コロナ禍でテレワークやオンライン会議をはじめとした非対面でのビジネスが当たり前になる中、システム・メーカーやIT企業などの開発部門におけるテレワーク対応が難しくなっている。ものづくりの開発に携わる現場やマネージャーはこうした時代をどう乗り切っていけばいいのか。数多くの企業に対して開発部門のテレワーク化を支援してきた、ゴール・システム・コンサルティング チーフコンサルタントの真道久英氏にポイントを聞いた後編。聞き手は大石基之(日経BP総合研究所クリーンテックラボ所長)(前編はこちら

真道 久英氏(写真:西 雄大氏)

テレワークを緩和する企業が増える一方で、テレワーク(非対面)と通常の開発(対面)が混在することによる新たな課題にはどのようなものがありますか?

真道氏 テレワークが緩和された(あるいはテレワークをやっていない)従来通りの対面形式による開発現場で、本来(対面形式では)起こってほしくない問題が起こっているように見えます。今後再びテレワークに移行した際には開発パフォーマンスに大きな影響を与えるのではないかと懸念しています。これまでに見えてきている主な課題としては、例えば以下のようなことがあります。(1)開発プロジェクトのゴール・やるべきことの認識にずれがある、(2)メンバーからの心配事・リスクが表に出にくい、(3)トラブルを自分で何とかしようとする(しかし、そのトラブルはクローズしない)、といったことです。

 以降では、具体的に説明していきます。最初に挙げられるのが、(1)開発テーマの開始段階で関係者間でのゴール認識のずれがよく見られることです。開発の関係者間で議論をしてもらって初めて明らかになることが多い状況です。この認識違いが放置されたまま開発を進めると、途中での大きな方向修正や手戻りにつながる可能性があります。

 続いて、(2)リスクや開発メンバーの心配事が表出化されず、不安を抱えたまま(あるいは楽観的に)スタートしていることが挙げられます。これも検討を促すまでなかなか明らかにならないことですが、スルーしてしまうと実行中のトラブル発生や納期遅延につながります。この段階で明らかになったリスクや心配事に対処し始めると、多くの場合、日程が希望納期より大幅に遅れかねません。

 スタート段階でメンバーの心配事や不安をそのままにせず、きちんと社内で検討・整合してから着手できればよいのですが、それができなかった場合、結果、力業で何とかしようとしたり、それでもダメなら最後は日程を遅らせざるを得ない、といったことになってしまいます。

 そして、(3)開発途中で発生するトラブルをメンバーが何とか自分で解決しようとして、結果的にその問題をクローズするのが遅くなってしまうことです。担当者がいくら頑張っても開発が遅延するようであれば、関係者の誰も得をしません。

 これらはいずれも開発業務の「段取り」をないがしろにして、曖昧なまま業務を開始していることに起因していると言えます。そして、テレワークか否かに関わらず、解決すべき課題です。

真道さんがテレワーク状況下での支援を通じて分かった、テレワークで開発業務を進めるためのポイントは何でしょうか?

真道氏 端的に言えば、「開発プロジェクトを開始する時点でのやるべきことの明確化」、および「リスク・関係者の心配事のあぶり出しとその対策を含めた工程表作成」といった“段取り”に重点を置くことが重要になります。そして、プロジェクト開始後は、素早い意思決定を促すための見える化が大切になります。段取りとその過程における成果物を重視した進め方をすることで、テレワークにより開発業務を進めることは十分可能と考えます。

真道 久英氏(写真:西 雄大氏)

マネージャーが非対面時代を乗り切るためには、開発チームをどのようにマネジメントすればよいのでしょうか?

真道氏 過度な分業スタイルを避け、ツールをうまく使いながら「多頻度省時間」の精神で進めていることを関係者と共有するチームマネジメントが不可欠になります。積極的にテレワーク化すべきことと、そうでないことを意図的に峻別し、その際にはメンバーの「実感・納得」を常に意識することが必要と考えます。

 中でもとりわけ「段取り」の重要性を強調したいと思います。主なところでは、先ほど述べた課題との対応として、(A)開発テーマのゴール明確化とそれについての関係者の共通認識を得ること、(B)開発メンバーの心配事の表出化とその対応方法の検討、(C)必要な作業に基づいた根拠ある工程表作成と必要な日程の確保、といったことが重要になります。もちろん、前述したように、これらは通常の対面形式の業務においても見られる課題です。テレワークではその影響がより大きくなりますので、確実に対処したいところです。

 上記の段取りにおいては、必要な「成果物」をきちんと作成し残しておくことが大切になります。ハッキリと書き物に残しておくことで、テレワーク環境であっても皆が「同じもの」を見た上での議論が可能になるからです。

 オペレーションにおいては、過度な分業を抑制したチーム仕事をできるようにすることが重要です。開発現場では、ただでさえ分業に傾きやすく、他の人のすることに関心を持ちづらい状況にあります。テレワーク環境になると、これがさらに助長されやすくなります。こうした状況下で各自が「孤立無援」の状態で業務をしていては、チャレンジングな開発テーマの遂行は難しくなりますし、その中で必要となる創発的なアイデアも期待できません。

 これらは本来、テレワーク以前から必要だった組織能力と言え、テレワークによりその重要性がさらに高まったと理解するのが自然でしょう。

 最後に、テレワーク化すべきことと、そうでないことの峻別の重要性もポイントとしてあげておきたいと思います。現地現物の重要性を認識し、積極的に現地ですべき業務の抽出が必要になります。業務に集中できるからテレワークが良い、という声をそのまま受け取るのは危ないのではないでしょうか。