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文部科学省 令和3年度 委託事業
「専修学校による地域産業中核的人材養成事業」における受託団体の取り組み事例集

知的障害特別支援学校高等部と
専門学校の有機的連携の開発と実証

学校法人仙台北学園 仙台リハビリテーション専門学校

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社会や人に役立つ自立した職業人となるために、
知的障害者の進路選択と職業教育を支援する

高専接続プログラムに取り組むことになった背景と課題

 知的障害特別支援学校に在籍する児童・生徒の人数が年々増え続けている。この10年間では9.7万人から13万人と約35%の増加で、視覚障害や肢体不自由など他の障害者がほぼ横ばいであるのとは対照的である(文部科学省「学校基本調査」)。この傾向は今後も続くと予測されており、各自治体等において、知的障害特別支援学校の教育環境の整備や教育体制・内容の一層の充実化が喫緊の課題となっている。その中で、知的障害特別支援学校高等部(以下、高等部)卒業後の進学率が極めて低いという現状がある。高等部卒業後の進路は全国平均でみると「社会福祉施設等入所・通所」が約6割と最も多く、これに次ぐのが「一般就職」の約3割となっている。これに対して「進学」は1割にも満たない。生徒の進学意欲は高く、保護者の約7割が「進学」を求めている(全国障害者問題研究会調査)など、進学に対する潜在的なニーズがあるにもかかわらず進学率が低いのは、進学先となる高等教育機関が非常に少ないことが大きな要因の一つである。知的障害者の進学先の整備は大きな社会的課題となっている。

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 一方、高等部では、職業学科・普通科のいずれにおいても、卒業後の経済的自立を見据えて専門教科によるキャリア教育・職業教育が実施されているものの、就職は容易ではなく、また就職後の職場定着は芳しいとはいえないのが実状である。しかし、高等部の多くは普通科で、職業学科であっても高等部1校単独で職業教育を実践することには指導スキルや時間などの面で難しさがある。就職後の職場定着に関しては、知的障害者の職場定着率(就職1年後)68.0%という調査結果があり、障害者を含む労働者全体の平均離職率14~17%と比べて高い水準にある(高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センター「障害別にみた職場定着率の推移と構成割合」)。離職の理由は様々ではあるが、大きな要因の一つとして職業理解の不足によるミスマッチがあげられる。知的障害者に対する効果的な職業教育の実践とともに、就職後に継続して働くことができる素地を培うことも学校教育の課題となっている。

 高等部と専門学校の連携は、こうした知的障害者の進学先の整備及び職業教育の充実化という課題を解決するための有効な方法になりうる。トータル5年間の一貫型職業教育プログラムは、高等部卒業後の選択肢の1つとして「専門学校への進学」を示すことになり、これまで少なかった知的障害者の専門学校への進学を促進できる。また、5年間の学びを通して、職業・職種の専門的な知識や実務的な技能、職業人としての基本的な態度・姿勢を身につけることで、職業や職場への適応力が高まり、早期に離職する者の減少にもつながるものと期待できる。これは専門学校への進学が難しい生徒にとってもメリットは大きく、一貫プログラムの中の3年間とはいえ充実した職業教育を受けることで、社会に出て職業人として働き続ける上での基盤となる能力を培える。

 本事業の取り組みの一環として、特別支援学校高等部を対象に、職業教育の実施状況や専門学校との連携についてアンケート調査を実施した。以下のグラフはその集計結果の一部で、「専門学校と連携した職業教育の実施状況」「専門学校と連携した職業教育への関心」について問うた結果である。連携の実績は非常に少ないが、連携に関心を寄せる特別支援学校は多い。

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課題を解決するためのプログラムと成果指標

 高等部と専門学校が連携した一貫型の職業教育プログラムは、これまでに類例がない。従来実施されてきたのは、高等部からの要請を受けた専門学校による講義や実技といった単発的な「出前授業」であった。これに対して、本事業が企画提案する、「知的障害特別支援学校高等部と専門学校の一貫型職業教育プログラム」は、高等部3年間と専門学校2年間の計5年間を通して一貫して実施する職業教育プログラムである。この国内初のプログラムでは、社会的・職業的な自立のための基盤形成から、「介護福祉」の専門性を身につける教育までを連続した形で具体化していく。

 介護福祉分野とするのは、①人材不足が慢性化している介護福祉の実務現場において近年知的障害者に対する雇用ニーズが高く、実際に介護福祉施設等への就職実績が増えていること、②これまで一部の高等部において介護福祉に係る基礎的な職業教育が実施され、一定の教育成果が生まれていること、③清掃などバックヤード業務のような定型的な作業から生活介助まで能力に応じて従事できるという"仕事の幅"があり、進路として適切であること、などの理由による。さらに、介護福祉分野の職業人となった障害者は、恩恵を受ける側ではなく、他者へ恩恵を授ける側に立つことになる。これも、本事業が介護福祉分野を選択した狙いである。

 ただし、介護福祉分野に進む生徒を前提に構築するプログラムではあるが、それ以外の職業を選ぶ生徒・専門学校に進学せず就職する生徒にとっても有益なものとなるよう、職業人としての基本的な意識・態度・姿勢といった職業教育の基礎知識を高等部全体で学べるカリキュラムにする。

 専門学校では、高等部3年間の学びの成果を土台に、専門性を高めると同時に、介護福祉士資格の取得を目標に取り組む。そして、5年間で学んだ専門性を活かせる福祉施設等への就職をめざす。さらに、学生への個別指導の充実化を目的にデジタル教材を配信する学習支援環境と、個々の学生の学習状況や生活状況等を記録・管理し指導で活用できる教育支援環境を整備する。

 各学年で実施するプログラムの概要は以下の通りである。

 なお当初、事業計画段階では進学分野として福祉のみを想定していたが今年度事業の成果を踏まえて、生徒が自己の可能性を広げることへの支援を目的に、他の職業分野の学びをカリキュラムに取り入れていくことも検討していく予定である。

<高等部1年生> 授業時間:30時間
①職業キャリア基礎学習
②社会人基礎学習(「ビジネスマナー」や「メンタルヘルス」等)

<高等部2年生> 授業時間:30時間
①職業キャリア&社会人基礎学習の振り返り
②職業基礎学習(3年次の進路選択に向けて、介護福祉の仕事内容や魅力などを学習)

<高等部3年生> 授業時間(選択科目):30時間
①介護福祉基礎(施設見学など学外演習も取り入れ、専門学校につながる専門基礎を学習)

<専門学校1年生> 授業時間:150時間
①専門知識・技能の補強学習
②社会人基礎力の養成(コミュニケーションや自己管理、金銭管理、生活管理など)
③継続学習への支援

<専門学校2年生> 授業時間:150時間以上
①専門知識・技能の補強学習
②資格取得学習(介護福祉士資格の取得を目標に、試験対策を実施)
③継続学習への支援
④就職支援学習

 本事業を推進する組織として、産官学の連携によるコンソーシアムを編成。さらにプログラムの実効性を高めるために、①高等部と専門学校の教職員間の連携、②教職員と生徒の連携、③特別支援学校間の連携という"3つの連携"を柱として進めていく。

 プログラムのKGIは、「就職後の職場定着率」の上昇とする。全国(知的障害者の就職1年後の定着率は68%)・宮城県の平均を上回る水準を目標値として検討する。KPIについては、「専門学校への進学者の人数」(現状はほぼ0名、進学者を3年後1名以上、4年後5名以上を目標値として検討)、「生徒の職業意識」(アンケート等により職業意識を定点観測により経年変化を確認。意識向上の生徒の割合を1年後10%、2年後45%、3年度85%を目標値として検討)、「教職員の職業教育の意識」(アンケートまたはヒアリング等により職業教育に対する意識を定点観測により経年変化を確認。意識向上の教職員の割合を1年後10%、2年後45%、3年度85%を目標値として検討)とする。

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