市場の概要
・美味しい食べ物を目当ての旅行が増える
・日本の場合、魚に可能性
・水揚げされた港の近くで消費

攻略のポイント
・漁協の理解と協力を得る
・流通できない魚を調理する人材
・廃棄率を下げるIT
・宿泊施設の充実

 外国人観光客が日本に来る大きな理由に「食」がある。食が目的となる旅をフードツーリズムと呼ぶ。これは日本が観光立国を目指すうえで不可欠である。

 その先進国はイタリアでアグリツーリズモと呼ばれる。農家が営む民宿に泊まり、その土地の食材とワインを楽しむ旅を指す。

 有形のモノ消費から無形のコト消費へと急速に移り変わっていく今、日本でフードツーリズムを産業にする有力な手立ては魚を主役に引き上げることだ。その地方ならではの、旬の魚を食べさせられる店は、これからますます注目されフードツーリズムの主役になれる。旅行者の「胃袋」をつかまえられればリピーターになってくれる可能性が高まる。美しい景色はすぐに飽きるが、美味しいものは簡単には飽きない。

 地方ごとにそこでしか食べられない魚があることがフードツーリズムの基礎になる。外国人から人気に火が付いた魚がやがて日本人にも広まっていく。タダ同然だった魚が高級魚に変わり、新たな市場が開ける。外国人に人気という口コミが広がれば、日本人も動き始める。日本人観光客まで取り込めば一気に広がる。決まった食材を大量に用意する必要があるチェーン店とは一線を画した、その地方ならではの飲食店を整えていけばフードツーリズムの拡充につながる。

 漁業従事者の所得が増え、サステナブルな漁業を実現できる。このように魚協にとっても得るものは大きい。食品ロス率を下げたい政府方針とも合致する。

 従来、漁協は売れる魚しか扱わないため、捕獲数の少ない珍しい魚は一般に流通されず、捨てられるかタダ同然で引き取られていた。水揚げされた魚のうち35パーセントは捨てられているという実態がある。マグロやサンマなど特定の魚種に偏っていては差を付けにくいし、隣国と獲り合いになってしまう。

 美味しいが珍しい魚を訪日観光客に食べてもらうには、どの港に、どんな魚が揚がったかを把握し、その魚を望む飲食店や旅行者に伝えることにより、魚の廃棄率を下げ、ムダなく売りさばくアプリと情報システムが不可欠だ。伝えるだけではなく料理店の予約や決済までできるようにすれば、旅行者にとって利便性が増し、評判も上がる。魚は水揚げされた港の近くで消費させることが重要だ。したがって、どんな魚でも調理できる料理人と料理店を地元で確保する。必ずしも和食である必要はなく、イタリアンや中華でもよい。リスクを取って地方で店を開く人材を見出し、それを支援する体制が求められる。地元では飲食店だけでなく宿泊施設も整える。その土地における観光客1人あたりの消費額を上げるには宿泊させることがカギとなる。宿泊代が落ちるだけでなく、飲食回数もアルコール類の消費も増える。

 訪日外国人が消費する飲食代は1兆円を超えるが、東京や関西など大都市圏での消費額が大きな割合を占めている。これを地方に広げることができればパイが大きくなる。東京オリンピック・パラリンピックがある2020年、政府は訪日外国人客数4000万人の目標を掲げており、さらなる伸びが期待される。外国人の行先も、これまでの東京、京都、大阪といったゴールデンコースから多様化が進み、全国くまなく外国人が訪れるようになってきている。

 なお、以上は漁業(魚)だけでなく、農業でも同様のことが言える。