特集 リモートケア、発進!

【先駆者たちの声】
医療従事者ネットワークと健常・未病時のデータも必須に

 「あの診療報酬では、オンライン診療はもうからないし、手間もかかるから、やる意味はない」。そんな声が多くの医者から上がる。

 しかし、医療の将来を本気で考える関係者には、オンライン診療の周辺に、医療や健康、娯楽など日常生活に関わる機能やサービスが広がる「リモートケア」の世界が見えている。本パートでは、先駆者3氏の取り組みと、彼らのリモートケアへの期待を紹介する。3氏とは、通信技術を活用した医療についての研究と実践を行っている細谷クリニック 医師の島田祥士氏、広島市内などで訪問診療に力を入れる川岡クリニック 院長の川岡知博氏、愛知県と岐阜県で調剤薬局や介護施設向けサービスを展開するトーカイホールディングス代表取締役社長の松本成史氏だ。

 島田氏は、高齢化が極度に進行し将来消滅の危機にある限界集落の訪問診療から、高齢者同士が支え合う社会の必要性を痛感し、センサー機器と遠隔からの支援による健康維持の普及を目指している。

 川岡氏は、訪問診療の経験から、急変時にこそオンライン診療が必要であると考えている。急患がいると、定期的な訪問先のスケジュールの再設定が必要になる。こうした要望に応えるため、薬剤師、看護師、介護士など患者を支える医療従事者間の情報共有システムを構築しようと模索中だ。

 松本氏は、調剤薬局の将来を考え、自治体、地元企業、住民を巻き込んだ健康サポートシステム作りに取り組んでいる。

 この3者の話に共通している点は、二つある。一つは、患者と医師の2者をつなぐだけのオンライン診療の先に、多くの医療関係者を結ぶ機能が必要になること。もう一つは、システムには、病気になる前の未病からの回復や、健常者に対して現状の健康維持のための機能も必要になることだ。少子高齢化社会に対応するため、医療従事者に世話になる人を減らさなければならないからだ

先駆者が描く未来
先駆者が描く未来
オンライン診療の周辺に様々なデータとビジネスが集まってくる。

健康延伸こそ究極の医療
センサー活用待ったなし

 高齢化が進む日本。特に深刻なのが地方だ。この問題に対してリモートケアの必要性を痛感し、ネットワークを通じた診療と健康管理を研究しているのが、細谷クリニック医師の島田祥士氏である。

 島田氏は群馬県の富岡市や下仁田町などの県南部を中心に、在宅診療や、特別養護老人ホームでの訪問診療を行い、ここをフィールドとして、ネットワークを使った医療システムの開発に力を入れている。

 島田氏が診察を担当している地域は、まさに高齢化に悩む地方の「限界集落」である。例えば、群馬県の南牧村は高齢化率が日本一高い村であり、隣の神流町は2017年の出生者数がゼロで極度に少子化が進んでいる。

 このように子どもが生まれず、住民が老いる一方の町では、移住促進などによるIターン・Uターンは望めない。地域に住む高齢者が互いに手を取り合い、助け合っていくしかないのだ。そのためには、長く健康に暮らしていける社会をつくっていくしかない。「高齢者が現行の筋力を維持し、末永く寝たきりにならない状態で健康寿命を延ばしていくことがとにかく重要だ」(島田氏)

 そうした社会の実現の第一歩として、医師や介護士が患者の健康を記録し、症状の悪化を防ぎ、改善するようにサポートするための取り組みを進めている。

 医師ひとりが患者を診るのではなく、看護師、栄養士、施設長、薬剤師、ケアマネジャーなど、地域包括ケアのメンバー全員がシステム上で患者の情報をやり取りできるコミュニティーを形成した。あらかじめ患者に同意を得て、許可されたメンバーは、スマートフォンなどの端末を通して、患者の情報を共有することができる。医師が診療のために施設を訪問する曜日は決まっているが、変化があったときに1日でも待ってしまうと、高齢者の場合、病状がかなり悪化してしまうことがある。スマートフォンなどの端末であれば遠隔から指示を出すことができるし、メンバー全員が情報を共有することで、誰かが休んでいたとしても、残りのメンバーがカバーし対応できる。

島田 祥士

島田 祥士(しまだ・よしひと)

民善会 細谷クリニック 副院長。埼玉医科大学 医学部卒。埼玉医科大学 脳神経外科学研究科修了。美心会 黒沢病院、全仁会 黒木病院、ヘリオス会病院などでの勤務を経て、2015年から現職。

自律神経の「見える化」で健康延伸

 さらに、健康状態をデジタルデータとして取得し、モニタリング可能なBIT(Bio Information Tracer)という装置の普及を目指している。

 BITは、人間と科学の研究所が開発した小型のセンサーである。約4cm四方で、胸に付けて使用する。心電計(ECG)、温度計(赤外線温度センサー)、3軸加速度計を内蔵し、体温、呼吸数、瞬間心拍数、脈拍の異常が分かるだけでなく、その人の歩く速度や、姿勢、運動量、エネルギー消費量などの情報も取得できる。

 興味深いのは、BITAS(BIT Analysis Software)という解析ソフトを使って、時系列で自律神経の状態を解析できることだ。

 自律神経とは、交感神経と副交感神経という2つの神経から成る、自分の意志では動かすことのできない神経である。緊張感を持って精力的に動いているときには、交感神経が活発に働く。リラックスしているときや、眠っているときには副交感神経が働く。車に例えるならば、交感神経はアクセルで、副交感神経はブレーキだ。アクセルとブレーキがうまく連動しないとエンストを起こしてしまうように、交感神経と副交感神経は連動して働いている。

 こうした自律神経の状態が数値で見えるようになると、ストレス度合いをチェックすることができ、心の健康状態が分かる。さらに、睡眠時の健康も把握できるので睡眠時無呼吸の発見にも役立ち、早期治療に導けるという。

 島田氏の狙いは、BITを使って病気や異常を早期に発見できるようにし、高齢者の健康を延伸することにある。

 BITの有用な活用方法を探るため、これをフィットネスクラブの会員に使ってもらい、自身の自律神経や歩行時の癖などを把握してもらう実験を進行中だ。例えば歩行時に重心が右にずれるといった癖を持つ人には、理学療法士による運動プログラムに参加してもらう。

 どのプログラムも5分程度と短い。しかも、簡単なもので、効果が実感できるものだ。フィットネス運動は、毎日続けなくては意味がない。改善を毎回感じられることで、継続を期待できる。それが健康延伸への一番の近道だという。

 今後は、自律神経に関する一般公開市民講座なども計画している。そこでは、実際に参加者にBITを体験してもらい、自律神経がどのように作用しているのかということや、データの読み方や改善の仕方を知ってもらう。そうしたことから、BITを普及させていく。

遠隔から「看取り」診断

 健康であり続けることが大切である一方、「住み慣れた地域で最後まで自分らしく生きることを考えた場合、人が安心して自分なりの生を全うできる環境も準備してあげる必要がある」(島田氏)。そこでBITなどのツールを用いて、遠隔での「看取り」を診断できるプロジェクトも進めている。

 2019年4月から、医師が遠方にしかいないなど正当な理由のために医師が直接対面で死亡診断などを行うまでに12時間以上を要することが見込まれる状況に限り、医師が遠隔で死亡診断をすることが可能となった。研修を受けた看護師が死亡を確認し、データや写真を医師に送って、死亡診断書を代筆できる。

 「死亡の事実の確認」に際しては、呼吸停止、心臓停止、脳機能停止(瞳孔散大と対光反射の消失)の死の3徴候が揃うことで、死亡と判断する。遠隔での診断の場合は、5分置いて同じ現象が繰り返されたときに、初めて死亡と診断できる。しかし、死亡診断について経験の浅い人間が、これを自信をもって判断をするのは難しい。

 そこで島田氏らは、センサーを使って、死亡確認ができる仕組みを開発した。呼吸停止と心臓停止はBITを用いて確認する。脳機能停止に関しては、医療機器メーカーのアドバンスジャパンが開発した瞳孔計測対光カメラ(DKC)を用いる。ペンライト型のカメラで、光を当てたときに瞳孔が開いたままの状態を撮影することができ、さらにはそれをサーバーに記録できる。

 オンラインでの診療を進めることで助かるのは、高齢者の患者やその家族だけではない。「高齢化し、人手不足となっている医師にとっても、オンライン診療は必要だ」(島田氏)

緊急時こそニーズあり
理想はすべてがつながる世界

 「都市部での訪問診療、しかも緊急時にこそ、オンライン診療が必要」。そう訴えるのが広島市で訪問診療を実践する川岡クリニック 院長の川岡知博氏である。川岡氏は泌尿器科の医師として、大阪大学医学部付属病院や大阪の基幹病院で、急性期の患者の診察やがんの治療を行ってきた。

 泌尿器科には高齢の患者が多く、他の病気を合併しているケースが少なくない。泌尿器科疾患を診ている中で、自然と高齢者の疾患全体を診ることになったという。そして広島に移って勤務医として働いた後、泌尿器科の川岡クリニックを開院した。やはり患者には高齢者が多く、通院できない患者も少なくなかった。そこで、訪問診療実践のため、週に何度か高齢化が進む山口県の周防大島町に赴き、訪問診療で高名な医師である岡原仁志氏の下で学んだ。現在は広島市内で、外来診療に加え、訪問診療を精力的に行っている。

 川岡氏は広島市内で訪問診療を始めて、あることに気づく。それは、都市部こそオンライン診療が必要だということだ。

 交通量が少ない島などのへき地では、車があればすぐに移動できるが、頻繁に渋滞が起こる都市部ではそうはいかない。バスやタクシーなどの交通機関が整っていても、寝たきりの人や、認知症の人は自力で通院することができない。家族と同居していたとしても、家族が企業に勤めていると、その時間に病院まで送迎してもらうことは難しい。「思った以上に病院に来られない人、来ることが難しい人がいて、それはもう病院から遠いとか近いとかは関係ない。業務効率まで考えたら、むしろ街中の方がオンライン診療の需要がある」と同氏は指摘する。

 また、訪問診療をする中で、緊急時にこそオンライン診療が必要だということにも気づいた。一番必要となるのは患者が急変したときである。いの一番で患者の容体を確認し、適切な処置を看護師などに指示する。直接処置が必要な場合は現地に赴く。

 理想的なのは、これまでのように定期的に訪問診療をしながらも、急に患者に何かが起きたときには、どこにいてもその場から診察できる環境だ。訪問診療をする患者が増えれば増えるほど、急変する患者の割合は高くなる。そのときにどれだけ迅速に対応できるかは、オンライン診療にかかっている。

川岡 知博

川岡 知博(かわおか・ともひろ)

川岡クリニック 院長。大阪大学 医学部、大阪大学 医学部大学院卒。大阪大学医学部附属病院、大阪府立病院、市立豊中病院、市立池田病院勤務を経て、2011年川岡内科クリニック 副院長に就任、2015年から現職。

全関係者をオンラインでつなげる

 川岡氏によれば、オンライン診療を進めようとするほど、患者をサポートするスタッフ側のネットワークも必要になってくるという。看護師、介護士、薬剤師など、患者に関わるすべての医療サービス従事者がつながるネットワークだ。

 例えば、患者の急変時には医師と患者がつながるだけでなく、関係者すべてがオンライン上に集まるのが理想的だ。「この患者には点滴が必要だから、訪問看護師さんが行って点滴をしてください。この薬を出すので、薬局はお薬をお願いします」と、医師がオンライン上で指示を出すイメージだ。こうして効率的に患者を診ることは、医療費の低減にもつながる。

 ネットワーク上に異なる専門を持つ医師が集まれば、1人の医師よりも適切な判断や処置ができるようになる。

 さらに、薬剤師とネットワークでつながれば、薬の対応もより迅速になる。特に、すぐにでも薬が必要な緊急時には薬局の対応が必要だ。

 また、急患が出たときには通常の訪問診療の予定を変更する必要があるが、スタッフ全員がネットワークでつながっていれば、一斉に全員のスケジュールを更新できる。

 退院時などのカンファレンスにもオンラインは有用だ。患者が退院して在宅療養に切り替える際には、関係者を集めて引き継ぎのカンファレンスが行われる。入院している病院の医師や看護師だけでなく、訪問診療をする医師や、訪問看護師、薬剤師、ケアマネジャーなど、大人数が時間を合わせて、1か所に集まる。患者の病態について直接話し合い、退院後も患者や家族が安心して過ごせるように生活環境などを確認するためだ。

 参加者が離れた場所にいても、オンラインでテレビ電話のようにつながることができれば、移動の時間を気にすることなく、少しの空いた時間でも話し合いに参加することが可能だ。それに、オンラインであれば、実際にその患者に関わるすべての人がカンファレンスの場に同席しやくすなり、疑問も解決しやすくなる。オンラインで病状をやり取りすれば、現在の紙でのやり取りよりも効率的になるだろう。

 このように、医師と患者が一対一でつながるだけでなく、在宅医療に関わるすべての関係者がオンラインでつながることで、オンライン診療の価値はいっそう高まることとなる。

自ら動いて課題をあぶり出す

 ただし、前述のようなことを実現するためには、医療保険制度の見直しは避けて通れない。特に川岡氏が障壁を感じているのは、投薬の問題だ。例えば、普段は医療保険で訪問診療をしている場合に、緊急時だからと自由診療で薬を出すと混合診療となってしまう。一般に、混合診療をすると保険の報酬は支払われない。

 医師による緊急時のオンライン診療や、医師とネットワークでつながった薬局による迅速な薬の提供が必要となることは確かだが、そうしたスムーズな連携を実現させるためには、保険診療的な観点でも問題のないシステムやルール作りが必要となる。

 同氏は今後、オンライン診療のあるべき姿を目指して実証実験などに積極的に取り組み、制度やシステムの改善点をあぶり出したいと考えている。

 将来は、大学との連携に期待する。「院内であればすぐにできる検査も、機材が揃っていない院外では難しい。訪問診療でも、院内と同じ機能を持つ機材を搭載した車で検査ができるようになるのが理想的だ。これからの医療の現場を変えていく、斬新な発想ができる医師や薬剤師を目指す大学生たちと共同で研究していきたい」(川岡氏)

地域の健康維持は調剤薬局中心に
生活情報の収集が実現のカギ

 薬剤による対症療法から予防へ。薬局を巡る経営環境が悪化する中、調剤薬局チェーンからの脱却を目指して経営改革を進めているのが、トーカイホールディングス 社長の松本成史氏だ。同社は愛知県と岐阜県で展開する調剤薬局チェーン、トーカイ薬局を主力事業として抱える。松本氏は、個人の健康管理こそが、今後のビジネスのカギを握るとみて、調剤薬局とその地域住民の健康管理を実現するシステムの構築を目指している。

 調剤薬局業界の経営環境は厳しくなるばかりだ。全国にある調剤薬局店数は年々増加し、6万店弱にまで膨れ上がった。これはコンビニエンスストアの数を上回る規模。競争が厳しくなる一方、うなぎ上りに増大する医療費を抑制するため、厚生労働省は調剤関連点数の引き下げなど、店舗売り上げが減少する政策を採っている。この状況に対し大手薬局チェーンが進めているのが、規模の拡大だ。

 そんな中、トーカイホールディングスは、逆の道を歩むことを選択した。調剤薬局チェーンの運営から徐々に手を引き、店舗を運営するためのノウハウや、商材などを提供するコンサルティングを主業務することとした。つまり、チェーン傘下の各店舗については個店として独立してもらう一方で、個店では賄いきれない従業員教育や独自商材の提供、店舗運営のノウハウなどを、グループ会社のトーカイメディカルが提供する。

 この戦略の背景には、大きく2つの理由がある。まずは基本調剤点数の問題である。「月間取り扱い処方箋が4万枚を超える調剤薬局の点数は低く抑えられる。個店になってもらった方が、経営的に安定する」(松本氏)

 もう一つは調剤薬局の個性化だ。これまで調剤薬局は、単に処方箋通りの薬を提供する機能しか提供してこなかった。しかし、今後、調剤薬局が生き残っていくためには、地域に根差した医療機関や企業と共に、それぞれのニーズに合わせたサービスを提供していく必要がある。そうであるなら、個店が中心になるのが望ましいと考えたのだ。

松本 成史

松本 成史(まつもと・まさふみ)

トーカイ薬局 代表取締役社長。2001年11月から現職。2011年、トーカイホールディングスを設立。同社 代表取締役社長を兼務し、調剤薬局部門、コンサルティング部門、不動産部門を傘下に置く形態に移行した。

ポイントと健康づくりを連動

 では、個店が中心になってどのようなサービスを提供していくべきか。そこでたどり着いたのが、地域の人々の健康について総合的に支援する存在としての調剤薬局である。

 今後、医療費がさらに増大し、いっそう高齢化していく中で、病気の重篤化を防ぎ、長く健康を維持してもらうように生活してもらうことが、これまで以上に重要になってくる。ところが、住民が健康に関して相談に行く場がないのが現状だ。地域の医療の担い手は病院や調剤薬局だが、現在はいずれも異常が顕在化したときに行く場所である。「病気になる前の段階で、健康の相談に来てもらったり、いつまでも健康であるように支援したりできるのは、病院よりも地域の調剤薬局ではないか」(松本氏)と考えたのだ。

 これを実現すべく始めたのが、地域共通ポイント事業と健康支援事業を行うナチュラルズ倶楽部である。ポイントカードは、傘下のトーカイ薬局やトーカイメディカルが支援する薬局、連携する地域のスーパー、飲食店などの店舗で使える。貯めたポイントは加盟店で利用できるほか、楽天ポイントやTポイントなどにも交換できる。

 健康支援では、住民の触れ合いと健康づくりを提供するウオーキングイベントや、季節や疾病に合わせたレシピを教える健康料理教室、保護者向けの健康キャラ弁教室などを実施している。

 ナチュラルズ倶楽部で狙うのは、地域の囲い込みである。ポイントカードやイベントによって、これまで病気のときにしかつながれなかった地域住民とメールやスマートフォンのアプリを介して、病気になるもっと前の段階でつながることができる。このチャネルを使って「こちらから情報を発信したり、あるいは、ユーザーから様々な情報を頂いたりできるようになる」(松本氏)。

 松本氏は、現状では満足していない。住民の日々の健康データにも踏み込みたいと考えている。日々の生活が見えれば、さらに個々のユーザーや、地域に合ったサービスを提供できるからだ。

 例えばユーザーの日々の血圧をサービス側に取り込めれば、高血圧のユーザーに地域のスーパーと連携して高血圧者向けのレシピを提案できる。異常の兆候が見えたときに、医者への受診を勧めることも可能だ。

 地域の健康についての特徴が見えれば、街全体で健康に取り組める。例えば、糖尿病の患者が多い地域だということが分かれば、その地域の飲食店では低糖質のダイエット食を提供する。それを注文した客には、ポイントを加算するといった対応が可能だ。運動に応じたポイント加算もあり得る。これが地域の医療費削減につながり、国や地方自治体の財政健全化につながる。

 この実現に向けた足掛かりを得るために、地方自治体に対してモデルサービスの実施を提案中だ。具体的には、住民にウエラブルデバイスを配布し、活動量を記録する。歩数など健康づくりの努力や成果に応じてポイントを加算し、このポイントを地域店舗で利用できたり、地域特産品に交換できたりする。さらに、まちなか保健室という場所を用意し、ウエラブルデバイスから得た自らの健康活動の確認や、血圧などの測定を可能にする。この施策により、自治体は健康づくりと地域の活性化が行え、ナチュラルズ倶楽部は、個人の日々の健康情報であるパーソナル・ヘルス・レコード(PHR)の収集が進められる。

オンライン診療にもつながる

 健康データが集まってくれば、解析結果から健康上の異常をいち早く察知することもできるようになる。そうなれば、「薬剤師の側から、ユーザーに対して、『最近、眠れていないようですが、体調はいかがですか』、といった呼びかけができるようになる」(松本氏)。これは調剤薬局にとって新たなビジネスチャンスを生むとともに、地域としても重症化の予防につながる。

 松本氏は、その先にオンライン診療との連携も見据える。「病院にはカルテ、薬局には薬歴がある。ここに個人の体質や日々の生活の情報を重ねることができれば、オンラインであっても医師は、より適切な診療ができる」(松本氏)。この結果が不要な救急車の出動や入院などが減り、医療の効率化につながる。

この特集の他の記事

この号の目次へ

これまでのリアル開発会議はこちら