イメージ

文部科学省 令和3年度 委託事業
「専修学校による地域産業中核的人材養成事業」における受託団体の取り組み事例集

沖縄・動物系分野における有機的高専連携プログラム開発・実証事業

学校法人KBC学園 沖縄ペットワールド専門学校

イメージ

高まる動物系分野への社会ニーズに対応

高専接続プログラムに取り組むことになった背景と課題

 近年、地方においても、自宅での生活に癒しを求め、家族の一員としてペットを飼う人が増えている。しかし、その飼い方に問題のあるケースも多い。たとえば、沖縄では、狂犬病の予防接種率が非常に低いといったようにである。専門家を一人でも多く育て、彼らが動物病院やペットショップ等で活躍することにより、ペットをしっかりコントロールして飼えるようにしていくことは、地方共通の課題である。

 このようにペットの健康管理やモラル・しつけの重要性が高まり、獣医療内容が高度化・多様化する中、新たに国家資格として「愛玩動物看護師」が誕生し、令和5年12月末までに第1回国家試験が実施されることとなっている。また、ペットショップなどでは「動物の愛護及び管理に関する法律」で事業所ごとに動物取扱責任者をおくことが定められており、民間資格である「愛玩動物飼養管理士」の有資格者に対する雇用ニーズが年々、増加している。動物系専門学校では高まる需要や求められる社会ニーズに対応すべく、さらなる教育内容を充実させているところである。

 とはいえ、現状、動物系分野の業界を目指す人の絶対数は少ない。動物好きの子どもは潜在的に非常に多いが、それが職業として捉えられていないからであろう。さらに、高校で学べる場が少ないこともネックになっている。農業高校では、産業動物(牛、豚、鶏)としての畜産科があり、そこから発展して愛玩動物と呼ばれる社会動物の学科となる流れがあるが、沖縄の場合、実際にペットを学科として扱う高校は中部農林高校だけに限られる。しかも、高卒で動物系分野の企業に就職することは現実的には厳しく、大学もしくは専門学校に進学して資格を取り、就職する人がほとんどである。そのため、高校生に動物系分野の職業に関する情報が伝わりにくく、高校段階での動機付けが難しくなっている。

 動物系分野に限らず、全体的な傾向として「高校生の学習意欲は中学校段階に比べて低下」しており、「高校生の学習意欲を喚起し、能力を最大限に伸長するためのものへと高校における教育活動を転換することが急務である」と指摘されている(文部科学省「新時代に対応した高等学校教育の在り方(令和2年7月17日 )」)。

 特に沖縄県の場合、高校進学率が97.3%で全国順位は低いほうから1位、高校中退率は2.2%で全国順位は高いほうから1位となっている。一方、専修学校進学に目を向けると、沖縄県の専修学校進学率は24.1%で全国順位は高いほうから2位である。これらのデータから、沖縄県の高校生の学びの意欲・目的意識を後押しするためには、高専連携が非常に重要であると考えられる。

イメージ

沖縄県の進学率や中退率の現状(2018年度文部科学省学校基本調査より)

 動物系分野におけるもう一つの問題は、就職後の定着率の低さである。当学園の動物系専門学校の卒業生も仕事へのやりがいを感じつつも、低賃金に対する不満や就業の不安定さから業界を離れ、動物業系分野とは異なる業種・職種へ転職する者がいる。せっかく資格を取り、採用されたにもかかわらずである。各人の職業意識を涵養すると同時に、いかに働く者の社会的地位を向上させていくのかが、企業・業界側の課題となっている。

課題を解決するためのプログラムと成果指標

・高校生、専門学校生の学習意欲の喚起
・動物系分野の高まるニーズに対応する人材育成の必要性
・様々な段階での曖昧な進路変更(高校・専門学校の中途退学や就職後の早期離職)

 こういった多様な課題を解決するために、動物系分野における有機的高専連携プログラムを開発する。開発プログラムは高校生・専門学校生はもちろん、高校と専門学校の前後に位置する中学生および専門学校卒業後の社会人も包括する。

 高校生・専門学校生に対しては、高校と専門学校の5年間で学ぶ「高・専一貫プログラム」を開発。共通目標と一貫したカリキュラムを構築し、動物系分野の高まる需要や社会ニーズに対応できる専門人材を育成する。

 中学生向けには「高校の魅力発信プログラム」を開発し、地域課題である高校進学率の向上、高校中退防止に繋げる。

 専門学校卒業後も学び続けられる体制づくりとしては、「動物業界定着プログラム」を開発。令和5年度に新設される国家資格「愛玩動物看護師」の卒業後の取得に向けた養成や「愛玩動物飼養管理士」などの資格保有者の地位向上を目指すプログラムにより、動物業界への定着率を向上させる。

 そして、「動物にかかわりながら、専門性を身につけ、人や社会への貢献を認識しつつ、収入が安定し、一生続けられる仕事として動物業界で活躍できる」という好循環を本プログラム通して実現していく。

イメージ

来年度に取り組む高・専一貫プログラムの概要

 具体的には、行政機関(沖縄県教育庁)、高等学校(農業系高校)、専門学校(動物系専門学校)、企業(動物病院、ペットショップ、動物園)の四者でコンソーシアムを作り、コーディネーターとなる専門学校を中心に、中学校も加えて相互連携し、事業を進めていく。

【行政機関】
地域課題・ニーズを踏まえ、カリキュラムへ提言
高等学校での単位認定の検討、方向性明示
県内中学校へ連携強化

【高等学校】
高等学校の課題やニーズを踏まえ、カリキュラムへ提言
カリキュラム作成
高等学校に進学する中学生への広報周知、募集活動
学習指導要領とのすり合わせ

【専門学校】
コーディネーター業務
カリキュラム作成、教材開発
プログラム受講の高校生への学費減免検討
高校生の実習受け入れ
高等学校と企業との仲介

【企業】
業界の課題やニーズを踏まえカリキュラムへ提言
高校生、専門学校生の実習受け入れ
職業人講話講師

 開発プログラムのKGIについては、愛玩動物飼養管理士の資格取得率を中心に据え、令和8年には 愛玩動物飼養管理士1級資格取得率80%以上を目指す(2018~2020年度の平均資格取得率75.8%)。そのほか、連携プログラム導入高校数を今年度の1校から3校へ、連携プログラムを受講した専門学校生の中退者数を0名に、専門学校生の当該分野への就職率95%以上、卒業生の離職率30%以下を目指す。同時に、全国の動物系専門学校への開発プログラム導入ノウハウの普及、地域社会への事業周知・認知度の向上、導入高校および連携企業のさらなる増加を図っていく。

イメージ

その他の事例を見る