【本号の予言】
ゆでガエルが大量に死ぬ

穏やかに水温が上昇する鍋に入れたカエルは、その温度上昇を検知できず、致命的な温度になるまでじっとしているという「ゆでガエル」。経営環境の変化に気付かないでいると、気が付いたときには倒産してしまうという、ビジネスにおける教訓、たとえ話である。
そんな、ゆでガエル状態の企業が、これから大量に死に至る。これは、予言ではなく予告である。
前倒しで改革が進む中国の自動車
最近、気になる報道があった。中国が新エネルギー車(電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車の総称、以下、NEV)の新車販売比率を、これまでの目標だった2025年の20%から、25%に引き上げるというものである。
中国のことだから朝令暮改は当たり前と、高をくくってはいけない。この報道を裏読みすると、中核部品やシステム開発で世界をリードしたいという、国策そのものに見える。まさに共産党だからできる政策だ。それを前倒しするということは、国を挙げての戦略であり、今が他国を引き離すチャンスと捉えているに違いない。
NEVの構造は至ってシンプルだ。まず、エンジンが不要、あるいは限りなく小さくなる。その他の主要な部品も、モーターや電池といった精密機械ではなく、電気・電子部品である。
さらに、自動運転という時代になると、操舵系の部品も限りなくシンプルになる。ひょっとしたらハンドルという部品がなくなり、ブレーキもアクセルも要らなくなるかもしれない。
そして、ここが肝心要のところだが、中国という国は、自動運転に係る社会インフラを一斉に改革してしまうことができる。つまり、それまでの規則や慣例を一切無視して、政府が「自動運転車しか走るな」という命令を出すだけで、クルマは一斉に置き換わるのである。
もはや待ったなし
「いやいや、まだまだエンジンを搭載したハイブリッド車がしばらく主流だろう」と、のんびり構えていてはいけない。ひとたび中国が「2025年のNEVの販売比率を50%にします」とか「やはり100%にしよう」と言うだけで、自動車産業界は大きく変わってしまう。
そのとき、我が国の自動車メーカーはもちろんのこと、従来型の製品しか作っていないゆでガエル型サプライヤーは生き残れるのか──。それこそ自明の理ではあるまいか。
(多喜義彦=システム・インテグレーション)
[リアルな大予言とはリアル開発会議スタッフが日々の活動の中で確信した未来像を無責任に予言するコーナーです]
※ リアルな大予言 2019 Summer はこちら