コロナ禍のニューノーマル(新常態)を体験したビジネスパーソンが捉える未来は大きく変容している。日経BP 総合研究所の大規模調査プロジェクト「5年後の未来に関する調査」では、脱炭素やDX(デジタルトランスフォーメーション)、ESG(環境・社会・企業統治)、働き方改革、ウェルビーイングなど多様なテーマの設問について、2020年春からの1年半で企業経営に携わるビジネスリーダーや、様々な部門でマネジメントを担う次世代リーダーを中心に、延べ1万6000人の回答を得た。世界景況に対する設問では、世界経済に対する明るい評価が2021年に入って急速に広がっている様子が見える。(本記事は、「5年後の未来に関する調査」の結果をベースに、50を超えるテーマや産業の未来シナリオを分析した企業向けレポート『未来調査2026 全産業編』の「第3章 グローバル/産業」から抜粋し再構成した)

 今後の5年間、世界経済はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)による後退から回復・成長を遂げながらも、その進み方は地域や業界など様々な切り口で二極化する。いわゆる「K字型回復」が多くの場面で見られるようになっていくだろう。例えば、「先進国」と「新興国・途上国」、コロナ禍の巣ごもり消費で業績が「急速に伸びた業界」と「大打撃を受けた業界」である。

 IMF(国際通貨基金)やOECD(経済協力開発機構)は2021年に公表した経済見通しで「断層」「亀裂」「均一ではない」といった言葉で格差拡大や分断に警鐘を鳴らしている。各国・地域におけるCOVID-19のワクチン普及率や政策支援による景気刺激策の行方、感染再拡大の動きなど、中期的な経済成長の先行きには不透明感が漂う。

■コロナ禍で格差は助長

 COVID-19の拡大で落ち込んだ世界経済は、今後の5年間に急ピッチで回復していくことになる。コロナ禍による不確実・不透明な状況はまだまだ不安材料ではあるものの、ワクチンの普及や各国の政策対応は主要国経済の回復に力強さを与えている。米国や中国をけん引役に、コロナ禍を乗り越える動きが本格化していくだろう。

 IMFやOECD、世界銀行は2021年に公表した経済見通しでm2021年と2022年の経済成長の予測を大幅に上方修正した。世界経済はコロナ禍前の水準を徐々に回復していくとの見方が強い。一方で、IMFやOECDは2021年に公表した経済見通しで「断層」「亀裂」「均一ではない」といった言葉で格差拡大や分断に警鐘を鳴らしている。各国・地域におけるCOVID-19のワクチン普及率や政策支援による景気刺激策の行方など、中期的な経済成長の先行きには不透明感が漂う。世界経済は総じて好転していく方向にあるとはいえ、国や地域によって回復は二極化していくことになるだろう。新興国や低所得国のワクチン普及や財政支援が遅れれば、世界経済の成長にとって大きな重石としてのしかかる可能性がある。

■日欧の回復力には懐疑的な見方

 日経BP 総合研究所が2020~2021年に実施した「5年後の未来に関する調査」では、国内のビジネスパーソンによる5年後の世界経済に対する評価が2021年に入って急速に明るい見通しとなっている様子が浮き彫りになっている(図1)。特に、米国と中国、新興国の5年後のビジネス環境が「良い状況になる」と評価する割合が高かった。

図1 5年後の世界全体のビジネス環境
(出典:『未来調査2026 全産業編』(日経BP)、第3章)

 この調査では、ビジネスパーソンの評価を基にビジネス環境を9段階(快晴、晴れ、晴れ時々曇り、曇り時々晴れ、曇り、小雨、雨、大雨、雷雨)の天気図で示している。2021年2月の調査では前回調査で「晴れ時々曇り」との予測だった米国は2段階上がって最も高い評価の「快晴」に、「晴れ」の予測だった中国は「快晴」と上方修正となった(図2)。これは、IMFなどの国際機関による見通しとほぼ同じ傾向である。前回調査は「雨」だった欧州と「小雨」だった日本もそれぞれ4段階と2段階の上方修正で、国内のビジネスパーソンは世界経済の先行きは総じて上向きという評価だ。

図2 5年後のビジネス天気図、米中・新興国は快晴に
(出典:『未来調査2026 全産業編』(日経BP)、第3章)

 ただし、国際機関の予測や経済指標の動きを見ると、中期的には回復の遅れから日本や欧州が低成長にとどまり、新興国がコロナ禍前の経済成長の水準を取り戻すのには時間がかかると指摘する見方は強い。「5年後の未来に関する調査」においても、日本と欧州に対する予測から雲は消えておらず、欧州などで再拡大するCOVID-19をはじめとする懸念材料は多い。予断を許さない状況と言えるだろう。

<関連レポート>
未来調査2026 全産業編

『未来調査2026 全産業編』は、日経BP 総合研究所が2020年春から継続している大規模調査プロジェクト「5年後の未来に関する調査」の結果を基に、今後5年間で起こりうる社会動向や各分野でのトピックスを交えて、様々な業界における事業戦略の立案や新規事業・商品企画の推進で必要となる未来のエビデンス(客観的な裏付け)を集めた未来調査の決定版レポートです。
著者:日経BP 総合研究所 未来ビジネス調査チーム
A4判、316ページ、2021年11月12日発行

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