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文部科学省 令和3年度 委託事業
「専修学校による地域産業中核的人材養成事業」における受託団体の取り組み事例集

高・専一貫教育による
eスポーツ中核人材養成モデル開発事業

一般社団法人日本eスポーツ学会

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成長著しいeスポーツ分野のキャリア教育を
構築・整備する

高専接続プログラムに取り組むことになった背景と課題

 近年、『eスポーツ』は新しいエンターテイメントとして世界的に注目を集めている。eスポーツとはコンピューターゲームやテレビゲームで行われる対戦のことで、さまざまなジャンルを含む“ゲーム競技の総称”である。世界のeスポーツ競技人口は3億人以上と推定され、日本においても10代の若者を中心に急速に関心が高まっており、国内最大規模の高校生のeスポーツ大会では、2021年の総エントリー数が1,960校、5,675名に達している。また、「4割近くの高等学校がeスポーツを部活動・同好会として学校で取り組んでいる」という調査結果(STAGE:0「全国の高校を対象としたeスポーツに関するアンケート調査)もある。こうした成長を反映して、将来なりたい職業ランキング(2019年、ソニー生命保険調べ)に「プロeスポーツプレイヤー」が中学生男子で2位(23.0%)、高校生男子で7位(9.3%)にランクインするなど、eスポーツ業界を将来の進路として志向する子供たちが増えている。

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 この10代の志向性を受けて、通信制高等学校のeスポーツコース設置や、専門学校のeスポーツ分野の専門人材養成課程の新設が相次いでいる。2021年6月時点で、全国の通信制高等学校12校でeスポーツコースが運用され、専門学校約30校でeスポーツ関連学科が設置されていることを確認できている。これらの高等学校・専門学校における現状のeスポーツ教育は、プロプレイヤーを目指す生徒・学生が大多数であるため、競技スキルの養成を中核としている。しかし、卒業後、プロプレイヤーになれるのはごく限られた一握りであり、「プロプレイヤーにはなれなくとも、eスポーツ業界に就職したい」生徒・学生のための出口の設定が課題となっている。

 一方、eスポーツ業界では急速な市場成長に伴って、多様な企業の参入が相次ぎ、eスポーツの知見を持つ人材へのニーズが生まれている。ただこれらの企業で働くには、各業種・職種の専門技能やコンピテンシーが求められ、eスポーツの競技スキルに特化した学生では就職は難しい。現在も高等学校・専門学校において他の職種で必要とされる専門技能・コンピテンシーの教育は行われているものの、付帯的な位置づけでしかなく、企業が求める水準には達していないからである。また、eスポーツの知見に関しても、「大会運営の方法」、「チーム運営の方法」、「配信の仕方」などのビジネス要素がカリキュラムに組み込まれているが、高等学校と専門学校でその内容が重複してしまっている。そのため、eスポーツを高校3年間学んだ生徒がより深く学ぼうと考えて専門学校に進学しても、実りがないという問題がある。

 以上のように、eスポーツ分野では、高等学校・専門学校で養成される人材と、業界・企業の人材ニーズとの間にミスマッチが生じており、希望する就職が容易にかなわないというのが実情である。こうしたeスポーツ分野でのキャリアビジョン形成の困難性は、学生の学習意欲を阻害し、中途退学に繋がることも危惧され、この現状の打開は喫緊の課題となっている。現実的な出口を見据え、企業のニーズ等を反映したeスポーツ分野の専門教育の実現が求められている。

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課題を解決するためのプログラムと成果指標

 本事業では、「eスポーツ分野の知見」と「各業種・職種の専門技能・コンピテンシー」との両方を併せ持つ人材を育成するために、通信制高等学校および多様な分野の専門学校による連携体制を構築し、高等学校段階でのeスポーツ分野でのキャリアデザインから専門学校での就職に向けた職種別専門技能・コンピテンシーの学びへと連続的に繋げる5年間一貫教育プログラムとして、『高・専一貫教育によるeスポーツ中核人材養成モデル』を開発する。教育プログラムのコンテンツおよび学習内容・目標は以下のとおりである。

<高等学校>
コンテンツ
・「キャリアデザイン」、「eスポーツリテラシー」、「職種別専門技能」「職業人コンピテンシー」の4系統で構成されるカリキュラムを設計。
・ eスポーツ産業の全体像や仕事の種類・内容などのオーバービュー的な内容から、より具体的な各業種・職種の仕事の内容や必要なスキル、キャリアパス、職業倫理などの内容まで、段階的に学習できるテキスト教材「キャリア学習テキスト」を開発し使用。
・ キャリア学習テキストを使用した講義映像、eスポーツ関連職種の職業人の講話・インタビューの映像など、映像コンテンツを制作して使用。
・各eスポーツ関連職種の仕事の現場や全体の流れ、特徴的な仕事のシーンなどを体験できる「職業体験VRコンテンツ」を開発して使用。

学習内容・目標
・競技スキルの研鑚に努めつつも、eスポーツ分野でのキャリアに関する知識を学習。
・eスポーツ業界に関する幅広い知識の学習や、業界企業との交流、各専門分野の基礎教育を通して、自身の興味関心・スキル・特性等の理解を深める。
・これらを通して、学生たち自身が、自分に合ったeスポーツ分野でのキャリアビジョンを形成した上で、進路を選択させることを目標とする。
プロプレイヤー・ストリーマー志望者はeスポーツ専門学校へ
ソフトウェア開発・ハードウェア開発志望者はIT・ゲーム専門学校へ
イベントサービス志望者はビジネス専門学校へ

<専門学校>
コンテンツ
・各職種についてeスポーツに特化した専門技能等を養成するカリキュラムを設計する。
・企業との連携により、2年生は企業訪問・インターンシップを実施。

学習内容・目標
・様々な分野の既存の専門課程にアタッチする形で、各職種のeスポーツに特化した専門技能等を養成するカリキュラムを設置。
・この体制のもと、各学生は、高校段階で培った知見・技能を踏まえ、選択した特定の業種・職種に求められる実践的な専門技能・コンピテンシーを醸成。

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 本事業は、専門学校、行政機関(eスポーツに前向きな行政機関が増えている中、茨城県でeスポーツを担当する茨城県産業戦略部産業政策課が参画)、専門学校、企業が参画する「eスポーツ中核人材養成コンソーシアム」のもと、一般社団法人日本eスポーツ学会がコーディネーターとなって推進する。

 KPI、KGIについては、以下の観点、留意点を検討し、設定する予定である。

<高校段階でのKPI>
・3つの観点
eスポーツ分野の社会・職業・キャリアに関する理解度(目標値例:1年生30%、2年生60%、3年生90%)
eスポーツ分野での具体的なキャリアビジョンの獲得率(目標値例:1年生30%、2年生60%、3年生90%)
eスポーツ分野での職種別専門技能に対する理解度(目標値例:1年生30%、2年生60%、3年生90%)
・本事業で開発したカリキュラム・教材等を活用した講座を運用し、その際に実施する受講者アンケート等により、上記の観点に関する現状値や受講前後の変化を測定。

<本事業でのKGI>
・2つの観点
eスポーツ分野の教育機関への進学率
eスポーツ分野の業界企業等への就職率
・eスポーツ分野は新しい分野であり、データに乏しく、実態を踏まえた現状値や数値目標の設定が困難である。
・令和3年度~令和8年度までの6年間の取組みの中で、教育機関・業界企業等と議論しながら、徐々に具体化を目指す。

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