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文部科学省 令和3年度 委託事業
「専修学校による地域産業中核的人材養成事業」における受託団体の取り組み事例集

地域活性化のための
農福連携人材育成事業

学校法人西野学園 札幌心療福祉専門学校

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社会福祉の資格×農業の知識
――障がい者も育成して農福連携に寄与

高専接続プログラムに取り組むことになった背景と課題

 日本の農業が抱えている大きな課題として、農業就業人口の減少、高齢化があげられる。北海道においても、農家経営者数および農家戸数は年々減少傾向にあり、1990年に21%だった65歳以上の比率が、2019年2月現在で43%まで上昇している。この"働き手不足"という課題を解消する方策として、障がい者や高齢者が農業に携われるよう支援する「農福連携事業」が広がりはじめている。

 農福連携については、障がい者側からの期待も大きい。日本における障がい者の総数は、約964.7万人であり、全体人口の7.6%に当たる(内訳は身体障がい者が約半数、精神障がい者は4割、知的障がい者は1割)(令和2年版 障害者白書)。障がい者の就職状況は少しずつ改善しているとはいえ、まだまだ雇用の受け皿が十分な状況とはいえない。そうした中、農福連携農家へのアンケート調査(日本基金が2018年に実施)では、回答者の約8割が「人材として貴重な戦力」と答えており、福祉事業所への委託を拡大したいと回答した農家が過半数を占めている。農業は障がい者の雇用の大きな受け皿になると期待されるのである。

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 このような農福連携の拡大にともない、農業の知識があり、指導もできる社会福祉士(国家資格、福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供できる)のニーズが高まっている。これに対し本校では、令和3年度入学者から、社会福祉主事任用資格を取得し社会福祉士の国家試験受験資格を得るのと並行して、農業に関わる知識や実習が可能な教育課程を編成している。これは全国的に見ても先進的な取り組みであるが、高専接続によってさらに多くの人材を育成したいと考えている。北海道の基幹産業である農業を活性化し、若者や高齢者、障がいのある人々が多く住むことで地域が元気になる取り組みを行い、地域でこの取り組みを支える人材を育成するために、地域の高校と専門学校が一貫したカリキュラムを構築することが、本事業の目指すところである。

 もう一つ、本事業の大きな目的には、高等支援学校の生徒や不登校経験・発達障害・精神疾患などを抱える専門学校の学生の学びをサポートし、就学から就職までのフォロー体制を構築することがあげられる。

 現在、高等支援学校の生徒は、上級学校で学びたい気持ちがあっても、受け入れる専門学校が少ない状況におかれている。彼らの真面目で根気強い特性や社会貢献に関わりたいという強い気持ちを生かせるような教育課程を用意している専門学校がないからである。一方、専門学校では、不登校経験・発達障害・精神疾患などを抱える入学者が増加傾向にあるが、専門学校3年間だけでのカリキュラム対応は彼らにとって負担が大きく、中途退学者や資格を取得できない学生を生み出してしまっている。高等支援学校・高校と専門学校の教育課程を連携させ、かつ編成を工夫することで実現する6年間を一貫するゆとりあるカリキュラムは、こういった問題を解決するはずである。本事業は、彼らが資格を取得し、やりがいのある仕事に就き、支援をされる側として今後の将来を生きるのではなく、支援をする側として社会参加をし、「生き生きと自立した生活」を目指す取り組みである。

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課題を解決するためのプログラムと成果指標

 農福連携による地域活性化をリードする人材=「農業の知識や技術を持つ福祉専門職」を育成し、同時に「6年間(高校等3年間、専門学校3年間)でのゆとりある教育」を実現するために、高等学校と専門学校の連携による先取り履修を取り入れた高専一貫カリキュラムの編成・構築を行う。そのプログラムの特徴は、以下の各点に集約できる。

・社会福祉士の専攻を持った専門学校で農業を一緒に学ぶことができるプログラム。
・高等支援学校で取得した単位を専門学校で単位認定することにより、余裕のあるカリキュラムを実現。
・さまざまな学校と高専一貫カリキュラムで連携することで、早い段階からソーシャルスキルトレーニングや社会人基礎力を育成。
①地域活性化に取り組む高校(農業実習を行う連携農園がある公立高校)との連携
②不登校・発達障がいに積極的に取り組んでいる高校との連携
③高等支援学校との連携
・高校等との連携授業の実施(「バリアフリー農園を作る」、「『農』に関する栽培から販売に至る過程の体験と作業のマッチング」など)

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 また、本事業のカリキュラム修了者を対象とした、事業の独自資格の創設を目指している。

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 事業にあたっては、高専民公でコンソーシアムをつくり、地域活性化を目指す教育課程と企画を実行していく。

【高等学校・高等支援学校】
専門学校と共同でカリキュラムの作成・調整・実施
連携授業参加の生徒募集
キャリア教育

【専門学校】
高校等と共同でカリキュラムの作成・調整・実施
高度な福祉専門職の育成

【行政(市町村や都道府県の学校教育・農業・福祉・総合企画担当課)】
管轄分野の指導・調整

【企業(農園、食品会社、福祉事業所)】
産業界のニーズを踏まえたカリキュラムへの提言
実習機会の提供

 なお、本プログラムは、既に連携をすることが決まっている高等支援学校のほかにも、道内の複数の支援学校から問い合わせを受けている。「特別支援学校から専門学校に行って、指導者になれるという道はなかなかないので、ぜひ協力校に入りたい」といった申し出があった。さらに、「学校個別ではなく北海道全体の支援学校で、専門学校に行きたい子どもたちに声をかけられないか」という提案まで受けている。こうした声に応えられるように、充実した高専一貫カリキュラムを開発・実践していきたいと思っている。

 開発プログラムのKPI、KGIについては、①「特別支援学校の卒業生等への就職支援」と②「農福連携に関するプロフェッショナルの育成」の二面から設定・評価する。

①KPI:高校等からの連携授業参加者数…2年目12名
KGI:連携授業参加者の就職者数…6年総計48名

 農福連携に関する新たな資格制度の構築・創設は、開発プログラムの普及、ひいては農福連携の発展を企図するもので、その広がり方をKPI、KGIとした。
②KPI:資格取得カリキュラム作成に本法人以外の2法人以上の団体から参加してもらう
KGI:本法人以外の3法人以上の団体からの認証を受けた独自資格の創設

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