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文部科学省 令和3年度 委託事業
「専修学校による地域産業中核的人材養成事業」における受託団体の取り組み事例集

21世紀型専門人材の
育成プログラムの開発と実証事業

学校法人穴吹学園

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非認知能力養成を柱にした専門人材の育成プログラム開発

高専接続プログラムに取り組むことになった背景と課題

 今、日本の多くの地方自治体が若者の人材流出という大きな問題を抱えている。香川県においても、大学進学時の県外流出率が8割を超えており、その後のUターン率も低いことが地域課題となっている。香川県が2019年に実施したアンケートによれば、大学生が県外に進学する理由の1位は「希望する企業や仕事がない」(58.9%)である。これは、地元企業の魅力などを知らないまま、県外の大学等に進学し、その地で就職する層が多いことを示す結果であろう。一方で、大学進学者の8割が県外に流出するのに対し、専門学校(穴吹学園)については、地元出身者が8割近くを占め、地域への人材供給の面で一定の評価がある。

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左上:大学進学時の県外流出率
左下:専門学校(穴吹学園)の県内出身率
右上:日本人18歳の自己効力感を持つ割合
右下:採用選考時に企業が重視するポイント

 以上を踏まえると、地元で学び、地元で働く人材を増やしていくためには、専門学校が高等学校や企業と連携して、高校段階から一貫性のある体系的なキャリア教育を行い、その後に続く専門教育へと接続していくことが求められていると言える。

 その教育プログラムの内容についても、変革が必要である。AIやロボットの進化などにより変化が加速し、将来の予測が困難な現代においては、専門学校で獲得した専門知識・技術が陳腐化していくリスクが高まっているからだ。これからの専門学校生に求められるのは、卒業し就職してからも、変化にタイムリーに対応していくために、主体的かつ柔軟に学び直せる「自学自修型」の人材になることである。

 実際、企業が学生を選考するにあたって重視するポイントは、日本経団連のアンケート調査では、調査開始以来変わらずコミュニケーション能力や主体性が最上位にあげられている。香川経済同友会のアンケート(2021年2月実施)でも、求める能力の1位は「コミュニケーョン能力」であり、新人に物足りなさを感じているのは、「指示待ちで、主体的に考え動こうとしない姿勢」であった。その背景として「自己効力感」が低いこと、いわゆる非認知能力の養成に課題があることがうかがえ、裏返せば大学を含めて学校側がその要求に応えきれておらず、コミュニケーション能力や自己効力感の向上・改善のために、非認知能力の養成が必要であることがわかった。

 専門学校は、専門知識の教育、すなわち認知能力の養成を訴求するため、非認知能力の養成に積極的に取り組めてこなかったのが実情である。認知能力を養成していくプロセスの中で、非認知能力をいかに教えていくかが課題である。

 高等学校においては、非認知能力の土台作りをしながら、同時にキャリア教育の充実が求められる。「教員自身の社会経験不足(職業イメージをリアルに伝えきれない)」、「多忙からの時間不足」、「外部講師招聘が困難な環境(ネットワーク不足、謝金等の予算不足)」などを原因とするキャリア教育の不足は、「とりあえず行けるところへ」といった安易な進路選択につながり、結果としてミスマッチによる退学や早期離職を招く要因の一つになっていると考えられるからである。とくに、地元企業の魅力や地域の課題などに触れながら、視野を拡げ、見識を深め、自らの進路を主体的に選べるように導くキャリア教育は、「地元で学び、地元で働く」人材育成にとって必要不可欠と言えよう。

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将来の夢や目標がある、と回答した高校生の理由を書いてもらっている テキストマイニングした結果→保育士 警察官など具体的な職業 憧れ 夢を叶える ポジティブなワードが並んでいる

課題を解決するためのプログラムと成果指標

 本事業では、高校と専門学校をつなぐ魅力的な教育プログラムを開発することで、地元の専門学校で学び、地元で働きたいという高校生を増やし、先の読めない時代に対応できる新しいタイプの専門人材の育成を目指す。

 高等学校には、従来の進路指導・キャリア教育とは異なる新しい取り組みとして、仕事・地域・社会を通し、自分を知り、その過程で考え方や選び方、生き方も身につける一貫した体系的プログラム「自分探究ナビ」を開発・導入する。「自分探究ナビ」では、まずはマインドセットのリセット(「自分はダメな人間だと思う」といった先入観を取り払い、「難しい問題でもきっとできる」という自己効力感を醸成)から始め、視野を拡げ、可能性を拡大しながら、徐々に選択肢を絞り込んでいくというプロセスをたどる。また、「総合的な探究の時間」や「産業社会と人間」、ロングホームルームの時間を活用し、コーディネーターを中心として専門学校や企業の協力も得て作り上げていく協働型プログラムとする。これは、従来の出前授業のように高校からの依頼に基づき行う単発的なものではなく、専門学校からの提案に基づくまったく新しい体系的なキャリア教育である。

 専門学校には、専門学校の強みを活かして非認知能力も養成するプログラムとして「専門探究ナビ」を開発・導入する。「専門探究ナビ」は、専門科目の学習、資格検定の取得、実習などの教育機会を単なる受験勉強や体験で終わらせることなく、そのプロセスで、目標を達成する計画力や計画に狂いを生じさせる予期せぬ事態にも冷静に対処する修正力、資格試験に合格後もさらに上級レベルを目指して学び続ける習慣、挫折体験から立ち直る力(レジリエンス)など、非認知能力の養成も目指すプログラムとする。

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 また、非認知能力の養成という性質上、カリキュラムの内容以上に、教え方の工夫や教員の意識改革など教える側の変革に力点を置くのが「専門探求ナビ」の特徴となっている。そのために、岡山大学の中山芳一准教授の指導のもと、非認知能力養成の専門チームを立ち上げ、高等学校の先生も含めて勉強会などを始めている。

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 事業にあたって設立したコンソーシアムには、高等学校8校、専門学校9校、行政機関(香川県教育委員会、3自治体)、企業・団体が参加。各参加者は、カリキュラム・シラバス・教材の開発を支援するとともに、メンター派遣などの人材協力を行う。また、企業は非認知能力養成の効果検証を行い、それをプログラムにフィードバックすることで、よりよいプログラムを開発するサイクルを構築する。

 開発プログラムのKPIは以下の通り。

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 さらに、「自己効力感がどれぐらい上がったか」、「非認知能力への理解度がどれぐらい上がったか」という教員・学生の意識変化もKPIに加えた。教員の意識変化も対象にするのは、非認知能力の養成において教員の意識変化が出発点になると考えるからである。

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