特集 燃やせ!ビズラボ魂

企業や自治体が仕組みを活用
経営者限定版や交流団体も発足

企業スポンサーのビズラボや自治体スポンサーのビズラボなど、ビズラボ活用の輪が広がっている。
ビズラボ修了者を含む1000人超の開発者の交流を促すため、事業開発協会という組織も立ち上がった。
ビズラボで優れたビジネスプランを創っても社内の壁で進まないという問題を解決するために、経営層向けビズラボも開設する。

 日経BP社主催の「ビズラボ第1期」が開催されたのが2014年10月。それから、約4年。この間、世間のニーズを受け止めながら、多様な形態のビズラボが誕生している。

 そのうちの一つが、企業がスポンサーとなってビズラボを開催する「冠付きビズラボ」だ。ビズラボの場に顧客や潜在的なパートナー企業の社員を招待し、異業種による新事業を議論する。

 スポンサーとなる企業の狙いは、次のようなものだ。ビズラボを自社社員と顧客社員の交流に使って親睦を深めると同時に、普段の営業では知り得ない顧客・潜在顧客企業のビジネスモデルや、ビジネス上の困り事を知ることができる。ビズラボを通して生み出されたビジネスプランが優れていれば、顧客との共同事業を推進できる可能性もある。この場合、企画段階から主催企業の社員が議論に参加しているので、競合他社とのコンペにならず、当初から一緒に事業を進められる。

 一方、ビズラボに参加する顧客・潜在顧客にとっても、無料でビズラボに参加でき、自社の強みやそれを活用した新事業プランを社内に持ち帰れるというメリットがある。

 いち早くこの目的でビズラボの活用を始めたのが富士通だ。2015年から社員教育、並びに顧客との接点を深めるためにビズラボを導入している。2018年6月時点で既に通算6期を開催しており、同年8月から第7期を開始する予定だ。

 これに続いたのが、NTTコミュニケーションズだ。2017年に「IoT新規ビジネス創出講座」(IoTビズラボ)を開催した。製造、金融、IT、コンサルティングなどの異業種と、同社社員が、あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT(Internet of Things)」にテーマを絞って議論した。同社の狙いは、通信とクラウドサービスから成る同社のIoT基盤を活用したサービスの活用先を探るとともに、この基盤を活用・拡販するパートナーと出会うことだった。

NTTコミュニケーションズが開催した「IoTビズラボ」の様子
NTTコミュニケーションズが開催した「IoTビズラボ」の様子

地方自治体版ビズラボ
自社の強みに気付き、1年目から成果

 自治体が地域活性化のために、地元企業を集めてビズラボを開催する形態もある。新潟県三条市が2015年に「三条市リアル開発ラボ」を開始した。2017年からは広島県府中市で「リアル開発会議@びんご府中」も始まった。両者とも、ものづくりに長けた企業を市内に多数抱えるものの、横の連携がないため、地域ならではの強さが発揮できていないという課題を抱えていた。

 リアル開発会議@びんご府中は、2017年9月、10月、12月の3回開催し、地元企業とその他地域の企業の合計17社(うち3社は個人として参加)で議論した。具体的には、市内からはリョービ、内海機械、伝統工芸、オガワエコノス、ひねもす編集室、たんぽぽ園保育所が、市外からは電機メーカーや、自動車メーカー、IT企業、建築士、町おこしコンサルタントなどが参加した。

 1年目から成果も出ている。リアル開発会議@びんご府中に参加した内海機械の内海和浩社長は、1回目の会議で得たヒントで自社のオウンドメディアを立ち上げた。これが当たり、受注を増やすことに成功。2回目以降も議論に参加し、ものづくり企業の駆け込み寺「もの寺」を異業種と議論してプラン化した。これが実現したら、自社のオウンドメディアと連携することを考えている。「気心の知れた異業種の仲間を増やせたのは大きな収穫だった」(内海氏)。

府中市のビズラボ
府中市のビズラボでは地元企業と市外の企業が意見を交わす

 議論に参加した市の職員にも新しい発見があったようだ。「普段考えなかったことに頭を使い、新鮮な発見が多かった。そうした場自体に意義があった」(府中市企画財政課の谷光明氏)という。

 今後は、ビズラボを支援企業の活性化に課題を抱える銀行や、開発技術の適用先に悩む研究機関などにも活用してもらうように動く計画だ。

意思決定層限定のビズラボEXが9月にスタート

 この4年間の活動を通して、ビズラボの課題も見えてきた。ビズラボでいくら優れたビジネスプランが作成されても、社内の壁が突破できず頓挫してしまうというものである。異業種の知恵を入れて磨き上げたプランを、この価値を理解できない上司や社長が没にしてしまうのだ。

 この後ろ向きな状況をなくすため、社長や役員など意思決定者だけが参加できるビズラボを企画した。これが、2018年9月開催予定の「ビズラボEX」(ビズラボExecutive)である。経営層同士で話し合うので、ビジネスプランが出来上がれば、社内の壁にぶつかることなく事業化に進むはずだ。

 ビズラボEXでは、テーマ決定の段階から事業化を念頭に置く。そのため、参加者にとって魅力的な事業化テーマが出てこなければ途中で辞められるように、2ステップ制とした。

 第1ステップでは講師の多喜義彦氏(システム・インテグレーション社長)の公開コンサルティングによる気付きの提供と、開発テーマ出しを行い、第2ステップでは具体的なビジネスプランに練り上げる。うまくいけば2019年には、ビズラボEXから生まれた新しい事業が始まっているかもしれない。

1000人の修了生がつながる事業開発経営協会が始動

 通常のビズラボに加えて、企業や自治体がスポンサーになったビズラボが始まったことで、その修了生は一気に増えている。リアル開発会議が関連したビズラボだけでも修了生は200人を超える。また、多喜氏が約20年前から実施しているビズラボの兄弟講座「ビジネスプロデューサー養成講座」の修了生も入れると1000人以上となった。

 「ノーと言わない」「無責任な開発をする」ことをモットーとする1000人のビズラボ修了生が、期の壁、主催企業の壁を越えて積極的に交流すれば、新しいビジネスがどんどん生まれるはず。こうした考えの下、ビズラボ修了生の交流組織が立ち上がった。2018年5月に総会を開催した「事業開発経営協会」だ。

事業開発経営協会設立総会の様子
事業開発経営協会設立総会の様子
事業開発経営協会のWebサイト
事業開発経営協会のWebサイト(http://businessproducer.jp/)

 土曜日にもかかわらず総会には約100人が参加し、親交を深めた。ビズラボ修了者には事業開発経営士3級取得の権利があり、希望すれば3級が付与される。協会会員も募集中で、会員に対しては定期的な交流会やセミナー、ビジネスに効くニュースレターの提供などを予定している。今後も新たなビズラボの修了生が加わるので、この異業種の輪はどんどん広がっていく。

(菊池珠夫)

富士通ビズラボ第6期が修了 皆が意図せず街づくりを議論

富士通ビズラボ第6期で議論したテーマ
富士通ビズラボ第6期で議論したテーマ

 ビズラボ presented by Fujitsu(富士通ビズラボ)の第6期が、2018年1月から2月にかけて開催された。参加者によって以下の5つのテーマが選ばれ、ビジネスプランを創り上げた。

何でもアリ学校
 生涯学習を文字通り実現するために、現行の義務教育を取り払い、子どもから大人までが自由に勉強する内容を選択できる学校を考える。教師として教壇に立ちながら、他の教室では生徒として勉強に励むということもアリ。

セブンロバ
 かつて荷車でパンを売りに来た「ロバパン」のコンビニエンスストア版。移動式屋台が町に来くることで、食べたいものが食べられて、買いたいものが買える。過疎地の買い物難民もこれで解決。

自分自動車
 家族仕様の自動車ばかりが宣伝され、いつの頃からか自動車に夢がなくなった。そこで、自動車にロマンを取り戻す。改造したいだけして、世界に1台しかない自分だけの自動車を作り出す。

大和リッチ
 不動産の価値の多くは立地場所で決まる。それならば、立地場所を徹底的に調べて、面積や日当たりだけではない条件を不動産情報に加える。これで他社にはない価値を提供し、不動産の流動性を高める。

VR/AR百貨店
 百貨店は買い物をする場所ではなく、テーマパークに変身する。VR(仮想現実感)やAR(拡張現実感)を充実させると、その体験を求めて人が集まる。

富士通ビズラボの様子
富士通ビズラボの様子

 意図せず、学校やコンビニ、百貨店など町を構成するパーツがそろったが、実現した町は楽しそうだ。

 こうしたテーマについて顧客企業の社員と新しい価値を考えることで、知らなかった顧客の一面を垣間見ることができる。今回は、不動産会社の情報が意外と属人的であることや、百貨店業界の課題を知ることができた。これは富士通にとって、大きな価値だ。

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