プロジェクト活動報告
(2018年6月~12月)

ひと目で分かる開発テーマの進捗

ひと目で分かる開発テーマの進捗

開発No.021 100㎏可搬ドローン
木を胴体とする搬送機開発へ 昔ながらの馬搬を現在技術で再興

 100kg以上を可搬できるようなマルチコプター(ドローン)が活躍できる用途を見つけ、その用途に合致した機器を開発しよう。こう呼びかけて始まったのが「100kg可搬ドローン」(開発No.021)プロジェクトである。

 既報の通り、本プロジェクトは広葉樹の山にある、市場で高く売れる“お宝の木”を下ろす装置を作るべく活動している。しかも、元来目指していた空飛ぶ機器であるドローンで実現することをやめて、山の斜面をはうように進む機械で実現する方針に切り替えた。

山道設置不要な伐採方法を模索

 本プロジェクトが木を下ろすプロジェクトとして動き始めたのは、岩手県で木材店を営んでいる小友木材店 代表の小友康広氏が持っていたニーズによる。同氏は2014年に先代から木材店の経営を引き継いだが、その収支を調べたところ、重機を奥山に入れるための山道を造ることが事業リスクになっていることが分かった。見込みと違って経費が掛かりすぎたり、売り上げが伸びなかったりしたのは、すべて山道に起因していたのだ。そこで、道を造らずドローンで木を下ろせればこのリスクを減らせると考えて、本プロジェクトに参加した。

 このように小友氏のニーズは明確だったため、100kg可搬ドローンプロジェクトは早々に、木を下ろすことを目標に定めて動くことに決まった。

 目標が見えれば、そこを目指して動くのみ。現場のニーズを把握するため、リアル開発会議参加メンバーで小友木材店が伐採作業をしている山を見学した。

 その結果、地上をはう運搬機械で運んだ方が、経済合理性があると判断した。そこで、既存の地上運搬ロボットを静岡県にある山に持ち込み、適用可能性を検討した。

 実地検証と議論の末に導き出されたのが、木を胴体にした搬送装置という概念だ。木が車体になるので、足となるクローラーだけを用意すればよい。

木こり1人で木を下ろせる機械

 木こりが、この搬送装置とともにチェーンソーを担いで山に入り、目的の木を伐採。枝なども切り落とし、適当な長さに切ったうえで、搬送装置を取り付け、木を下ろす。この形態であれば、大きな装置を山の中に入れずとも1人で作業が可能で、山道を造らなくても済むという小友氏のニーズも満たせる。

 次に、この概念を具体化するため、装置のスケッチを用意した。描いたのは、100㎏可搬ドローンプロジェクトのメンバーの一人である、エーエムクリエーション 代表の松田篤志氏。ヤマハ発動機で産業用無人ヘリコプターなどの開発を行ってきた、生粋の技術者である。「必要な機能や、実現する構造を考えるには、スケッチを描くのが大事」(同氏)だという。

 このスケッチをメンバーに披露し議論したところ、小友氏から「馬搬」というキーワードが出てきた。かつて日本の山では、切った木を、馬を使って下ろすことが一般に行われていたという。ところが、重機が山に入るようになると、馬を使うことがなくなった。

 しかし現在、山道を造る必要がなく、二酸化炭素を出さない、環境にやさしい木材運搬法として、馬搬を再興する動きがあるという。今回作る機械が電動で、この馬搬と同じことを実現できれば、クリーンでありながら馬搬よりも効率的な山作業が実現できるだろう。「1人が複数台の機械を引き連れて山に入り、この複数台が複数の木を取ってくれば、効率的に木を下ろせる」(小友氏)

 本プロジェクトでは今後、機器開発と並行して1年ほどかけて市場調査を行う。本気の事業化に向け、今回開発しようとしている装置が小友木材店以外でもニーズがあるかを見極めたいのだ。

 そこで、読者の皆さんにお願いしたい。もし、我々が開発しようとしている機器を使いたい、あるいは使えそうな現場を持っている方がいれば、リアル開発会議の事務局に知らせてほしい。可能な限り、ヒアリングと実地調査に伺いたいと考えている。

【Interview】
小友木材店を中心に事業を推進 今後1年かけニーズと顧客を調査

「100㎏可搬ドローン」プロジェクト推進の要が、小友木材店 代表の小友康広氏だ。
IT企業の取締役としても活躍する同氏は、木材事業にもITを活用し、世界で一番「カッコいい」木材店となることを目指している。
同氏に、同プロジェクトに参加したきっかけや、今後の計画などを聞いた。
(聞き手・構成=近藤佑紀)

木材店の方がなぜドローンのプロジェクトに興味を持ったのでしょうか。

 迂遠になりますが、僕の生い立ちと関係があります。僕は、1905年創業の小友木材店の創業家の長男として、岩手県花巻市に生まれました。2013年に父が他界し、2014年に4代目に就任しました。幼いときから父以外の家族や親戚から「おまえは家業を継ぐんだぞ」と言われて育ってきました。悩んだ時期もありましたが、家業を継ぐのは自分にしかできないことだと思い、大学は経営系の学部に進学しました。

 地元の同級生は中小企業の経営者の子どもばかりでした。彼らの多くは家業に近い大企業に入って、何年か修行をして地元に帰るというスタイルでした。僕は、それでは面白くないと感じていました。右肩下がりの木材業界で、林業に関わる大手企業に入って、そのやり方を学んだところで、将来うまくいくは思えませんでした。それならば、これから伸びていく業界や、これから世の中心になっていくような産業の最先端を見て、そこで得たエッセンスを木材業界に注入することが僕にできることであり、僕がやりたいことだと感じ、ITベンチャーで働こうと決意しました。それがスターティアでした。

 スターティアに入ったのは、これから会社の名前を大きくしなければならない僕が、会社の名前で商売をしてはいけないと思ったからです。「3年でマネジメントまで経験して、実家に帰ればいい」と言ってくれた社長の本郷(秀之氏)の人柄にも引かれました。

 入社して1年目でトップセールスの仲間入りをし、2年目でスターティアグループ初の自社開発プロジェクトのリーダーになり、3年目には11人の部下を任せてもらいました。そして4年目になり、そろそろ実家に帰る頃だと思っていた時に、社長から「君たちがやっている事業を分社化したいと思っているのだが、役員にならないか」と言われ、スターティアラボの役員になりました。

 それでも僕は花巻に帰らなきゃいけないと思っていたのですが、そんなときに、父が末期がんで余命1年であることが分かりました。実はその3年前に、父はすい臓がんを患っていたのですが、スターティアグループの理解もあり、その頃から月の4分の1は実家に戻って父の仕事を覚える生活をしていました。しかし余命が宣告されたので辞意を表明したところ、月の3分の1は東京に来てスターティアラボの仕事をしながら、小友木材店の代表をしたらどうかと提案されました。

それで、木材店の経営者にもなったと。

 いざ木材店を継いでみたら、不動産事業で木材事業の赤字を賄っている状況でした。僕が丸太に登って遊んでいた製材工場がなくなり、その跡地はショッピングモールになっていました。僕が戻った当時、木材事業の従業員は年配の3人だけでした。頼れる工場長が事故で動けなくなってしまったことをきっかけに、父は木材事業をやめていこうと考えていたのだと思います。

 しかし、僕は不動産事業で、小友木材店が今後やっていけるとは思えませんでした。これから地域の人口が減少していき、インターネットで何でも買える世の中で、モールに土地を貸している不動産事業が成立するイメージが湧かなかったのです。そうなると、やはり僕がこれまで取り組んできたテクノロジーの力を使って木材業界をなんとか伸ばしていく方が現実的に見えましたし、なにより楽しいだろうと思いました。

 木材事業が赤字である原因を探っていくと、搬出計画の甘さにあることが分かりました。赤字になるのは、思ったように搬出用の山道が造れなかったときでした。僕たちは木材を得るために山主から立木を買いますが、隣の山主が持っている平坦な土地を搬出用の拠点にしようとしていたら、例えば、山主同士の仲が悪いがために土地を貸してもらえず、道路を造るコストが上がってしまう。このようなことが赤字の原因としてあったのです。山を購入する前に、隣の山主にも交渉をするように指示したことで、赤字はだいぶ解消されましたが。

 昔は馬に引きずらせて木材を下ろしていましたが、大量生産大量消費の時代となり、どんどん機械化していきました。しかも、日本では50年以上かかってやっと成長する木が、海外の大陸で育った場合は20年で、同じ太さまで成長することもあります。そうした中では、どう付加価値を上げていくのかが重要です。例えば、今は、立方メートル当たり1万8000円でしか売れない栗の木が、ある瞬間3万円でも5万円でも欲しいと言われることもあります。その瞬間に、そこにあるお宝の木1本を取って下ろすことができたら、それだけで大きな利益が得られます。つまり、今必要とされているものだけを切って、運び出すということです。

 かつてはヘリコプターを使って、必要な木だけを下ろしていました。今でも奈良県の吉野のごく一部では、この方法で集材をしているようですが、岩手県ではもうゼロです。なぜなら、昔に比べて木材の価値は10分の1になっているにもかかわらず、ヘリコプターのチャーターコストは10分の1にはなっていません。それではコストが合いません。それでテクノロジーの力で、今の単価や人件費に合うように、ヘリコプターの役割を担うものを作れば、どうにかなるのではないかと以前から話していました。そのうちの一つがドローンだったのです。そこで、たまたま知人が100㎏可搬ドローンのプロジェクトを教えてくれて、参加することになりました。

 議論の結果、100㎏可搬ドローンプロジェクトでは、当初のドローンではなく、地をはって、山から木を下ろすロボットを使うことが決まりました。リアル開発会議の助けを得ながら、小友木材店が中心となって木材業界の在り方を変えていく、このプロジェクトを進めていきます。

今後の事業化に向けた課題は。

 まずは市場調査が必要です。小友木材店として、このロボットが欲しいことは間違いないのですが、僕たちと同じような事業体が日本にどれだけあり、彼らがどのように木材を搬出しているのかを調べていきます。その際には、日本木材青壮年団体連合会のネットワークも活用していきます。

 また、僕たちが考えている方法には、日本の自然を守っていき、日本の国土自体をサステナブルにしていくという付加価値があります。そこで、国や行政にもアプローチしていきたいと考えています。木材事業体という企業の顧客と、政府官公庁という顧客の両方とも深掘りして模索していきます。

 この1年はとにかく動き、多くの方から話を聞いて、共感してくれる人や顧客候補を見つけていきます。それと並行して、できる範囲で試作機を作り、実際に現場で試していきたいと考えています。

小友木材店 代表の小友 康広氏

小友 康広(おとも・やすひろ)

明治大学 政治経済学部卒。2005年、スターティアに入社。2009年、スターティアラボ 執行役員に就任し、2011年からスターティアラボ 取締役。2014年から小友木材店 代表取締役も務める。

開発No.030 新領域スポーツ
2月7日に事業拡大に向け事業説明会 ローラースレッジホッケー推進で団結

 「面白いね!」「もうちょっとローラーの間を詰めたら、反応がクイックになるのでは?」

 2018年10月末。そりを使うアイスホッケー競技「パラアイスホッケー」のバンクーバーパラリンピック銀メダリストである上原大祐氏、自動車部品メーカー、楽器商社、機械設計・試作コンサルタントなどが、東京・半蔵門に集まり、開発談議に花を咲かせた。

 議論のテーマは、「新領域スポーツ」(開発No.030)。障害者と健常者が同じ土俵で戦えるスポーツ競技を考案するとともに、この競技を普及・啓蒙するための組織を創るというものだ。

パラアイスホッケーの拡大を目指す上原氏のニーズを汲み取る

 同年9月25日に開催されたプロジェクト説明会では、本プロジェクトの趣旨説明と、参加者でのフリーディスカッションが行われた。10月末に行われた会合は、この際のフィードバックを受けたもの。リアル開発会議側から「ローラースレッジホッケー」という競技の案と、その試作品を披露した。

 ローラースレッジホッケーはその名の通り、そり(スレッジ)の刃をローラーに替えた器具を使う、新しいホッケー競技だ。パラアイスホッケーの地面版といえる。

 この競技は、上原氏のニーズから生まれた。同氏によれば、日本におけるパラアイスホッケーの競技人口は少なく、今後も競技人口の拡大は見込めない状況にある。

 こんな状況になってしまったのは、パラアイスホッケーに接する機会が少ないこと。そもそもアイスホッケーを練習できるリンクは少なく、パラアイスホッケーの練習で利用しようとすると、深夜1時以降になることも少なくない。これでは潜在的な競技者の目に触れる機会はないし、たとえ、このハードルを越えてやりたいと思っても、練習がままならない。

 この問題を解決するために考えたのが、体育館や舗装された空き地などで楽しめるローラースレッジホッケーである。走行部がローラーであるため、駐車場や体育館など平らな場所があれば練習や試合ができる。さらに、脚をそりに固定するので、下肢の障害者と健常者の分け隔てなく競技ができる。

前進動作、回転動作①、回転動作②
ローラースレッジの試作機に試乗する上原大祐氏
そりの刃の部分がローラーになっている以外は、パラアイスホッケーと器具は同じ。左右の手にスティックを持ち、こぐ動作で前に進み、片方のスティックを軸にしながら重心移動で方向転換をする。パッドはスティックを使って操るが、こぐのとは反対のブレード部で行う。

開発・普及を目指し一緒に推進する企業・団体を募集

 ローラースレッジの試作品は、パラアイスホッケーのそりの刃の部分にスケートボードのローラーを付けたものだ。臀部でバランスを取りながらスティックでこいだり方向転換したりする感覚は、他のスポーツにはない新鮮なもので、参加者全員が健常者であっても十分に楽しめることを確信した。今後は試作品をブラッシュアップし、競技用品として完成度を上げていく。

 会合では、このローラースレッジを活用し、タイムトライアルレースを行ったり、電動化して自動車レースのような要素を盛り込んだりする案も出てきた。この器具を使って、誰でもトレーニングができる「パラササイズ」の提案もあった。

 本プロジェクトは、現在のメンバーで既に進行中であるが、プロジェクトの進行を加速し拡大させるため、さらなるパートナーを受け入れる計画だ。

 パートナーの対象は、ローラースレッジホッケーの競技用品、開催場所、広告、運営などに関わりたい企業・団体である。2019年2月7日に事業説明会を開催するので、このプロジェクトに関心があれば、まずは参加してみてはいかがだろうか。

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