第7期「ビズラボ」報告記

ビズラボ第7期生(日経BP社) 近藤 佑紀

異業種の友が私の資産

 「来月からビズラボっていうセミナーに参加してもらうよ」

 2018年4月、新潟県の三条市役所から研修生として日経BP社に派遣された私。入社のあいさつもそこそこに、受け入れ先のリアル開発会議の中道編集長から、こう、申し渡された。

 「ビズラボってなんだろう?」

 調べてみると、どうやら異業種から開発者らが集まり、新しいビジネスプランを練り上げる講座のようだ。私は社会人3年目で、しかも「ビジネス」の「ビ」の字も知らない地方公務員。そんな私が開発者に交ざってビジネスプランを考えるだなんて。これからどんなことが起こるのだろうかと、緊張と不安を胸に、ビズラボ第7期の初日を迎えた。

 集まった受講者は18人。顔ぶれを見ると、年齢は私と同じ20代半ばから、上は50代までと幅広い。業種も、自動車部品メーカー、大手飲料会社、国立研究所の研究員、弁護士など、様々だった。さらに、一般の社員だけでなく、部長や社長など、役職も異なっていた。これだけ年齢も業種も役職も違う人が集まる講座もそうそうないだろうと考えていると、早速、1回目の講義が始まった。

 その講義で、冒頭から衝撃を受けることとなった。ビズラボの講師であるシステム・インテグレーション社長の多喜義彦氏からビズラボのルールが説明されたのだが、それがもう目からうろこである。私たち参加者に与えられたルールはたったの2つ。一つは「ノー」と言わないこと。そしてもう一つは、責任のない開発をすること。

 これまで社会人になって「責任感を持て」と言われることはあっても、「無責任になれ」と言われたことがあっただろうか。仕事をしていれば、「ノー」と言われることばかりである。それにいくら責任がないと言われても、知識も経験も豊富な開発者や営業担当者の中で、私が発言することなどできるのだろうか。正直なところ、このルールで円滑に議論が進むのか半信半疑であった。しかし、回を重ねるごとに、自由に、そして無責任に発言している自分に気づいた。不思議なことに、ビズラボに参加していると、どんどんと自分のアイデアを話したくなるのである。どんなにおかしなことを言っても、ビズラボでは「ノー」と言われない安心感が私をそうさせたのだろう。

ビジネスプランを創出

 2日目には多喜氏による公開コンサルティングが行われた。その結果、出されたテーマはどれも魅力的で迷ってしまったが、私は障害者にもできる農業を考えるという「バリアフリー農業」を選んだ。障害を持つ人たちが社会で暮らしていく中での生きづらさを、どうしたら軽減していけるのかということに関心があったからだ。そうした思いは、私が自治体職員を志した理由の一つでもあった。そして、そんな真面目な理由だけでなく、家庭菜園が好きで、東京に越してきてからも、ベランダに小さなプランターを置いてハーブなどを育てていたことも、このテーマを選んだ背景にあった。

 グループに分かれ自己紹介をすると、野菜を育てることや園芸が好きなメンバーが集まっていると分かった。

 「農業って休みもなくて、大変なんだよね」

 「都会でガーデニングをするのも大変らしい」

 「育て始めたのはいいけど、うまく育たないんですよね」

 そんな身近な話題から、議論が発展していった。農業を始 めたいと思っていても、農業をしていくためには様々な「バ リア」がある。

 あるメンバーの「僕、エディブルフラワーを育てたいんですよね」という一言から、さらに会話が盛り上がった。エディブルフラワーとは、Edible(食べられる)Flower(花)の文字通り、食用花のことである。私以外のメンバーは全員男性だったが、「男性が花なんて」と感じることも一種のバリアだと捉えた。

サンプルを用いたグループワーク
サンプルを用いたグループワーク

 こうして「バリアフリー」の意味を捉え直し、「心のバリアフリー」をコンセプトに、障害者だけでなく、誰でも簡単に楽しめる農業について検討し、エディブルフラワーの栽培キット販売の仕組みを知財化するところまで考え、発表した。

 あっという間に全6回のビズラボが終わってしまった。ビズラボ第7期が終わってしまうと思うと、とても名残惜しかった。名残惜しさの理由は、毎回の議論で新しいアイデアを共有し、懇親会で笑い合うことで、ビズラボ参加者たちと「友達」になっていたからだろう。業種も役職も性別も違う、ひとまわりも、ふたまわりも年が離れた人を友達と呼ぶのは、なんともおこがましいし、おかしいと思われるかもしれない。それでも上司でも同僚でもなく、単なる仕事上の知り合いでもないこの関係性を言い表すには、友達という言葉が最適だ。「フィールドアライアンス」を実現させるためには、利害関係のない仲間とビジネスを始めることが大切であるという多喜氏の言葉を思い出した。まさにビズラボは受講者が利害関係を超えた仲間になる場なのだ。

 ここでできた仲間たちは会社に戻り、新たなビジネスや製品を開発していくだろう。あるいは、ビズラボの仲間同士で新しいビジネスが生まれるかもしれない。初日の緊張や不安はウソのように、今、私も含めたこの新しい仲間たちが創り出す未来に思いをはせると、期待に胸が膨らむ。

成果発表会の様子
成果発表会の様子

今回出てきた珠玉のビジネスプラン

Aグループ「クルーズメディア」
クルーズ船を舞台とする、人と人をつなげるメディア会社。船上の印刷機で刷られた、各乗客にパーソナライズされた旅のしおりや、乗客同士の交流を促進するサービスなどを提供。

Bグループ「バリアフリー農業」
コンセプトは「心のバリアフリー」。誰でも簡単に楽しめるエディブルフラワーの栽培キットを販売。

Cグループ「生活用品カレンダーパウチ」
ストックしておいた生活用品を小分けして、好きな時間に、好きな場所へ届けるサービス。顧客の商品の使用状況や嗜好から商品の推薦までを実施。

Dグループ「月極福袋」
カテゴリー別にセレクターが選んだ商品が入った福袋を発売するサービス。セレクターはメーカーのしがらみなく商品を選び、消費者はセレクターを選んで福袋を購入する。

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