コロナ禍のニューノーマル(新常態)を体験したビジネスパーソンが捉える未来は大きく変容している。日経BP 総合研究所の大規模調査プロジェクト「5年後の未来に関する調査」では、脱炭素やDX(デジタルトランスフォーメーション)、ESG(環境・社会・企業統治)、働き方改革、ウェルビーイングなど多様なテーマの設問について、2020年春からの1年半で企業経営に携わるビジネスリーダーや、様々な部門でマネジメントを担う次世代リーダーを中心に、延べ1万6000人の回答を得た。「働き方」や「働く場所」に対する設問では、コロナ禍で広がったテレワークを軸に在宅とオフィスの勤務を両方取り入れる「ハイブリッドワーク」が主流になり、多くの業界でオフィススペースの削減が進むという見方の広がりが改めて浮き彫りになった。(本記事は、「5年後の未来に関する調査」の結果をベースに、50を超えるテーマや産業の未来シナリオを分析した企業向けレポート『未来調査2026 全産業編』の「第5章 働き方/街/生活の変化」から抜粋し再構成した)

■未来の働き方を企業も働き手も模索していく

 今後の5年間でビジネスパーソンの働き方は大きく変わっていく。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大を受けて人の移動や接触の抑制が緊急課題となり、コロナ禍前には予想もしなかった速さでテレワークという働き方が広がった。結果、働く場所は必ずしも職場である必要性がないことを多くの人が実感した。この気づきが企業と働き手の双方、そして社会が従来の働き方を見直す機会を与える。コロナ禍が収束に向かうとしても、この動きが止まることはない。

 働く場所の変化は、オフィスのあり方の見直しにつながる。コロナ禍でのテレワークは在宅勤務が主流だが、環境を整備すれば、必ずしも働く場は自宅である必要もなくなる。さらに、生活の場そのものが職場から遠く離れていても問題はないだろう。働く場所の制約がなくなれば、通勤や移動に費やしてきた時間からも解放されていく。

 働く場所と時間の制約が徐々に取り払われることで、働き手は自分のライフスタイルに合わせる働き方を選ぶようになる。少子高齢化が加速する時代に、企業が労働力を確保するためには、働きやすい条件を整え、仕事を続けやすくしていくことが求められる。以前からあった課題を解決する取り組みをCOVID-19の影響が後押しして、未来の働き方を企業も働き手も模索していくことになる。

■5年後にはコロナ禍前よりも「移動やヒトとの接触を伴う仕事は減る」

 これからの5年間で、テレワークは一部の企業、特に大企業だけが導入している特別な働き方ではなくなる。就職先や転職先を選ぶ際の大きな条件の一つにもなるだろう。今後の5年間は、テレワークとオフィス勤務の両方を取り入れる「ハイブリッドワーク」を軸に働き方を再定義する議論が世界規模で進むことになる。

 日経BP 総合研究所が2021年5月に実施した「5年後の未来に関する調査」では、「製造」「建設・不動産」「ICT(情報通信技術)」「物流・運輸/流通」の4つの産業/業種で働くビジネスパーソンの7割超が、5年後にはコロナ禍前と比較して移動やヒトとの接触を伴う仕事は減ると予測した。同年3月の調査では、5年後にテレワークが定着しているとの見方が6割を超えた。特にICT業界に勤務するビジネスパーソンでは8割に達しており、他の業界でも半数を上回る(図1)。

図1 多くの業界で「会社で仕事」は大きく減る
(出典:『未来調査2026 全産業編』(日経BP)、第5章)

■オフィススペース削減の議論は今後も続く

 テレワークによって働く場所が変われば、必然的にオフィスに対する考え方も変わる。オフィスで働く人数が減ると、従来と同じスペースは必要なくなる。2021年3月に実施した「5年後の未来に関する調査」では、ICT業界の勤務者の6割以上が5年後のオフィススペースは減るとみている(図2)。最も低い「建設・不動産」でも「減る」が3分の1を上回っており、オフィススペース削減の議論は、揺り戻しを繰り返しながら今後も続くことになりそうだ。

図2 ICTは「5年後にオフィススペースが減る」が過半数
(出典:『未来調査2026 全産業編』(日経BP)、第5章)

 テレワーク浸透の影響は、働き方の多様性を広げていく。「転勤族」という言葉まで生み出した日本企業の転勤制度にも変化が生じている。テレワークを中心に自社オフィスで働く必要がなければ、通勤圏内に住む必要はなくなるからである。2021年6月実施の「5年後の未来に関する調査」では、ICT業界のビジネスパーソンの約5割が遠隔地への異動辞令が出たときに、赴任せずに働くことができると回答した(図3)。製造業で働く人も、約3割が遠隔地に赴任しない異動を選べるという。

図3 ICTは5割、製造は3割が赴任せずに働ける
(出典:『未来調査2026 全産業編』(日経BP)、第5章)

 テレワーク導入は柔軟な働き方への最初の一歩にすぎない。企業は従業者の声に耳を傾けながら、従業者のQOL(生活の質)、さらには生産性の向上につながる働き方を追求していく必要がある。

<関連レポート>
未来調査2026 全産業編

『未来調査2026 全産業編』は、日経BP 総合研究所が2020年春から継続している大規模調査プロジェクト「5年後の未来に関する調査」の結果を基に、今後5年間で起こりうる社会動向や各分野でのトピックスを交えて、様々な業界における事業戦略の立案や新規事業・商品企画の推進で必要となる未来のエビデンス(客観的な裏付け)を集めた未来調査の決定版レポートです。
著者:日経BP 総合研究所 未来ビジネス調査チーム
A4判、316ページ、2021年11月12日発行

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