かつては低賃金の豊富な労働力を武器に「世界の工場」として君臨した中国。近年は人口ボーナスが低下し、人件費が上昇するのに伴い、各産業はスマート化へのモデル転換を迫られるようになった。現に中国の産業用ロボット市場は8年連続で世界一の座をキープし、2020年のロボット設備の導入量は世界全体の44%を占めるという。中国におけるロボットの応用シーンは徐々に成熟している。(日経BP 総合研究所)

 ロボットは今やますます速いペースで私たちの生活に溶け込んでいる。ホテルでは問い合わせに応じたり荷物を運んだりするサービスを提供し、レストランでは料理を運び、工場では貨物を運搬し、手術室では精細な操作を担う……。「経済日報」が伝えた。

 中国機械工業連合会(CMIF)の執行副会長で、中国ロボット産業連盟の執行理事長を務める宋暁剛氏は、「中国のロボット産業は急速に勢いよく発展しており、今や重要な転換期にさしかかった。第14次五カ年計画期間には、中国独自のロボットブランドがこのチャンスをつかまえ、産業チェーンの弱い部分を早急に補完して、『ボトルネック』となっている問題を解決し、質の高い発展を実現する必要がある」と述べた。

応用シーンが徐々に成熟

 中国のロボット研究開発の歴史は1970年代に遡ることができるが、産業化プロセスが始まったのは2010年以降のことだ。産業化に牽引されて、産業全体が急速発展の段階に入った。

 工業・情報化部(省)の辛国斌副部長は、「中国の産業用ロボット市場は8年連続で世界一の座をキープし、2020年のロボット設備の導入量は世界全体の44%を占めた。同時に、サービス用ロボット、特殊ロボットの発展のポテンシャルが発揮されるようになり、20年は全国の一定規模以上(年売上高2000万元<1元は約17.6円>以上)のサービス用ロボット及び特殊ロボットのメーカーの売上高が前年同期比41%増の529億元に達した。

 宋氏は、「現在、中国独自ブランドのロボットは研究開発・設計、基幹部品、完成機の集積応用、基準・テスト・認証など各方面で整った産業チェーンを基本的に形成し、量が多く範囲が広い中国工業の基本的ニーズをほぼ満たしている」と述べた。

 宋氏の分析によれば、中国は製造業の規模が世界で最も大きく、工業分類が最も整い、質の高い製造へと発展する能力と基礎がすでに備わっている一方で、中国の人口ボーナスが低下し、人件費が上昇するのに伴い、各産業はスマート化へのモデル転換を迫られるようになった。質の高い発展とモデル転換の過程で、中国製造業ではロボット産業に対する極めて大きな市場ニーズが生まれた。また新型コロナウイルス感染症が発生したことで、無人化や少人数化の流れがより一層明確になり、ロボットに対する市場ニーズがさらに大きくなった。

 サービス用ロボットの分野では、スマート社会とスマートホームの2つの主な方向性に成長の勢いが見える。

 宋氏は、「中国は人口大国で、社会でのサービスにしろ家庭でのサービスにしろ、潜在的な市場がはっきりと見えている。ますます多くのサービス用ロボットが家庭に入り込んで、掃除や教育、つきそいなどの任務を担うようになり、サービス用ロボットはこれから急速に爆発的成長を迎えることになるだろう」と述べた。

 ロボット産業のリーディングカンパニーである新松ロボット自動化股份有限公司の曲道奎総裁は、「ここ数年でロボットはサービス、医療、健康、教育、セキュリティなどの分野で徐々に発展し拡大してきた。今後はこうした市場の規模が産業用ロボット市場を急速に上回る可能性が高い」との見方を示した。

 ロボット市場が勢いよく発展し、新たな注目分野が次々に登場するのに伴って、ロボットをめぐる資本市場の競争がかつてないほど熱を帯びている。調査会社の天眼査の大まかなデータ統計によると、今年1-8月には、中国ロボット産業への融資は60件以上に上り、資金調達額は120億元を超えたという。

 この数ヶ月間には、ロボット市場がさらに熱を帯び、有名企業数社が業界の枠を超えて相次いでロボット製品を打ち出した。8月10日には小米が犬型ロボットの「サイバードッグ(鉄蛋)」を発売し、8月20日にはテスラが人型ロボット「オプティマス」を開発すると発表し、9月7日には小鵬汽車が初の馬型ロボット「小白龍」を発表した。

細分化された市場に飛躍のチャンス

 9月27日、杭州海康ロボット技術有限公司が次世代自律走行搬送ロボット(AMR)アーキテクチャ/プラットフォーム「智能基座」を発表した。

 AMRはここ数年のロボット産業で最大の注目分野と見なされている。海康公司の副総裁兼AMR業務部部長の呉永海氏の説明によると、現在、同社のAMR業務がサービスを提供する世界の企業は累計1500社を超え、これまでにAMRを3万台以上引き渡ししたという。

 独自ブランドが細分化された競争の中で業務を深く掘り下げることの優位性がますます顕在化している。泰合資本の馬曄贇副総裁が述べるように、ロボット企業が真に固めるべき外堀は業界の認知、コストの優位性、製品の布陣だ。将来のリーディングカンパニーは、「設備サプライヤー」から「ソリューション・サービスプロバイダー」へとモデル転換を遂げるべきだ。

 細分化されたとはいっても、どの分野も非常に大きな市場だ。宋氏は、「これはもう一つの転換期だ。海外ブランドは現在、主に汎用型ロボットを作っているが、収益力が低下すれば、今度は細分化された分野で力を入れるだろう。中国独自ブランドの最大の優位性は現地ブランドであることで、細分化された市場でより必要とされるロボット製品とその部品を開発し、独自の知的財産権を形成したり、イノベーションを通じて海外ブランドに追いつき、併走し、さらには追い越したりする上で有利な立場にある」と述べた。

 ロボット産業の発展には整った産業チェーンとニーズのある環境が必要だ。そのためロボット産業パークは中国のロボット発展の過程でますます重要な役割を果たすようになった。大まかな統計によると、ロボットメーカーの自社利用が中心のパークを除いて、20年には全国のロボット産業パークは85ヶ所を超えた。

 宋氏は、「ロボット産業の発展には産業界と地方政府が力を合わせる必要があり、一部の製造業が集まった地域で、現地のモデル転換・高度化のニーズとの真の融合をはかり、ロボット産業チェーンを構築することができれば、ロボットメーカーの発展にとってプラスになる。しかし一部の地域には無計画なロボット産業パークの建設現象も見られ、関係当局は指導と規範化を進めて、土地や資金などの資源の大量の浪費を防ぐ必要がある」と述べた。(出所:人民網日本語版)