社会が成熟し、ニーズの多様化が進んだことで、企業の継続的な成長、あるいは業績維持が難しくなっている。単一の商品やサービスをマス市場に販売できなくなってきた。従来と同じモノやサービスを提供しているだけでは顧客は離れていってしまう。

 重要なのは顧客が真に求めているもの、顧客の成長を後押しするソリューションを生み出し続けること。今までに見たことや体感したことがない価値を提供できれば顧客はついてくる。とはいえ、これほど成熟した社会で、今までにない、そして大きなビジネスにつながる価値を生み出すことは容易ではない。

 新たな価値を生み出すには元々あまり接点がなかった業界同士が同じ目的のために協調していく必要がある。それには社外に門戸を開き、外部と積極的に連携することで複雑な問題の解決を目指す「開社力」が欠かせない。

 一例として、超高齢化、地域の医療体制不足といった社会課題を背景としたリモートケアのソリューションを考えてみよう。遠隔診療、薬の処方、ケアといった事業が含まれるが、病院、薬局、介護施設、食事を提供する事業者や管理栄養士、清掃や衣類のクリーニングサービス事業者、生活必需品などを運ぶ物流事業者まで、関係する業種は多岐にわたる。それぞれにIoT、AIといったテクノロジーを導入し、全体を結び付けるインテグレーションがこなせる人材も欠かせない。

 ところが開社力を発揮する取り組み、言い換えればオープンイノベーションを日本企業の多くが苦手としている。日経BP総研の調査では92パーセントの企業がオープンイノベーションの重要性を認識しつつも、実践していると答えた企業は38パーセントにとどまった(2017年5月に実施したアンケートによる)。つまり、6割以上の企業は実践できていない。

 オープンイノベーションが進まない理由は色々考えられる。自社の技術がナンバーワンだという過信、多様な事業を抱えていることに伴う内製意識の強さ、自前の技術の流出や成果物の横取りを恐れるあまりの秘密主義、成果を求めすぎる・失敗を恐れすぎることによる投資意欲の低さ、などだ。

 勤務時間を使って外部と交流したり、社内の情報を公開して協力を仰いだり、といったことに極めて消極的な企業が多い。とりわけ規模が大きい企業ほどそうなりやすい。

 大手の場合、外部との交流と情報公開をある程度進めているケースでも、判断や技術開発のスピードが外部の企業のそれに全く追いついていないことが多い。意思決定に関わるステークホルダーが多すぎる上に、セクショナリズムが強く、高品質を求めすぎる意識もある。

 開社力の弱さないし欠如は悪影響を及ぼす。従来のフレームワークを越えられず、新しい価値を生み出せない。急激な変化に鈍感になり、他社に後れをとる。潜在力のあるコア技術やアイデアを有効活用できない。従業員のモチベーション低下につながる。

 業績が伸び悩んでも斬新な対策を打ち出せない。ディスラプティブな(破壊的な)プレーヤーが登場し、市場を奪っていくのを、指をくわえて見ていることになる。業界あるいは海外の動向をつかめなくなれば世界の新しい常識も分からなくなり、ますます乗り遅れていく。

 企業組織の「生命力」を強くし、さらなる成長を目指すには、社外に求める技術やノウハウと自社で持ち続ける技術やノウハウを明確に区別するとともに、スピード感をもって効率的に社外の力を取り込むことと、そのための意識改革が欠かせない。