2021年になってから顕在化した半導体不足がいまだに深刻である。最も影響を受けている自動車業界では、新車を購入しても納車に数カ月待たされるといった状況であり、またその影響はほかの電子機器にも及んでいる。中国は、世界の生産基地と巨大な市場という2つの属性により、グローバルにおいての半導体産業の「2つのチェーン(産業チェーンとサプライチェーン)」の安定にとって非常に重要な存在である。その中国上海で開催された第4回中国国際輸入博覧会では、様々な半導体関連の製品が披露された。(日経BP 総合研究所)

 新型コロナウイルス感染症がぶり返す中、世界は「チップ不足」に直面し、半導体産業の発展に注目が集まっている。上海市で開催中の第4回中国国際輸入博覧会(以下、輸入博)で業界関係者が指摘したところによると、世界の生産基地と巨大な市場という2つの属性により、中国はグローバル半導体産業の「2つのチェーン(産業チェーンとサプライチェーン)」の安定にとって非常に重要な存在であり、とりわけ粤港澳大湾区(広州、仏山、肇慶、深セン、東莞、恵州、珠海、中山、江門の9市と香港、澳門<マカオ>両特別行政区によって構成される都市クラスター)の役割が期待されるという。中国新聞社が伝えた。

 中国商務部(省)対外貿易司(局)の張冠彬副司長は輸入博の会期中に開催された粤港澳大湾区半導体産業国際協力フォーラムで、「新型コロナが発生して以来、家での生活、仕事、学校において万物のインターネット(IoE)に対する各産業のニーズがさらに強まり、半導体産業の重要性がより際立つようになった。同時に、産業チェーン・サプライチェーンの安定とスムーズな流れを確保し、供給と需要の正確なマッチングを推進し、市場の予測の管理をしっかり行うことなどに対する要求がより高まった」と述べた。

 中国機械電器製品輸出入商会の張鈺晶会長は、「新型コロナが発生してから、情報通信技術(ICT)のニーズが高まり、川上の半導体産業の供給は持続的な不足に陥った。この産業は欧米とアジア諸国とで高度な分業が行われているため、局地的な新型コロナ流行によりもたらされたチップ問題が自動車や電子など川下の産業の生産や製品出荷に大きな影響を与えている」と述べた。

 中国は製造業大国であるとともに貿易大国でもあり、さらに半導体産業の重要な生産基地、消費市場でもある。グローバル半導体産業チェーン・サプライチェーンの安定を維持する上で、中国の役割に注目が集まっている。

 張冠彬氏の説明によると、中国は2020年に集積回路(IC)産業の規模が8848億元(1元は約17.7円)に達し、第13次五カ年計画(2016-2020年)期間の年増加率は20%に迫り、世界の同期の増加率の4倍になった。昨年のIC輸入額は3500億ドル(1ドルは約113.2円)、輸出額は1100億ドルあまりで、品目別で全国1位の貿易製品になった。そのうち、輸入は世界のIC貿易額の約3分の1を占め、世界の多くの半導体メーカーに広い市場を提供したという。

 張冠彬氏は、「半導体は高度にグローバル化した産業であり、国際協力を強化し、グローバルな製品の流通を促進することが、産業の健全で急速な発展にとって極めて重要だ。中国は半導体産業の関連分野での協力に対してこれまでずっと開放的で、支援し、奨励する態度を取っており、これは中国の利益に合致するだけでなく、世界各国の共通利益にも合致する。5Gやクラウドコンピューティング、モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)、スマートコネクテッドカーなど新興の応用に支えられ、今後も中国半導体市場の成長の余地は大きいと言える」と述べた。

 新型コロナがもたらした「2つのチェーンの停滞」だけでなく、半導体産業自体も技術をめぐる試練に直面している。半導体の発展の歴史の中で、ICに組み込まれるシリコンチップのトランジスタの数は18ヶ月で2倍に増えるという「ムーアの法則」はよく知られている。

 しかし、世界的なチップ大手のアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)のシニア副社長兼大中華圏社長の潘暁明氏は、「今ではムーアの法則は増加ペースが鈍化し、シリコンチップのトランジスタは平均すると3年で倍になる状況だ。エネルギー効率も3.6年でやっと2倍だ。今や新たなプロセスノードに入るたびにより長い時間をかけて技術の成熟と安定を保障しなければならず、全体としてコストも著しく増加した」と指摘する。

 通信産業は半導体産業が発展する時の主要な駆動力だ。中興通訊(ZTE)技術計画部の黄兵技術総監は、「予想を上回る発展を遂げる5Gが膨大な量のデータを生み出し、特にAIを始めとする応用の演算力へのニーズが増大し続けており、これに5Gは消費電力が大きいというボトルネックが加わって、先進技術に対応するチップが以前にも増して不可欠となった。同時に、個人情報とデータのセキュリティを保障するうえで、チップの安全性への要求もさらに増えることになった」と述べた。

 粤港澳大湾区は中国のチップ産業で最大の消費・応用市場であり、中国IC産業の地理的な位置において北京・天津河北、長江デルタに続く「第3極」と見なされている。この地区は産業の技術イノベーションの推進において厚い期待を寄せられている。

 広東省商務庁の馬樺副庁長は、「粤港澳大湾区は経済の基盤が厚く、産業システムが整い、イノベーションをめぐる経済が活発で、市場の規模・ポテンシャルが極めて大きい。ここには国家級のハイテク企業が4万社以上集まり、研究開発投資と有効な発明特許件数はともに中国全土で首位となっており、特許協力条約(PCT:Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願件数も中国の約半数を占めている。科学技術イノベーションの集積地であり、また投資や起業にとって『肥沃な土壌』であり、巨大なチャンスが内包されている」と述べた。

 米クアルコムの侯明娟グローバル副社長は、「豊富な経済の実力を備え、産業システムと中国トップレベルのインフラネットワークが整備された粤港澳大湾区は、5G産業の発展において 非常に顕著な優位性を持っている。5GとAIの結びつきにより多くの産業のデジタル化モデル転換が加速しつつあり、スマートでインタラクティブな新しい未来にエネルギーを与えると同時に、半導体産業のイノベーションを力強く推進することになるだろう」との見方を示した。(出所:人民網日本語版)

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