第1期「宇宙ビズラボ」報告記

リアル開発会議 編集部

予想以上に予想外の企画が続々

 最近、何かと話題の宇宙関連ビジネス。これまで官需主導の市場だったため、宇宙開発についてはほとんど民間企業の出る幕はなかった。ところが、ここにきて衛星開発や宇宙輸送が民間に開放され、これまで宇宙に関係のなかった企業が宇宙事業に参入できる機会が拡大している。

 宇宙ビジネスは、今後成長することが間違いないことから、何らかの形で先鞭をつけたいというのが、多くの企業の思いだろう。一方で、宇宙という未知の分野に対して、企業内に知識・ノウハウもなければ、進出のための足掛かりもない。こうした企業の悩みに応えようと企画したのが、宇宙ビズラボだ。

 基本的な運営方法は、ビズラボと同じ。まず事務局側からテーマを提示する。参加者は議論したいテーマを選んでグループをつくり、ビジネスアイデアを練り上げる。違うのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の新事業促進部の協力を得て、JAXAの職員が議論に参加した点だ。2019年2~3月に計4日間開催し、1日目と2日目は、JAXAの筑波宇宙センター、3日目と4日目は、JAXAの共創スペース「宇宙ビジネス拠点 X-NIHONBASHI」で実施した。2日目には、JAXAへの理解を深めるべく筑波宇宙センターの見学会も開催した。

筑波宇宙センターを見学
筑波宇宙センターを見学

5つのテーマで議論

 参加したメンバーは、シンクタンク、印刷機メーカー、食品メーカー、システム開発企業、樹脂成形加工メーカー、薬品メーカーなどからの19人と、JAXAからの5人の計24人。各グループが「宇宙専門学校」「スペーススタンダード」「無重力治療」「Space スペース」「宇宙電信電話株式会社(STT)」の5つのテーマに分かれて議論した。

 宇宙専門学校は、宇宙に行きたい人材、宇宙関連のモノづくりをしたい人材、単純に宇宙を学びたい人材など、今後、需要が拡大する宇宙関連ビジネスを担う人材を育てる仕組みを創るというもの。スペーススタンダードは、宇宙空間、宇宙船・宇宙ステーション内で利用できる素材や機器のための規格を策定し、これをビジネス化するテーマだ。無重力治療は、宇宙服を使った水中無重量トレーニングの施設やノウハウを活用し、無重量状態による治療を施すことを議論する。Space スペースは、宇宙船や宇宙ステーションで必要な自給自足システムを地上に実現するユニットを開発し、これを使ったビジネスを考案する。宇宙電信電話株式会社(STT)、は通信区間が長距離であるため遅延が大きく、地上との通信コストも大きい宇宙空間での通信を担う通信サービス会社を考えるというテーマである。

グループに分かれて議論
グループに分かれて議論

政府主催のアイデアコンテスト応募へ

 4日間の議論の後、発表されたビジネスプランは、事務局の思惑通り、当初のテーマとは全く異なるものとなった。

 宇宙専門学校は、「IRQ(Inami rescue)宇宙旅行代理店」に姿を変えた。このグループには、英ヴァージン・ギャラクティックの宇宙旅行に申し込んでいる稲波紀明氏が参加していた。そこで、稲波氏が日々感じている宇宙旅行に関する悩みを解決するようなサービスを提供することを考えた。具体的には宇宙旅行選びのアドバイスや、宇宙旅行への準備、宇宙旅行後のテレビ出演や出版などでの旅行資金回収を支援するようなビジネスだ。

 スペーススタンダードは、「スペース・アライアンス・ディレクターズ」となった。宇宙を活用するステークホルダーが、宇宙空間を公平に効率的に利用できる仕組みを用意する。そのために、地球軌道を効率的に利用することを管理する団体、軌道上をクリーンに保つ団体、価値あるデブリを収集・販売する団体、民間企業にアドバイスを行うコンサルティングファームなどが必要だと結論付けた。

 無重力治療というテーマからは、宇宙疑似環境による“Reborn”体験と、“骨トレ”という2つのサービスが生まれた。前者は、地球上で宇宙空間のような無重量感覚や無音、映像を利用者に提供することで、宇宙飛行士が感じるという人生観・世界観・倫理観を変える体験をさせるというものだ。後者は、宇宙空間では骨が弱くなるという問題の逆の発想で、骨を強くするサービスを考えた。

 Space スペースは、「どこでもQOL」という提案に結実した。生活のためには、空気、水、食料、エネルギー、娯楽などが必須だが、それに加えて宇宙空間においても、生きがいや存在価値の提供が必須という結論に至り、これらを全体的に満たすサービスを考えた。

 宇宙電信電話株式会社は大きく変わり「宇宙遺産保護機構」となった。宇宙空間を漂う打ち上げ後のロケットのパーツや寿命を終えた人工衛星は、今はゴミと考えられている。しかし、これらを歴史的な価値を持つ遺産と捉え直し、この価値流通をビジネス化することで、軌道の保全と宇宙ゴミの歴史遺産化を加速するというものだ。また、同グループの別のメンバーから、つくばエクスプレスのつくば駅前の空きビルを、宇宙関連のアミューズメントパーク化するという提案も出た。

 今回、事務局にとって予想外の喜びだったのは、宇宙ビズラボの議論がここに終わらず、さらに一歩踏み出したことだ。複数のグループが今回の議論をブラッシュアップし、内閣府が主催する宇宙ビジネスのアイデアコンテスト「S-Booster」に応募した。2019年8月に同コンテストのファイナリストが発表される。宇宙ビズラボから生まれたビジネスプランが評価されることを期待したい。

今回出てきた珠玉のビジネスプラン

Aグループ「IRQ(Inami rescue)宇宙旅行代理店」
宇宙旅行をしたい人に適切なアドバイスと準備を提供する旅行代理店。

Bグループ「スペース・アライアンス・ディレクターズ」
宇宙空間を、すべての人が効率的に平等に利用できるようにするために、不要な衛星が飛ばない仕組み、寿命の終わった衛星が軌道上に残らない仕組みをつくる。

Cグループ「無重力トレーニング/治療」
宇宙から地球を見ることで人生観・倫理観が揺さぶられる体験ができる施設を地上に造るほか、今はトレーニングでアプローチできていない骨に着目した“骨トレ”をビジネス化する。

Dグループ「どこでもQOL」
宇宙向け技術を使って空気、水、食料、エネルギー、娯楽といった、生きていく上で必須の技術を提供するほか、生きがいや存在価値に焦点を当てたサービスも展開する。

Eグループ「宇宙遺産保護機構」
宇宙のゴミ(スペースデブリ)を、過去の宇宙技術を知る上での遺産と捉えることでビジネス化し、ゴミの除去と、遺産の保護を行う。

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