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文部科学省 令和3年度 委託事業
「専修学校による地域産業中核的人材養成事業」における受託団体の取り組み事例集

Withコロナ/人生100年新時代における歯科衛生士養成専門学校と高等学校の有機的連携プログラムの開発・実証事業

一般社団法人福岡県歯科医師会立 福岡歯科衛生専門学校

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需要は大きいのに進学希望者が少ない――
歯科衛生士をめぐるギャップを高専連携で解消

高専接続プログラムに取り組むことになった背景と課題

 歯科衛生士は歯科医師とともに、むし歯と歯周病に代表される歯科疾患の予防や治療の担い手である。近年の研究では、「口腔の健康」が全身の健康と疾病予防に大きく関わっていることが明らかになっており、健康長寿の実現には口腔の衛生管理が極めて重要だとされている。この口腔健康管理は、歯科医師ではなく歯科衛生士が担うもので、歯科衛生士なくして口腔の健康を守ることはできない。健康意識がますます高まり、口腔衛生への関心が高まる中、歯科衛生士の需要も増している。

 しかし現在、その不足が大きな問題となっている。令和元年度の全国の歯科衛生士養成校への求人倍率は20.7倍で、同年度の平均有効求人倍率1.6倍を大きく上回っている。同じ医療職である看護師の求人倍率約2.3倍と比べても非常に高い。福岡県内では現在約6500人の歯科衛生士が業務に従事しているが、約2000人不足しているとされる(令和2年福岡県歯科医師会調べ)。歯科衛生士は慢性的に不足しているのである。

 こうして慢性的な人材不足によって歯科衛生士の需要が非常に高くなっているにもかかわらず、歯科衛生士養成校への進学志望者はなかなか増えないという現状がある。令和2年度の全国の歯科衛生士養成校の61.3%が定員割れとなっており、同年度の平均入学定員充足率は85.9%に過ぎない。この状況が続いているのは、歯科衛生士の社会的認知度が低く、業務内容が正確に認知されていないためだと考えられる。

 加えて、歯科衛生士養成校に進学、あるいは歯科衛生士として就職した後に、ミスマッチや不明確なキャリアビジョンなどを理由に退学・離職する者が一定数いることも大きな問題である。たとえば、最終目標が国家資格「歯科衛生士」の取得にある歯科衛生士養成校にキャリア意識・志の希薄なまま入学した学生は、国家試験の勉強に耐えきれずに退学してしまうケースがある。

 以上の諸課題を解決するためには、高校生の段階から歯科衛生士の認知度を向上させ、その仕事の魅力を伝えることが必要である。これまでも、福岡県歯科医師会は県内の歯科衛生士養成校と協力して、歯科衛生士の認知度向上を目的に、高等学校の進路指導教員に対して啓発活動を行ってきた。しかし、長年の取り組みにもかかわらず高校生の認知度は依然低いままである。そこで、本事業では、高等学校と専門学校が連携して共通の目標を設定し、キャリア教育や非認知能力開発を導入した有機的連携プログラムを開発・実施することによって、歯科衛生士の職業を理解し目的意識を持った歯科衛生士養成校進学志望者の増加と就職後の早期離職者の減少につなげ、地域口腔保健の中核を担う人材の育成を目指す。

 あわせて、本プログラムでは高等学校に歯科保健教育を導入し、「口腔の健康」への理解を深めることも目指す。平成28年歯科疾患実態調査によれば、15~19歳で歯肉炎(歯周病の初期段階)の症状の「歯肉出血がみられる者」が30.6%にも上っている。歯科保健教育によって高校段階で歯肉炎を減らすことは、さまざまな全身疾患と関連する歯周病の予防になり、生涯にわたる全身の健康づくりに寄与するものとなる。

課題を解決するためのプログラムと成果指標

 本事業では、高等学校、専門学校、行政、業界団体・企業が連携して、「Withコロナ/人生100年新時代における歯科衛生士養成専門学校と高等学校の有機的連携プログラム」を開発し、実証する。プログラムは以下の3つで構成し、高専6年間をシームレスにつないで展開する。また、プログラムの内容は、実証中のさまざまな気付きをフィードバックしながら、適宜更新していく。

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①高等学校における歯科保健教育プログラム
 高校1年生時に全生徒を対象とした授業を行う。これにより生徒の歯や口腔の健康づくりに寄与を目指す。同時に、歯科衛生士の役割と社会貢献を紹介し、歯科衛生士に関する関心を高める。

(目標) 高校生に必要な全身の健康と生活習慣との関係の理解
歯・口の健康づくりの推進
歯科衛生士の認知度の上昇

 授業はオンライン形式とし、主に事業で作成する教育用動画を用いて展開。授業内では歯科衛生士または歯科医師による質疑応答も行う。「人から感謝される仕事である」、「社会的意義・やりがいの大きい仕事である」、「国家資格を取得することで、全国で生涯にわたってできる仕事である」といった魅力を現役歯科衛生士の声で伝え、また、「歯科衛生士を目指した理由」を歯科衛生士養成校在校生の声で伝える。

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②-1高等学校におけるキャリア教育
 ①をきっかけとして2・3年生時に本プログラム選択を希望した生徒に対して実施する。

(目標) 明確なキャリアビジョンを持ち、目的意識をもって高等学校での課題や他の活動に取り組む生徒の増加
主体的な進路の選択と将来設計への寄与

 授業は、福岡講倫館高等学校では学校設定科目として申請する。授業内容は、「医療人に共通して要求されるコミュニケーションスキル」や「医療接遇」などのほか、「歯科衛生士養成教育の基礎となる歯・口腔の構造と機能」、「疾患と治療」、「歯科衛生学総論」など高校生の間に学習することが有効かつ可能な専門知識の先取り授業を行う。

 プログラム修了者には認定証を発行する。

②-2.専門学校における非認知能力育成プログラム
 専門学校各学年全員を対象に、「自己管理力」、「コミュニケーション力」、「協調性」といった歯科衛生士に求められる非認知能力を体系立てて教育・育成する。

(目標) 充実したキャリア教育により中退者を減らす
非認知能力を向上させ新卒就職者の1年以内の離職者を減らす

 在校生・卒業生への事前調査結果(図①、図②)をもとに、育成が必要な非認知能力を特定。「専門学校までにもっと学習したかったこと」、「現在の課題」、「実習生に求めること・その理由」等の調査結果を、従来行われてきたプログラムに組み込み、改訂する。また、この非認知能力を含むキャリア教育プログラムに関しては、高等学校も含めて開発・展開する。

【図①】

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【図②】

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 事業の推進にあたっては、高等学校、専門学校、行政、企業・業界団体の連携のみならず、全国歯科衛生士教育協議会(全国の歯科衛生士養成校175校の連絡機関)の応援も得て、汎用性・実効性・実用性があるプログラムを開発し、今後の全国展開につなげていく。

 最終的なゴールは地域で活躍する歯科衛生士を増やすことであり、KGIを「福岡県内の就業歯科衛生士不足数1,500人以下」に設定する。KPIについては、高等学校については、「実施高校数の増加」、「生徒の歯肉炎有病者率15%未満」のほか、「適切な歯科保健行動実施生徒の増加」、「歯科衛生士の認知度の上昇」、「キャリア意識の向上」などに設定。専門学校については、「定員充足率100%」、「中退者0人」、「新卒就職率100%」、「就職後1年以内の離職者0人」などとする。

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