新デジタル技術の導入で都市課題、
地球環境問題を解決へ
IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、AI(人工知能)、デジタルツインなどのデジタル技術を活用したスマートシティ・プロジェクトが世界の各都市で活発化しています。背景には、深刻化してきた都市問題と地球温暖化問題があります。世界の共通課題は、交通渋滞・交通事故などの交通問題、大気汚染、洪水や森林火災などの災害、新型コロナウイルス感染症などであり、これらをデジタル技術の活用で解決することが狙いです。
本レポートでは、欧州、北米、アジア・アフリカ、日本における、デジタル技術を活用した代表的なスマートシティ・プロジェクトに関して、プロジェクトの狙い、進行状況、今後の計画などを現地取材も含めて徹底調査しました。さらに、これらの都市にデジタルソリューションを提供しているIoT・ITプラットフォーム、センサー・スマートアプリケーション、モビリティソリューションなどのベンダーの戦略を明らかにします。
徹底調査
世界27のスマートシティ・プロジェクト
世界26社のソリューションベンダー戦略
今知っておくべき、
デジタル・スマートシティの
10大トレンドを網羅
01
世界の潮流
都市問題解決、カーボン・ニュートラル達成のために新デジタル技術採用のプロジェクトが活発化
IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、AI(人工知能)、デジタルツインなどのデジタル技術を活用したスマートシティ・プロジェクトが世界各国で活発化している。背景には、深刻化してきた都市問題と地球温暖化問題がある。欧米・日本などの先進国とアジア・アフリカなどの新興国で共通する課題は、交通渋滞・交通事故などの交通問題、大気汚染、洪水や森林火災などの災害、新型コロナウイルス感染症などであり、デジタル技術を使ってこれらの課題を解決することが求められている。デジタルベースのスマートシティは、まず街灯や駐車スペースをネットワークで結びスマート化する個別の課題を解決するアプリケーション開発から始まった。さらに、構築したセンサー・ネットワークを活用して、収集したデータを分野横断的に利活用し、さまざまなアプリケーションを一元管理するプラットフォームを構築する方向に進んできた。大手ICT企業や通信企業がスマートシティ・プラットフォームをクラウドサービスとして自治体に提供し始めたこともプラットフォーム化を後押しした。自治体はそれを都市OSと位置付けて導入。交通・環境・災害・新型コロナなどの対策に役立てると共に、市民のQOL(生活の質)向上を目指している。
世界各地域・国の代表的なスマートシティ・プロジェクト
先進国、中でも欧州は、地球温暖化対策への取り組みを強化しており、その対策の一環としてスマートシティをとらえている。そのためには、IoTソリューションを活用してエネルギー管理を最適化とする共に、交通や住宅・ビルをスマート化することによる省エネ化が不可欠である。先進国ではまた、自治体政府が持つさまざまな行政データをオープン化する動きが活発化している。アジア・アフリカ諸国の新興国では、人口増大と共に大都市への人口流入が急速に進んでおり、エネルギーや上下水道、道路、公共交通機関などのインフラ不足、住宅不足によるスラム化、交通渋滞、犯罪多発などの都市問題が深刻化している。そこで、基本的なインフラ建設と共に、デジタル技術を搭載して一足飛びにスマートシティ化しようという構想を持っている。先進国のスマートシティ・ソリューションベンダーがプロジェクトに参加することも多く、ビジネスチャンスととらえている。
欧米・日本などの先進国ではデジタル技術の活用で都市問題と地球環境問題を解決するプロジェクトが盛ん。新興国では基本的なインフラ構築と共にスマートシティ化を志向(出所:日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)
新型コロナウイルス感染症対策を盛り込んだプロジェクトが登場、IoTプラットフォームを活用
世界各都市に共通する深刻な課題として浮上してきたのが、新型コロナウイルス感染症対策である。有力な方策の1つが、スマートシティ向けに設置したIoTプラットフォームおよび統合管理センターを、コロナ対策向けに活用する試みである。特に、感染拡大が深刻化しているインドの各都市では、補助金で設置したICCC(Integrated Command and Control Center)を、複数部署が連携して新型コロナウイルス対策に取り組む「COVID-19 War Room」に衣替えするケースが相次いでいる。感染者・濃厚接触者のモニタリング、監視・アラート、ロックダウン違反者の摘発などに役立てる。欧米では、政府が進めるオープンデータ化の一環として、感染症情報を充実させている。
新型コロナウイルス感染症対策を盛り込んだ典型的なプロジェクト(出所:日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)
02
欧州
2050年までのカーボン・ニュートラルを掲げたEU、都市レベルではより高い目標を設定するケースも
欧州ではEU(欧州連合)が主導して、各都市のスマートシティ化を推進している。背景には、地球温暖化対策を中心とした環境対策に対する強い意識がある。EUは2015年に合意された、地球温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定に基づき、2030年までに温室効果ガスの排出量を1990年の水準から40%削減する目標を掲げた。さらに、2019年12月に打ち出した新方針「欧州グリーンディール」では、2030年まで50~55%削減し、2050年までにカーボン・ニュートラル(CO₂の収支をゼロにする)を目指すという、より高い目標に変更した。
欧州主要都市の脱炭素目標とスマートシティ・プロジェクトの概要
カーボン・ニュートラルを達成するうえで重要なのは都市をスマート化して、低炭素プロジェクトを推進していくことである。そのため、欧州の大都市の多くは、独自の低炭素目標を立てて、達成のためのロードマップを立案してスマートシティ・プロジェクトを進めている。ドイツ・ベルリン市などEU方針に沿って、2050年のカーボン・ニュートラルを目指す都市が多い中で、EUの目標を上回る目標を立てている都市もある。
(出所:日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)
産官学やPPP体制を構築してスマートシティ推進体制を強化、市民参加の動きも活発化
欧州の都市がスマートシティ・プロジェクトを推進する体制として共通しているのは、企業など産業界、政府機関、大学・教育機関がコンソーシアムを結成して、産官学やPPP(Public Private Partnership:官民連携)の体制を構築していることである。中でも、アムステルダム市がスマートシティ推進組織として2008年に設立した「ASC(Amsterdam Smart City platform)」は、PPPにさらにP(People:市民)を加えたPPPP(Public Private People Partnership)を目指すとしている。
アムステルダム市のスマートシティ・プロジェクト推進組織PPPP。市政府、企業、研究機関、住民代表の4者が共同で都市課題を抽出し、プロジェクトの企画・運営にあたっている(出所:ASC)
03
北米
米国政府がスマートシティ・プロジェクトを主導、DOT がコンペ「Smart City Challenge」を実施
米国政府は、2009年に景気委刺激策であるARRA(American Recovery and Reinvestment Act of 2009:2009年アメリカ復興・再投資法)を成立させ、約1300億ドルにのぼる予算を電力などのインフラ分野に振り当てることを決定した。この際には、各自治体はスマートメーターなどの電力インフラやスマートグリッドの導入を進め、電力やエネルギーを中心としたスマートシティを目指す動きが盛んになった。2015年9月には、2年間で総額2億4000万ドル規模の予算を付けた「Smart City Initiative」を立ち上げ、都市が抱える交通渋滞や防犯対策、経済成長、気候変動対策、市民サービスの向上などの問題解決を図っている25 以上のスマートシティ事業に財政支援を行った。さらに同年12月には「Smart City Initiative」の関連事業として、DOT(Department of Transportation:米国運輸省)が、モビリティを中心としたスマートシティ関連の新技術やアイデアを競うコンペ「Smart City Challenge」を実施。全米78都市から応募があり、2016年3月に7都市をファイナリストとして発表、同年6月には、オハイオ州コロンバス市が優勝都市として選定された。
「Smart City Challenge」に応募するための提案に盛り込むべき要素
「新技術」では、自動化、コネクテッドカー、センサー活用のインテリジェントインフラの3点、「都市交通に対する革新的アプローチ」ではユーザーフレンドリーなモビリティサービス、都市交通データ分析、物流・配送、ビジネスモデル・パートナー戦略、スマートグリッド・EV・充電インフラ、コネクテッド環境の市民サービスの6点、「スマートシティ」ではアーキテクチャーと標準化、低コストで効率的・レジリエンスの高いICTインフラ、土地のスマート活用の3点を挙げている。
(出所:DOT)
原則すべての行政データをオープン化へ、連邦政府、市政府の取り組みが2010 年代から活発化
米国では、スマートシティ・プロジェクトの一環として、行政が所有するデータをオープン化する動きが活発化している。その大きなきっかけとなったのが、2009年5月に発足したばかりのオバマ政権が発表したオープン化を進める戦略を示した「Open Government Initiative」である。同年12月にはオープンガバメントに関する連邦指令「Open Government Directive」が発令された。連邦政府、州政府、市政府が保有するさまざまな行政データを公開することによって、市民に対して開かれた透明性の高い政府の実現を目指すと共に、行政サービスの管理・運営の効率化や改善、オープンデータを民間企業が活用することによるイノベーションや経済成長・雇用創出を促すことを目的としている。
北米におけるオープンデータ活用の主要スマートシティ・プロジェクト(出所:日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)
04
中東・アフリカ
化石燃料に依存した経済からの脱却へ、再エネの研究・開発ハブを目指し新モビリティを導入へ
中東地域では、石油や天然ガスなどの化石燃料に依存した国が多く、その枯渇を見越して、新しい産業を興し、深刻な失業問題を解決することが課題となっている。エネルギー面では再生可能エネルギーで経済活動を賄うショーケースを示し、投資を活発化させて研究・開発面でもハブとなることを目指している。さらに、デジタル技術を積極的に採用して行政サービスを効率化し、モビリティ面では、CO₂を発生しないEV(電気自動車)や電動バスを中心としたシステムとし、ドライバーレスの自動運転車をラストワンマイルの移動手段とする構想を描くプロジェクトが多い。
最新デジタル技術の導入を志向、ドバイ、ドーハ、カイロの新プロジェクトで新ソリューションを採用
中東のプロジェクトでは最新デジタル技術の導入計画も目立つ。典型が、UAE ドバイで進む「Smart Dubai」である。AI(人工知能)やブロックチェーンといった新しい技術を積極的に導入し、デジタル化を進めてきた。中でも2021年までにすべての政府業務をデジタル化して100%のペーパーレス化を目指す目標を掲げて、政府業務の効率化に取り組んでいる。2017年には、「Smart Dubai 2021」を発表、「スマートピープル」、「スマートリビング」、「スマート経済」、「スマート環境」、「スマート政府」、「スマートモビリティ」の6テーマについて、デジタル技術の活用で実現を図る。
中東・北アフリカにおける代表的なスマートシティ・プロジェクト(出所:日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)
ラゴス近郊で建設進むスマートシティ「Eko Atlantic City」、エネルギーや通信インフラを整備
ラゴス州政府が、深刻化する大都市集中や都市問題を打開する対策の1つとして打ち出したのが、ラゴス市近郊の海岸部を埋め立てて新都市を開発する計画である。しかし、同国政府は財政難から都市開発を進める余裕がないことから、2005年に民間から計画を募集した。その結果選ばれたのが、ゼネコンや不動産事業を展開するナイジェリアのChagoury グループが提案した「Eko Atlantic City」である。2006年7月にはラゴス州政府と同グループの子会社であるSouth Energy Nigeria がコンセッション契約を結んで、建設が本格スタートした。同プロジェクトでは、埋め立てにより1000haの土地を造成し、オフィスと住居を近くに建てる職住近接型とし、ショッピングモール、ホテル、マリーナなどのリゾート施設も建設する計画である。
ラゴス市近郊の海岸部で進むスマートシティ・プロジェクト「Eko Atlantic City」。左はマスタープランによる建設イメージで、マリーナなども備える予定。右は2018年2月時点の建設の様子で住宅用の高層ビルが5~6棟完成(出所:Eko Atlantic City)
05
アジア
シンガポール、インド、中国でデジタル技術を活用したプロジェクトが活発化
アジアでは、シンガポール、インド、中国でデジタル技術を活用したスマートシティ・プロジェクトが活発化している。このうち、シンガポールは自国の都市課題を解決するというよりも同国をリビングラボとしてソリューションを開発し、海外輸出する戦略である。インドは、人口増大や都市流入による都市問題、インフラ不足を解決する手段として、スマートシティ化を進めているソリューションの需要国である。中国はその両方の要素を持っており、ICT企業が中心となってデジタル技術を活用して自国の都市問題を解決すると共に、海外輸出を活発化させている。
シンガポール「国全体をスマート化」、Punggol地区でデジタル技術搭載の新街区を建設
シンガポール首相のLee Hsien Loong 氏が2014年8月、国全体をスマート化しようという構想「Smart Nation Singapore」を発表してからスマートシティの取り組みが本格化した。IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの新しいデジタル技術を活用して、モビリティ、住環境、ヘルスケアサービス、スマートハウス、エネルギー、環境保護、公的サービスなど、市民生活にかかわるあらゆるサービスをスマート化し、効率化する広範な国家戦略である。その目玉ともいえるプロジェクトが、シンガポール北東部に位置するPunggol 地区で2020年1月に建設がスタートした、デジタル技術を搭載した新街区「PDD(Punggol Digital District)」である。
(出所:日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)
インド、スマートシティ100都市計画を始動、急速に進む都市化に対応するためインフラを整備
インドは、約13億人の人口を抱え、工業化と近代化が進み、それに伴い農村部や地方から都市部への人口流入が加速し、都市化が急速に進んでいる。それに伴い、電気や水道、交通などのインフラ不足、交通渋滞、大気汚染などの都市問題が深刻化してきた。持続可能な都市基盤の整備が求められる中、第1次モディ政権が発足した直後の2014年6月に、ナレンドラ・モディ首相はスマートシティを国内100カ所に設けることを目指した「Smart Cities Mission」計画を発表した。「Smart Cities Mission」に選定されたプロジェクトの中には、それ以前から進められている大規模都市開発プロジェクトも多く含まれている。インドの都市開発やスマートシティ・プロジェクトは、財政面や都市収用問題で遅延や中断するケースが多く、同Missionに選定することで、改めて政府として進捗を後押しする意味があると見られている。
インドの代表的なスマートシティ・プロジェクト(出所:日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)
06
日本
先端技術の活用で行政の効率化や住民向け新サービスの創出を目標とする「スーパーシティ」
日本では、先端技術の活用で行政の効率化や住民向けの新サービスの創出を目標とする「スーパーシティ」構想が動き出している。内閣府によると、スーパーシティ構想の概要は「住民が参画し、住民目線で、2030 年頃に実現される未来社会を先行実現することを目指す」とし、(1)生活全般にまたがる複数分野の先端的サービスの提供、(2)複数分野間でのデータ連携、(3)大胆な規制改革、の3点をポイントとして挙げている。具体的な取り組みとして、(1)はAI(人工知能)やビッグデータなどの先端技術を活用し、行政手続き、移動、医療、教育など幅広い分野で利便性を向上、(2)は複数分野の先端的サービス実現のため、「データ連携基盤」を通じてさまざまなデータを連携・共有、(3)は先端的サービスを実現するための規制改革を同時・一体的・包括的に推進、としている。
スーパーシティに取り組む企業を中心にスーパーシティ・オープンラボを開設
内閣府は、企業や各種団体が有する知見や先端技術を生かした取り組みをバーチャルの展示ブースで常時SNS 上に出展して幅広く発信することを目的に、スーパーシティに取り組む企業を中心にスーパーシティ・オープンラボを開設している。スーパーシティ構想の実現に取り組む全国の自治体を、技術的な側面からサポートすることを目指すという。検討中のアイデアを募集する「自治体アイデア」を公募し、企業とのマッチングを実施している。
先端技術の活用で行政の効率化や住民向けの新サービスの創出を目標とする「スーパーシティ」構想。住民が参画し、住民目線で、2030年頃に実現される未来社会を先行実現することを目指す(出所:内閣府)
スマートシティから環境未来都市、そしてスーパーシティへ、先行プロジェクトは民間主体で開発
日本で先行しているプロジェクトは、企業が主体となって工場跡地などの再開発を通じたまちづくりが中心になっている。Woven City(ウーブン・シティ)はトヨタ自動車、みなとアクルスは東邦ガス、33カ所のSST(サスティナブル・スマートタウン)はパナソニックの工場跡地にそれぞれ立地している。グリーンフィールドが限られている日本では、まとまった土地で既に公共インフラが整っている工場跡地が、新しいまちづくりの格好の舞台になっている。日本のプロジェクトのもう一つの特徴は、エネルギー供給の強靭化(レジリエンス)を実現しようとしている点である。
日本における代表的なスマートシティ・プロジェクト(出所:日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)
07
プラットフォーム
データ利活用のプラットフォーム・ビジネスが登場、ビッグデータを処理・分析して行政サービスを向上
デジタル技術を活用したスマートシティを構築するうえで、データを利活用するプラットフォーム(基盤)の重要性が増し、IoT(モノのインターネット)やICT、通信インフラに強みを持つ企業がプラットフォームを開発、ビジネスモデルを構築しつつある。スマートシティ向けプラットフォームの基本機能は、街中に張り巡らした各種センサーからの情報や都市活動で生じるさまざまビッグデータを通信ネットワークで集約し、処理・分析して、都市インフラを最適管理して住環境を改善し、観光客向けのデジタルツールなどの各種アプリケーションを開発することである。
スマートシティ向けプラットフォーム事業者を中核にしたサービス・ビジネスの概要
デジタル技術を活用してビッグデータを処理分析するプラットフォーム事業者はセンサー・ネットワーク事業者やアプリケーション開発者を巻き込んでエコシステムを構築。クラウドベースのPaaSで提供。
(出所:日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)
代表的なプラットフォーム事業者の戦略・製品、実績・プロジェクト
(出所:日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)
08
センサー・アプリケーション
個々のアプリケーション向けのソリューションをワンストップで提供、IoT向けネットワーク技術を採用
スマートシティを構成するセンサーやアプリケーションを開発・提供する事業者は、プラットフォームを提供する企業と提携してエコシステムの一角を担うと共に、個々のソリューションを自治体やインフラ・設備のオーナー向けに提供している。センサーと共に、通信機器を搭載したセンサーノードを街中の様々なスポットに設置し、ゲートウエイや中継器を設置して、無線ネットワークを構築する。事業者は、これにアプリケーションごとにCMS(Central Management Software:中央管理ソフトウエア)などのソフトウエアを搭載して、ワンストップソリューションとして、SaaS(Software as a Service)モデルとして提供するケースが多い。事業者によっては、センサーを使ったモニタリングプロセス全般をサービスとして提供するビジネスモデルを「Sensing as a Service」と呼ぶ。
センサー・アプリケーション事業者を中核にしたサービス・ビジネスの概要
環境モニタリング、災害監視・予防、スマート街灯、人流監視・可視化、エネルギー管理、廃棄物管理といったアプリケーションごとのソリューションをSaaS モデルで自治体やインフラオーナーに提供
(出所:日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)
代表的なセンサー・アプリケーション事業者の戦略、実績・プロジェクト
(出所:日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)
09
モビリティソリューション
ニーズ高いスマートパーキング、ETCに続きITSの導入が進み、V2X、AI活用の実証もスタート
スマートシティ向けのさまざまなアプリケーションの中でも、自治体交通当局や市民のニーズが特に高いのがスマートモビリティである。例えば、IoT(モノのインターネット)ベースのスマートシティ構築では草分けともいえるスペイン・サンタンデール市の「Smart Santander」では、センサー・ネットワークを構築した後に最初に採用したサービスがモビリティサービスの中でもスマートパーキングソリューションであった。それだけ市民にとっては市街地の駐車スペース探しに時間をとられており、資金援助をしたEU(欧州連合)にとっても駐車スペースを探すのに自動車を無駄に走らせて、CO₂を排出していることを問題視していたことから、導入が進められた。センサーやネットワークと共にソフトウエアを従来のRFP(Request for Proposal)による入札方式でなく、交通当局者向けにSaaSで提供するソリューションベンダーが登場したことも普及を後押しした。
モビリティソリューション事業者を中核にしたサービス・ビジネスの概要
スマートパーキングやMaaS、マイクロモビリティのデータ分析などのスマートモビリティソリューションをSaaSで提供する事業者が登場。V2X、ITS、AI 活用といった最新技術の検討もスタート。
(出所:日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)
代表的なモビリティソリューション事業者の戦略、実績・プロジェクト
(出所:日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)
10
新型コロナウイルス感染症対策
スマートシティ向けIoT プラットフォームをコロナ対策室向けに改良、感染者封じ込めに活用
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が深刻化する中で、スマートシティ向けにIoT(モノのインターネット)プラットフォームやセンサー・アプリケーションを提供してきたベンダーが、改良を加えて感染症対策ソリューションを開発、提供し始めている。交通渋滞の低減や交通事故防止、治安維持などのために設置してきた交通・人流センサーやカメラを、感染リスクの高い3密(密集、密接、密閉)の監視に転用するケースが多い。自治体の多くは感染症対策センターを設置して、センサーやカメラからの情報に加えて、感染者数、死亡者数、回復者数などの感染情報をリアルタイムに収集、壁一面のモニターにこれらの情報を表するダッシュボードを設置して、監視する。
新型コロナウイルス感染症対策向けソリューションと自治体・施設の対策、市民へのサービスの流れ
スマートシティ向けにIoTプラットフォームやセンサー・アプリケーションを提供してきたベンダーが、改良を加えて感染症対策ソリューションを開発。施設内や公共交通機関内の3密監視や感染リスク低減計画立案を支援するソリューションも登場。自治体や施設管理者はこうしたツールを利用して、感染監視や防止などのサービスを提供。
(出所:日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)
コロナ対策を含むソリューションを発表した事業者の製品、効果
(出所:日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)
目 次
INDEX
エグゼクティブサマリー
第1章 分析編
- 1-1
- プロジェクト分析
- 1-1-1
- 総論
- 1-1-2
- 欧州編
- 1-1-3
- 北米編
- 1-1-4
- 中東・アフリカ編
- 1-1-5
- アジア編
- 1-1-6
- 日本編
- 1-2
- ソリューション分析
- 1-2-1
- プラットフォーム
- 1-2-2
- センサー・アプリケーション
- 1-2-3
- モビリティソリューション
- 1-2-4
- 新型コロナウイルス感染症対策
第2章 主要プロジェクト詳解
- 2-1
- 欧州
- 2-1-1
- Smart Santander
- 2-1-2
- Barcelona Smart City
- 2-1-3
- Smart City Valencia
- 2-1-4
- Smart London
- 2-1-5
- Future City Glasgow
- 2-1-6
- Smart City Berlin
- 2-1-7
- Smart City Wien
- 2-1-8
- Copenhagen Smart City
- 2-1-9
- Smart & Connected City
- 2-2
- 北米
- 2-2-1
- Smart Columbus
- 2-2-2
- City Tech Collaborative
- 2-2-3
- Smart City PDX
- 2-2-4
- NYC Open Data、LinkNYC
- 2-2-5
- DataSF
- 2-2-6
- Montreal Urban Innovation Lab
- 2-3
- アジア・アフリカ
- 2-3-1
- Smart Dubai
- 2-3-2
- NEOM
- 2-3-3
- Smart Nation Singapore
- 2-3-4
- GIFT City
- 2-3-5
- Amaravati Smart City
- 2-3-6
- Varanasi Smart City
- 2-3-7
- Net City
- 2-3-8
- Smart Dunhuang
- 2-3-9
- Konza Techno City
- 2-4
- 日本
- 2-4-1
- Woven City(ウーブン・シティ)
- 2-4-2
- みなとアクルス
- 2-4-3
- SST(サスティナブル・スマートタウン)
第3章 主要ソリューションベンダー戦略
- 3-1
- IoT・ITプラットフォーム
- 3-1-1
- Telefónica
- 3-1-2
- SICE
- 3-1-3
- Siemens
- 3-1-4
- ABB
- 3-1-5
- Cisco Systems
- 3-1-6
- Microsoft
- 3-1-7
- Alibaba
- 3-1-8
- Huawei
- 3-1-9
- NEC
- 3-2
- センサー・スマートアプリケーション
- 3-2-1
- Libelium
- 3-2-2
- Leapcraft
- 3-2-3
- Clarity Movement
- 3-2-4
- Telensa
- 3-2-5
- Itron
- 3-2-6
- Signify
- 3-2-7
- NVIDIA
- 3-2-8
- 富士通
- 3-2-9
- 日立製作所
- 3-3
- モビリティソリューション
- 3-3-1
- Kapsch TrafficCom
- 3-3-2
- Cohda Wireless
- 3-3-3
- Alstom
- 3-3-4
- Kimley-Horn and Associates
- 3-3-5
- Flowbird
- 3-3-6
- IPS Group
- 3-3-7
- Motionwerk
- 3-3-8
- Ride Report
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- 調査・編集:日経BP 総合研究所
クリーンテックラボ - 2021年9月30日発行
- レポート:A4判、236ページ
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