コロナ禍のニューノーマル(新常態)を体験したビジネスパーソンが捉える未来は大きく変容している。日経BP 総合研究所の大規模調査プロジェクト「5年後の未来に関する調査」では、脱炭素やDX(デジタルトランスフォーメーション)、ESG(環境・社会・企業統治)、働き方改革、ウェルビーイングなど多様なテーマの設問について、2020年春からの1年半で企業経営に携わるビジネスリーダーや、様々な部門でマネジメントを担う次世代リーダーを中心に、延べ1万6000人の回答を得た。「5年後の未来に関する調査」の結果からは、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)は短期的にはビジネスへのマイナス影響が強く出ているが、中期的にはプラスの要素が増えると見る業界もあることが明らかになった。(本記事は、「5年後の未来に関する調査」の結果をベースに、50を超えるテーマや産業の未来シナリオを分析した企業向けレポート『未来調査2026 全産業編』の「第4章 ビジネス投資/人材戦略」から抜粋し再構成した)

■長期戦で冷静に自社事業を分析できた

 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の拡大によって、多くの業種でマイナスの業績が出ている。帝国データバンクによれば、2020年度の日本国内企業の売上高は全業界平均で0.2%の減収となった。また、COVID-19による緊急事態宣言など、ほぼすべての期間で大きな制限を受けた2021年1~3月期は4.5%のマイナスとなり、企業の売上高は大きなダメージを受けている1)

 業種ごとに影響の度合いを見ると、宿泊業や飲食店などでは売上高が前年度を大きく下回る結果となった。一方、通信やIT(情報技術)関連、教育、不動産が2019年度に比べて増収となった。世界ではワクチン接種が進む中国や米国で景気回復の兆しが見えてきたことで、一部の業種では2021年に急速な回復が見込めるところもあれば、自動車メーカーなど半導体不足による影響を受けて減産に踏み切ったところもあり、先行きが読めない情勢にある。

 しかしながら、1年以上にわたってコロナ禍が続いたことで、どのような分野で影響が大きいのか、将来的に回復が見込めるかなど、企業は冷静に自社事業を分析する時間を確保できたといえる。今後、事業の再構築や新規事業への取り組みが拡大していくだろう。

■5年後の予測は業界によって明暗が分かれる

 既存ビジネスではマイナスの影響を受けたところが多いものの、この危機によって既存業務の効率化をはじめ、新しいビジネスの開発や展開といったプラス面にもつながっている。さらに、中長期的にはプラスの要素が増えるとみる業種は多い。日経BP 総合研究所が2021年5月に実施した「5年後の未来に関する調査」では、ICT(情報通信技術)の業種のビジネスパーソンは5年後の予測としてCOVID-19のビジネスの影響は圧倒的にプラスに働くとみている(図1)。

図1 5年後のCOVID-19の影響、ICTの予測は楽観的
(出典:『未来調査2026 全産業編』(日経BP)、第4章)

 2020年度は業績が低迷し、マイナスの影響を受けたところが多い製造業でも、5年後はマイナスよりもプラスに働くとの見方が多く、この危機を乗り越えることで、大きな前進があるとの姿勢を見せる。ただし、物流・運輸/流通は5年後でもマイナスに働くとする見方が強く、業種によってはCOVID-19による影響が大きく残るところもあるだろう。

■ビジネスの成長や開発への好影響に期待

 COVID-19の影響が長引く中、業績の悪化などマイナスの要素が目立つものの、中期的にはビジネスに対してプラスに働くとの見方が多く出ている。COVID-19の影響が長引く中、業績の悪化などマイナスの要素を受けているものの、中期的にはビジネスに対してプラス面に働くとの見方が多く出ている。2021年5月に日経BP 総合研究所が実施した「5年後の未来に関する調査」では、「新型コロナの影響が勤務先のビジネスに5年後はプラスに働く」との見方が「5年後はマイナスに働く」とほぼ拮抗し、共に4割強を占めた。COVID-19による危機をプラスに変えようとするビジネスパーソンの積極的な姿勢がうかがえる(図2)。

図2 COVID-19はビジネスの成長や開発に寄与する面も
(出典:『未来調査2026 全産業編』(日経BP)、第4章)
参考文献
1)帝国データバンク、「特別企画:新型コロナウイルスによる企業業績への影響調査(2020年度)」、2021年9月.

<関連レポート>
未来調査2026 全産業編

『未来調査2026 全産業編』は、日経BP 総合研究所が2020年春から継続している大規模調査プロジェクト「5年後の未来に関する調査」の結果を基に、今後5年間で起こりうる社会動向や各分野でのトピックスを交えて、様々な業界における事業戦略の立案や新規事業・商品企画の推進で必要となる未来のエビデンス(客観的な裏付け)を集めた未来調査の決定版レポートです。
著者:日経BP 総合研究所 未来ビジネス調査チーム
A4判、316ページ、2021年11月12日発行

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