「機械学習などAI(人工知能)技術を使って新たな事業をつくれないか」。経営陣からこう指示された人もいれば自ら考えている人もいるだろう。「ヘルスケア(医療・健康)分野に進出できないか」。これもよく聞く言葉である。ヘルスケアは巨大市場であり、それまで参入していなかったとしても自社の技術や顧客基盤を生かせば新事業をつくれるかもしれない。

 AIとヘルスケアを組み合わせた新領域の一つに「デジタルメディスン」がある。医療・健康にデジタル技術を適用する取り組みの総称で、このうち疾患の改善や健康の向上に役立つソフトウエア(スマートフォンやタブレット端末のアプリなど)をデジタルセラピューティックスと呼ぶ場合もある。デジタルメディスンやデジタルセラピューティックスは医薬品のように臨床試験を行い、効果を示せれば当局から承認を得られ、保険の適用も受けられる。

 インド出身のマヤンク・シング氏が率いるインピュートは、AIを使ったデジタルメディスンを開発する日本のスタートアップ企業である。エレクトロニクスの研究者であったシング氏は、なぜデジタルメディスンに取り組むのか、2回にわたって掲載する。前編では、起業の理由やどのような事業を構築したのかを聞いた。

View:ハード研究からAI起業へ

 光ファイバーなどハードウエアの研究者であったシング氏は新しい事業をやろうと考え、ソフトウエアの分野に転身した。世界各国の産業振興の動きを見てハードウエアではもう勝てないと判断し、「できないことができるようになる」技術とシング氏が呼ぶAIソフトウエアに目を付けた。

 分野としてヘルスケアを選んだのは「遺伝子の振る舞いなどは実に複雑でまだまだ分かっていないことが多いから」である。機械学習などAI技術を使って切り込めば新たな発見や事業につながると考えた。

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