しやすいのでしょうか?

真道氏 開発の担当者層からは、テレワークは、分野を問わずやってみれば意外とやれるものだというのが率直な感想が出てきます。実際にソフトウエアや制御系の開発現場からは、テレワークには別段の問題はないと言う声が多く聞こえてきます。

 メカ系の開発においても、自宅でCAD作業ができる環境が整いつつあるところが多い状況です。装置を使う実験であっても、事前にその意図や内容をきちんと伝えておけば、自分が出社しなくても他のメンバーにやってもらうことも可能だと聞きます。加えて、今後はリモートでの測定を実施できるような環境を整えようとしているところもあります。

一方で、開発部門のテレワーク化には、どのような課題が顕在化してくるのでしょうか?

真道氏 テレワーク導入前には問題にならなかったことが浮上してきています。例えば、関係者との認識合わせという点では、これまでは口頭や簡単な絵を描くことで済ませることが多かったわけですが、認識合わせのために、資料を逐一作る必要が出てきて時間がかかるという声が出ています。ただ、このことに関しては、きちんと資料を作って関係者の間で合意することこそが本来あるべき姿だと認識され始めています。

 アイデアの起案やいわゆる「根回し」ということになると、対面でないとだめだとの声もあります。リモートでは相手の表情が捉えづらく、本当に相手がこちらの言うことに納得・同意しているのか測りかねるからです。このことに関しては意見が割れていて、資料をきちんと作り、電話等も併用すれば大丈夫なのでは、という意見もあります。ただ、課題として感じている人がいるのは事実です。

 加えて、一部のマネージャーや開発者からは、「現地現物」でこそ気付きやインスピレーションが得られるのであり、テレワークではそれが抑制されてしまうのではないかという懸念が出ています。まだ顕在化しているわけではありませんが、耳を傾けるべき指摘だと思います。

 このように見てくると、テレワークすべきこととそうでないことを峻別することが必要で、一律にどちらかにするのは危険と考えます。

<<後編に続く>>