プロジェクト活動報告
(2019年1月~5月)

ひと目で分かる開発テーマの進捗

ひと目で分かる開発テーマの進捗

開発No.021 100㎏可搬ドローン
ついに試作機開発が始動 現場での試験も視野に

 市場で高値で売れるお宝の木だけを山から下ろす──。そんな目標に向かって現在活動しているのが、「100㎏可搬ドローン」プロジェクトだ。そもそもは空を飛ぶ機械の活用を考えていたが、危険性や作業効率が悪いことからこのプランは諦め、山の上で切り倒した丸太を、木の間を縫いながら、ずるずると下ろす装置を開発することとなった。この話については、前号の『リアル開発会議』で既報の通りである。

 機器の開発は、岩手県花巻市で木材業を営む小友木材店の小友康広氏の構想に沿って進めている。まずは山から木を下ろす機械を粗削りでもいいから開発し、それを木材業界の方に見てもらうことで、ニーズの確認と、ブラッシュアップをするというものだ。

 そこで、リアル開発会議メンバーは、この要望に応え、最も安く、素早く開発できる方法を検討した。ジオラマとラジコンを使って、木材業界の方に披露するという案も出た。一方で、開発の手間を考えれば、実用的な試作機をいきなり造った方がいいという声も上がったが、最終的には、既存の製品を改良する方向で落ち着いた。市販の農業用電動運搬機械の中に、想定する機械に近いものが見つかったからだ。土木作業で利用する1輪車のタイヤの部分が電動のクローラーになった装置である。

 早速、2019年4月にこの市販品を入手。すぐに山に持ち込み、改良しない状態でどの程度使えるかを試してみた。結果は、上々。改造をせず、そのままでも、思った以上に使えることが分かった。

 一方で、いくつかの課題も見えてきた。大きくは操作性に関わる部分だ。

 農業用の運搬機である本機は、荷物を載せて荷台を押す形となっている。今回の使い方では、丸太の端を荷台に置き、これを斜面に沿って引っ張る形になるが、こういう使い方では操作性が悪い。また、当然ではあるが、本機は荷台の中に荷物が収まるような設計になっており、重心位置は機体の真ん中あたりである。しかし、目的とする使い方では、丸太が荷台からはみ出て、重心位置は大きく丸太側にずれる。これが操作性に影響に与えることが分かった。

山現場のプロが太鼓判

 リアル開発会議メンバーは、この課題に対応するべく、改造の方針を決定した。改造の詳細については、知財取得前のため、ここでは控える。

 同年5月末に、改造した装置を使って再度実験を行った。この実験には岩手大学大学院で林業を研究する、坂野昇平氏が参加した。坂野氏は馬や運搬機械を使って、1本、あるいは数本ずつ、山から木を下ろす作業を実践している山現場のプロである。

 興味深かったのは、リアル開発会議メンバーと、この坂野氏の感覚の違いである。リアル開発会議メンバーは、この改造によって操作性は改善したものの、大幅な変化は感じられず、さらなる改造が必要ではないかと考えた。一方、山現場の作業経験が豊富な坂野氏は「これは十分使える」という感覚を得た。同氏が現在、山現場で利用している機械は一回り大きいため小回りが利かない、内燃機関式であるため、音がうるさく排ガスが気になる、トルクが弱い、という問題を抱えているという。対して、本機は小回りが利き、電動式であるため低速のトルクが大きく、騒音・排ガスがない。

 次回は、さらなる改造の上、坂野氏が利用している機械との比較実験を行う予定だ。

開発No.023 リアル解体ラボ
新型リーフシリーズ5冊が完成 次はあの大物に挑む

 電気自動車(EV)を多様な企業と分解・分析するプロジェクト「リアル解体ラボ」が、一区切り付いた。2018年中にすべての調査を完了し、予定していた全5冊の最後のレポートが2019年3月に日経BPから発刊されたのだ。

 プロジェクトは1年超に上った。2017年末に「リーフ」を入手。自動運転や走行試験の後、2018年1月から分解を開始した。

 同年3月には、走行試験と全体的な構造を解説した『日産自動車「リーフ」徹底分解2018[全体編]』を発刊。その後、同年7月に同[ECU編]、2019年2月に『日産自動車「リーフ」徹底分解2019[インバーター/PDM編]』、同年3月に同[モーター編][電池編]を刊行した。

 このプロジェクトを通して得られたのは、分解物を整理するノウハウ、および分析技術と知見を持つ企業や組織とのネットワークである。今後は、これらを武器に、効率的に深い分析を進められる。次のターゲットは、米国から上陸する、あの話題のEVだ。

開発No.031 自己完結水素インフラ
技術を持つ企業が集結 強いニーズを持つユーザー求む

 再生可能エネルギーと、Liイオン2次電池、水素エネルギーを組み合わせて、小規模な地産地消エネルギーシステムを構築しようというのが、「自己完結水素インフラ」プロジェクトだ。電力は再生可能エネルギーで発生。2次電池で短期的な電力需給の変動に対応する。2次電池でも吸収できない電力は水を電気分解して水素とし、水素吸蔵合金で貯蔵する。この仕組みにより、日照量が少ない冬の時期でも、燃料電池を動かして、系統からの電力を不要にできる。

 本プロジェクトの説明会は2019年3月に開催し、コア技術を持つ東北大学金属材料研究所/産学連携先端技術研究開発センター 特任教授の河野龍興氏のほか、自動車関連メーカー、機械設備メーカー、電機メーカーなどが集まった。この説明会では1時間ほどワークショップを行ったが、それを通して見えたのは、技術は既に持っているものの、どこから手を付ければよいか悩む各社の姿だった。

 リアル開発会議事務局としては、2つのアプローチで臨みたいと考えている。1つは、ニーズのさらなる探求。将来の電力システムは、インフラ維持の観点から、個別分散が主流になる。ただ、現時点では、系統電源が津々浦々まで延びている。そんな現状でも、自己完結水素インフラに切実なニーズを持つ使い手を探す必要がある。

 もう1つは、標準化の推進である。現在、自己完結水素インフラを構成する製品や技術は存在するものの、システム全体としての統一された標準はない。制度と製品の両方で、資格者なら誰でも簡単に扱えるような仕組み作りが必要だ。

 ニーズについては災害対策とのセットが有効だと考えているが、具体的な計画はこれからだ。ぜひとも皆さんからのニーズをお聞きしたい。

開発No.032 古民家ルネサンス
古民家の相続が共通の課題 成功モデルの確立を目指す

 「古民家ルネサンス」は、存続の淵に立つ日本全国の古民家を、朽ち果てさせることなくよみがえらせようというプロジェクトだ。

 本プロジェクトの発端は、まさに存続が危うい古民家を持つオーナーからの相談だった。このオーナーは、母親の死をきっかけに古民家を相続した。この古民家は、一度壊すと二度と造れないような価値のある建物である。とはいえ、既に別の場所に自宅を持っており、この古民家に住む予定はない。だから、何とか存続できないか、というのである。昨今の古民家の空き屋が増える状況を見るにつけ、これは日本における普遍的なテーマである。そこで、リアル開発会議で参加者を募集することにした。

 2019年2月の同プロジェクトの説明会には約20人が集まった。参加者の所属組織はIT企業や製造業、ベンチャー企業など多彩。ただ、参加の動機はいずれも、社業のためというよりも、古民家のある地域社会を何とかしたいという思いだった。

 説明会には、先に紹介したオーナーと同じ境遇の人も複数参加した。聞くと、「自分は今、東京に住んでいるが、高齢の親が住んでいる古民家が郷里にある。親戚から、立派な建物だからちゃんと相続をして維持せよと言われて悩んでいる」「現在、古民家に住んでいて自分の代は何とか維持できているが、息子世代にそのまま相続させるのは難しそう」という。立場は違えども、根本にあるのは古民家の相続と存続の問題だ

 この説明会をきっかけにして、リアル開発会議事務局は参加者の古民家を訪問したり、その古民家の活用法を検討したりする活動を続けている。また、地方自治体とも連携を協議している。様々な立場の人とともにリアル開発会議流の古民家・地域再生モデルをまずは1つ作ることが、解決への近道だ。

開発No.033 空飛ぶトラック
実現できる技術は手中に 立ちはだかる企業内の壁

 ヘリコプターのように浮上し、飛行機のように滑空する。そんな飛行体を使った重量物を運ぶサービスを考えよう。これが「空飛ぶトラック」プロジェクトである。

 このプロジェクト、荒唐無稽に思えるが、実は技術的な裏付けがある。国立の研究機関などから開発委託を受け、垂直離発着(V/STOL)可能な4発チルトウイング(QTW:Quad Tilt Wing)機を開発してきた技術者たちが集結しているからだ。実証機の開発には成功しており、スケールアップすれば実用化できる。

 本プロジェクトの説明会は2019年3月に開催した。参加者はQTWを開発してきた技術者たちのほか、機械メーカー、電機メーカー、商社に属する社員などである。ニーズ側として、山小屋を管理している団体や、大規模に牧場を経営している企業の社員も参加した。

 同年4月には、事業検討会を開催した。この場で、説明会の参加者に対して、リアル開発会議事務局からの案をぶつけてみた。まずは開発のための会議体を立ち上げ、ビジネススキーム作りと、それに合わせた機体づくりを行おうというものだ。

 この提案への反応で明らかになったのが、企業内の壁である。企業がプロジェクトを前に進める場合、社内の稟議において必ず売上計画が求められる。この売上計画がない状態では、上司に言い訳が立たず、会議体に参加するのが難しい。

 我々としては、うまくいくかどうか分からないから、みんなで考えようと呼びかけているわけだが、社内の壁は厚い。まずは身軽に、参加できるメンバーで進め、空飛ぶトラックの実現に近づきたい。

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