第9期「ビズラボ」報告記

リアル開発会議 編集部

時間が足りないほど意見交換
お互いに刺激して想像を超えるアイデアに

 2019年5月から8月にかけて第9期ビズラボが開催された。議論されたテーマは今回もユニークで多彩。中小企業のお困り事を解決したり、展示会での情報収集をビジネスにしたり、ホームレスに働く場を提供したり、エスカレーターやエレベーターを仮設にして人の移動を自由にしたり。参加者は、電機メーカーや商社、コンサルティング会社、警備会社、国の研究所、ベンチャー企業などからの総勢20名である。

 ビズラボの初日は、開発の鉄人である多喜義彦氏の講義の後、事務局側で用意した課題に対して、参加者が議論してその課題を使った新しいビジネスを考える。ビズラボのルールに慣れるためのウォーミングアップだ。不思議なことに課題は毎回同じでも必ず新しいアイデアが出てくる。今回も、これまでにないユニークなアイデアが数多く発表された。独自無線網と3D表示装置を使って遠隔で孫と祖父母が交流できる「孫リョーシカ」というサービスが、ネーミングも含めて印象的だった。

13テーマ候補から絞る

 2日目は、多喜氏が参加メンバーに公開コンサルティングを行った。障害を持つ方を警備員として採用する警備保障や変圧器を使った新しいビジネス、ピンポイントで人材派遣するサービスなど13のテーマが挙がった。どれも魅力的な将来性のある事業テーマだが、その中から「橋の下の人生」「東洋電機展示会事業部」「中小企業なんでもバンク」「ブラザー工業十次産業」「仮設エスカレーター」の5つのテーマが投票によって選ばれ、参加メンバーが希望するテーマに分かれた。

 3日目はテーマごとに各グループで新規事業を考え、早くも4日目には中間報告会があった。中間報告は1時間の予定だったが、メンバー同士で意見が活発に交わされたことで予定時間の倍の2時間かかった。それだけ発表の中に参加者の興味を引くアイデアが多かったことと、自分のテーマ以外にも興味を持つ参加者が多くいたことが相乗効果を生んだのだろう。誰かの意見に呼応して意見が出される好循環が生まれていた。

 5日目のリアルツアーは、有楽町駅近くのエプソンスクエア丸の内で開催した。エプソンスクエアは、モノづくりからコトづくりへ移行しつつあるセイコーエプソンのコトを体験できるショールームだ。2019年5月に開設したばかり。オフィスをイメージしたビジネスゾーン、工場をイメージしたプロダクションゾーン、家庭をイメージしたパーソナルゾーンという3分野で最新機器やソリューションを体感できる。同社のコトづくりに向けた活動は、ビズラボの各グループの事業アイデアを膨らませるのに大いに刺激になった。

新しい価値を創造する事業5テーマ

 最終日は、これまでの議論を事業構想にまとめて、各グループが成果報告を行った。

 「橋の下の人生」は、鉄道高架下の遊休地を利用して、ホームレスの方が安全に生活でき、希望者には職も提供する。ホームレスの方の中には、ホームレスになる前にビジネスパーソンとして活躍した能力の高い人も多い。そうした能力を生かして、社会復帰できるようにサポートする。もちろん、本人の希望を重視し、社会貢献したいということであれば、その希望に即した職をあっせんする。あくまでも希望する人だけをサポートし、社会復帰を望まない方には安全に過ごせて、定期的な医療診断も受けられる環境を提供する。

 「東洋電機展示会事業部」は古民家を利用した新規事業や新商品を試しに置くことができ、ユーザーの声を集められる場の提供へと姿を変えた。空き家問題を解決し、かつ地方の企業を活性化するという地方創生に効果を発揮する事業だ。単なるショールームではなく、飲食店を兼ね備えていてコミュニティーを形成するようにできているところに工夫がみられる。町の人々が飲食をしに自然と集まることで交流が生まれ、そこに仲間になった地元企業の人が新商品を紹介するというストーリーである。飲食を共にして仲良くなれば、新商品への意見も親身になり、場合によっては、試しに使って、意見をくれる。

 銀行を巻き込んで提供するサービス「中小企業なんでもバンク」は、中小企業が欲しいものは何でも提供する事業だ。人材やパートナー企業を紹介し、時には優秀なCEO(最高経営責任者)さえもあっせんする。大企業の人材を中小企業に送り込み、中小企業を助けつつ、経験を積むことができる、大企業にとってもメリットがあるサービスが発表された。

 3DやVR(仮想現実)などが一般になるとコンテンツに対するニーズが急増する。そこに目をつけてコンテンツ産業を4次産業として、それに1次産業、2次産業、3次産業を加えた「ブラザー工業十次産業」を議論した。このグループが考えた事業は、高齢者が町の中を楽しく歩くことで健康を維持するという、町全体をコンテンツ化するアイデアだ。高齢者は歩くことが楽しくなり、進んで歩いて健康にもなる。自治体も巻き込んで、健康社会を実現する。

 「仮設エスカレーター」は、人が乗って「あそこに行きたい」と思うだけで運んでくれる絨毯に変化した。店舗やイベント会場で、その絨毯を敷き詰めておけば、来た人は思ったところへ自動で運ばれる。絨毯の毛が連動してモノを運ぶ仕組みだ。最初に敷いてしまえば、あとは何もいらない。町全体を覆って完全なバリアフリーな町が実現する。理想的な移動手段だ。

 今回も5つのテーマすべてで、最初のテーマから発展して予想を超える事業アイデアに変身した。人の創造力は、無限に広がる。中間発表でも成果発表でも時間が足りないほど意見が交わされた第9期。これを機に、ビズラボの仲間「ビズ友」になって定期的に連絡を取り、今後のビジネスでも意見を交換し、助け合っていくことを望みたい。

グループごとに発表
グループごとに発表
場所を変えて交流会
場所を変えて交流会

今回のビジネステーマ

Aグループ「橋の下の人生」
鉄道の高架下の空きスペースを利用した事業。ホームレスの方が暮らせる空間を提供し、同時に雇用機会も提供する。やる気があれば、社会復帰をサポートする。

Bグループ「東洋電機展示会事業部」
展示会では競合企業も多く展示していることから情報の宝庫である。しかし、ブースを訪れても、競合企業には警戒して話さないことが多く、有益な情報を得ることが必ずしもできない。情報を集めて、企業に提供することをビジネス化する。

Cグループ「中小企業なんでもバンク」
中小企業が新規事業を立ち上げるにあたり必要なヒト・モノ・カネをなんでも提供する事業。特に人材不足に悩んでいる中小企業向けに優秀な人材を紹介する。

Dグループ「ブラザー工業十次産業」
1次、2次、3次産業に加えて、4次産業と言えるコンテンツ事業を加えて、付加価値の高いサービスを提供する。

Eグループ「仮設エスカレーター」
エスカレーターあるいはエレベーターをニーズに合わせて街中のどこにでも仮設して、高齢者の移動をサポートする。高齢者は移動が楽になり、進んで街に繰り出し、健康を維持できる完全なバリアフリー社会を実現する。