イメージ

文部科学省 令和3年度 委託事業
「専修学校による地域産業中核的人材養成事業」における受託団体の取り組み事例集

沖縄・観光分野における有機的
高専連携プログラム開発・実証事業

学校法人KBC学園 専修学校インターナショナルリゾートカレッジ

イメージ

沖縄のリーディング産業"観光"をサステナブルにする
次世代人材の育成

高専接続プログラムに取り組むことになった背景と課題

 新型コロナウイルス感染症は、沖縄県経済のリーディング産業である観光産業に多大なダメージを与えている。2020年度の県内入域観光客数は前年度比72.7%減の258万3600人で、外国客は0人(前年度は249万400人)であった。

イメージ

 コロナ収束後は国内外からの観光客の回復が見込まれるが、沖縄県は、アフター・コロナ時代は量を重視する観光から質を重視する観光への転換により、良質で持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)を目指すべきとしている。1000万人を超える観光客を迎えていたコロナ以前は、観光が自然環境への影響や住民とのあつれき等、負の影響(オーバー・ツーリズム)をもたらしていたからである。県は今後の沖縄観光の基本方針として、
(1)観光リスクに対応する仕組みづくり
(2)持続可能な観光政策の推進
(3)持続可能な観光指標
(4)高次元のニーズに対応した質の高い観光の推進
(5)沖縄のソフトパワーを生かしたツーリズムの展開
(6)観光産業の多様化と高付加価値化
(7)バリアフリー化の促進
(8)観光管理の強化とレスポンシブル・ツーリズムの推進
(9)ターゲットマーケティングへのシフトチェンジ
を挙げている(沖縄県「ウィズ・コロナ、アフター・コロナ時代の新たな沖縄観光基本方針」2021年3月より)。

イメージ

アフター・コロナを念頭に置いた沖縄県の観光

 このように持続的に発展する沖縄観光を目指し、今後も観光産業が沖縄のリーディング産業として県経済をけん引していくためには、それを支える人材育成が何よりも重要である。そして、次世代人材の育成に際しては、「オーバー・ツーリズムからレスポンシブル・ツーリズム(観光客と地域住民が価値を共有する"責任ある観光")への転換」、「健康長寿という沖縄のソフトパワーを活用したウェルネス・ツーリズム、障害者対応をはじめとするユニバーサル・ツーリズム、観光リゾート資源を生かしたMICE(ビジネスイベント)などのツーリズムの開拓」といった新しい知識の教育が必要となる。

 一方で、沖縄県は、進学率や県民所得が低いという地域課題を抱えている。沖縄県の高校進学率は97.3%で全国順位は低いほうから1位、高校中退率は2.2%で全国順位は高いほうから1位、大学等進学率は39.6%で全国順位は低いほうから1位となっている(内閣府「沖縄の子供達を取り巻く現状」より)。また、県民所得も全国最下位である。

 このような中で、観光産業に就いた若者の離職率の高さも課題となっている。その理由としては、
・沖縄県には、観光に関する学科を設けるなど観光を学べる商業高校が多いが、将来の仕事をイメージして入学する生徒が少ない。
・高校でのキャリア形成教育が貧弱で、在学中も職業観の涵養がはかられない。そのため、目的意識が持てず、学習に対する動機付けが弱い。
・結果、高校から観光産業に就職する生徒、観光系の専門学校に進学する生徒が少ない。また、次のステップ(観光系への就職・進学)に進んだ場合でも、ミスマッチが起こる。
などがあげられる。

 以上のような観光産業に関わるさまざまな課題や地域課題を解決するためには、専修学校への進学希望者が多い沖縄においては(専修学校進学率は24.1%で全国順位は高いほうから2位)、高校と専門学校が連携して、高校から5年という年月をかけて教育していくことが不可欠である。本事業では、新しい時代の沖縄観光を支え、沖縄の観光を量から質へと転換し、良質で持続可能な観光を拡充できる次世代観光人材を育成する高専連携プログラムを開発する。そして、このプログラムにより育った人材が即戦力となり、沖縄のソフトパワーを生かした新しいツーリズムを開拓し、良質で持続可能な観光を発展させることを目指す。同時に、彼らが沖縄県のリーディング産業である観光産業をけん引していくことは、県民所得増加という地域課題解決にも寄与していくはずである。

課題を解決するためのプログラムと成果指標

 開発プログラムは高校生、専門学校生はもちろん、高校と専門学校の前後に位置する中学生及び社会人も包括する。中学生に対しては、中学と高校の橋渡しとして「高校の魅力発信プログラム」を開発。これにより中学生にとっても魅力的な高校となり、地域課題である高校進学率の向上、高校中退防止につなげていく。観光業界に就職した専門学校卒業生に対しては、社会人になった後も学び続けられる体制づくりとして「観光業界定着プログラム」を開発。離職を減らし、観光業界への定着率を向上させる。

 高校生と専門学校生に対しては、5年かけて学ぶ「高専一貫プログラム」を開発。共通目標と一貫したカリキュラムを構築し、県経済をけん引する沖縄の観光産業を支える専門人材を育成する。プログラムは、従来型の「5種(語学・留学、航空業、旅行業、ホテル業、ブライダル業)」のスキルのみではなく、「7種(質を追う観光、沖縄のソフトパワーを生かしたツーリズム、レスポンシブル・ツーリズム、サステナブル・ツーリズム、バリアフリー化、ターゲットマーケティング、高付加価値化)」を掛け合わせるものとする。たとえば、「ホテル業×サステナブル・ツーリズム」では、「持続可能性と贅沢さを同時に提供できるホテルとは?」といった問いを生徒・学生自らが見つけ、答えを探求するのである。このようにすることで、観光を量から質へ転換する方法を自ら問題提起し、解決法を見出し、実践できる人材を育成する。

イメージ イメージ

分野5種×目的7種で目指す高専一貫プログラムのイメージ

 また、新たに「観光ビジネス検定(仮称)」を開発し、プログラムの骨格とする。さらに、キャリア形成に向けての支援にも注力する。具体的には、観光業界の協力を得て、授業支援、メンタリング(社会人が進路や学習の相談に乗る)、職場見学・インターンシップなどを充実させ、生徒・学生の職業観や社会参加意識の向上を目指す。

 以上のプログラムを、行政機関(沖縄県教育庁)、高等学校(商業高校)、専門学校(観光系専門学校)、企業(航空、ホテル、ブライダル、旅行)の四者で作るコンソーシアムに中学校も加えて相互連携し、コーディネーターとなる専門学校を中心に進めていく。

 開発プログラムのKPI・KGIについては、プログラムが県全体にどれだけ普及・浸透したか、すなわち横展開が数値で示される導入高校数、受講高校生数を軸にする。さらに、高校生・専門学校生の観光に対する知識・意識がどれだけ向上したかを見ることによって、本事業における質の向上も測る。以上を踏まえて、連携プログラム導入高校数:6校、連携プログラム受講の専門学校の中退率:0%、専門学校生の当該分野への就職率:95%以上、卒業生の離職率:30%以下をKGIに設定する。

イメージ

その他の事例を見る