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文部科学省 令和3年度 委託事業
「専修学校による地域産業中核的人材養成事業」における受託団体の取り組み事例集

工業系分野における高専連携の
5年一貫教育プログラム開発・実証

学校法人小山学園

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「職業人」のキャリア形成を高専5年で段階的に図る

高専接続プログラムに取り組むことになった背景と課題

 今、さまざまな分野で現場技術者の人材不足が顕著になっている。たとえば、自動車整備の分野では、自動車整備士の平均年齢が上昇の一途をたどり、世代交代が行われず人材不足が加速している。日本の自動車の保有台数が約8000万台でほぼ横ばいなのに対して、自動車の使用年数は約10年と伸びており、長く使用する分、その間のメンテナンスの仕事量が増加しているにもかかわらずである。こうした整備士の需要に対して人材が不足している状況の背景には、少子化および若者の自動車離れや大学進学率の上昇などの要因がある。自動車整備士資格者を輩出する国土交通省指定の整備専門学校の入学者もここ15年で半減している。

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 同時に、人工知能やIoT等のテクノロジーの急速な発達により、実業高校および工業系専門学校において育成する「職業人」の必要要件も変化の中にある。自動車整備の分野で言えば、業界が求めるEVやハイブリッド、水素、自動運転といった先端分野の知識・技術と従来の国家資格が乖離しているため、資格合格させるための勉強では就職してから苦労することになる。さらなるテクノロジーの発達により、製品を安全・安定的に動かすための現場技術者ニーズは一層高まることが予想される中、専門学校には、時代にキャッチアップした知識と技術を備えた「未来の人材」を育成し、人材不足を解消することが求められている。

 一方で、専門学校の前段階にある工業高校についても、生徒数の減少、および中途退学率の高さが深刻な問題になっている。その理由としては、工業高校生の学びの目的意識(キャリア観)やモチベーションに課題があり、「工業高校・専門学校での学びが社会(就職)につながる」イメージが希薄化していることが考えられる。実際、高校までの教育課程において、キャリア形成に関する教育は圧倒的に不足している。結果、何を思って進学・就職しているのかが非常にあいまいになっており、納得感のある就職が難しくなっている。その弊害が顕著に表れているのが就職後3年以内の離職率だ。専門学校・大学卒では約3~4割、高校卒の場合は約6割にも上っている。転職しながらキャリアを積み重ねていく機会がある欧米とは異なり、日本は依然として、離職すると待遇を含めてキャリアが下がっていく社会である。こうした就職の段階でのミスマッチを防ぐためにも、高校生の時点から、生徒に具体的な社会のニーズや技術職の魅力を正しく伝え、「社会の中で活躍するイメージ」を具体的に持たせることが肝要となる。

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 以上のようなさまざまな課題を解決するためには、できるだけ教育課程の早い段階からキャリアを考える場面をつくり、段階的に進路に対する意識・職業意識の醸成をはかり、最終的に先端的な専門教育を提供することで就職につなげるという一本の道筋を構築する必要がある。本事業では、魅力ある高等学校教育、専門学校教育の充実を図ることを目的として、「高専一貫教育」のプログラム開発・実証を行う。

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課題を解決するためのプログラムと成果指標

 本事業では、工業系分野における高専計5年の一貫教育プログラムの開発・実証を行い、さまざまな分野で社会の変化に対応できる「職業人」のキャリア形成を図る。事業の推進にあたっては、以下①~④の特徴があげられる。

①6職業分野(自動車・情報(Web)・IT・建築・インテリア・環境)において先端技術者養成のプログラムのノウハウを提供。
②企業・行政の協力を得て「企業連携授業」を実施することにより、最先端でリアルな職業体験を取り入れ、具体的な活躍イメージの定着を目指す。
③連携各高校の事情に応じた、キャリア形成の視点を持ったカリキュラム開発(社会人としての基礎的素養の育成)。
④開発した教育プログラムの成果物であるカリキュラムやシラバス・コマシラバス、スキルマップ等はその作成プロセスを含めて対外発信し、他校への普及を図る。
高等学校、専門学校では以下のような目標を設定し、段階的に職業意識が醸成されるようなプログラムをつくる。

<高等学校>
 教育活動全体を通して教科横断的な取り組みを行い、「社会的・職業的自立に必要となる基礎的学力」、「専門知識や技術習得の基盤となる工業の基本的知識と技術力」、「社会人としてのマナー態度」、「グループワークを含めたコミュニケーション能力」を身につける。また、工業高校では、専門学校の協力により、情報科学や先端技術等に関する自由選択科目等の充実を図る。さらに、職業選択の入り口・職業意識の醸成となるよう、工業系専門各分野の基礎を学び、リアルな職業・社会体験ができる時間を設ける。

 高校1年生は「進路の意識付け」期として、産業界の業種や職種について学び、進路の意識付けを行う。高校2年生は「進路熟考」期と位置づけ、各業界の代表的企業との連携した企業研究を通じて進路の入り口を体験する。高校3年生は「進路確定」期とし、系統別に専門分野の基礎を学び、高等課程への進学準備をする。

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開発しているプログラムの一例 ~練馬工業高校×自動車~

<専門学校>
 職業実践専門課程と位置づけ、企業等との連携による最新の実務知識の育成を行い、「各分野で必要となる知識・技術・資格」、「未来を見据えた先端技術」、「知識スキルのアップデートのために学び続ける姿勢」を身につける。その際、各分野で必要となる専門知識・技術については、高専連携により高校段階で基盤ができているので、より高次の内容を学習することが可能になる。また、企業課題・社会課題を基軸にした学科横断型・探求型のPBL(課題解決型学習)を拡充する。

<高専接続>
 高校3年次の進路ガイダンスの実施、オープンキャンパスや個別相談の拡充、専門学校入学前教育プログラムの実施、新入生オリエンテーションでの動機付け、継続的な個別フォローの充実などを行う。

 事業推進にあたっては、高等学校、専門学校のみならず、行政、企業とも緊密に連携していく。行政機関は開発する高・専一貫教育プログラムの評価など、企業は高専一貫教育プログラム開発のバックアップなどの役割を担う。

 また、開発プログラムのKPIについては、①教育プログラムの有効性(企画推進委員会とヒアリング企業等からの委員による)評価、②中退率の低下、就職率の維持・向上、③成果報告書・活動動画による認知獲得、④高校・専門学校の教育力向上などから、多面的に捕らえていく予定である。

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検討中の事業成果(KPI)

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