ミッドナイト・インタビュー

第1夜「オンとオフ、分けなくてもいい」freee佐々木氏

freee社長の佐々木大輔氏が語る仕事術、コミュニケーション術、マネジメント術

文:四方 乱波 / 写真:的野 弘路 08.07.2014

話題の企業の社長に酒場で迫る、ミッドナイト・インタビューの第1回目。今夜は「クラウド会計ソフト freee(フリー)」の創業者兼CEO(最高経営責任者)である佐々木大輔氏が登場します。freeeは個人事業主の青色申告や確定申告、法人の決算書作成ができるサービスです。スタートは2013年3月。無料で始められる手軽さが後押しし、この7月6日には利用者数が10万人を突破しました。個人事業主や中小企業にとって、会計処理は複雑かつ煩雑で悩みの種。「会計処理を最新のテクノロジーで簡単に済ませられるようになれば、日本の事業主は時間をもっと創造的な仕事に使えるようになる」。佐々木氏はこのような思いを抱いてグーグル日本法人を飛び出し起業しました。では、今夜は美味しいお酒と共に、仕事の話を。

――今日はこのお店を佐々木さんに選んでいただいたんですが、「古宮」はよく来られていたお店なんですか?

freeeの佐々木大輔社長
佐々木社長お気に入りのお店、東京都港区東麻布の「古宮」

佐々木:そうなんです。最近、麻布十番から五反田に引っ越ししたんですが、その前はこのお店でさんざん貸し切りさせてもらったお店です。この隠れメニューの叉焼(チャーシュー)、よく食べたなぁ。事前に漬けておくため、3日以上前にお願いしないとだめなんですよ。

――いやぁ、これはうまい。佐々木さん、freee(旧社名はCFO)を起業してからちょうど2年が経ちますね。ずっと走りっぱなし?

佐々木:振り返れば、休み無く走ってきた感じですね。

――佐々木さん、独身でいらっしゃる。出会いを探して合コンに行く暇もない?

佐々木:いや、そう言われたら無くはない(笑)。いや、それでも仕事がいつも脳裏によぎっちゃうのは確かです。この前も、飲み会でお会いした女性が税理士をしていることがわかった瞬間に、「freeeをぜひ使ってください!」って売り込んでいましたからね、僕。

オンの時間をオフっぽくする発想で

――仕事とプライベートってどうやって分けているんですか?

佐々木:オンとオフって、私分けないんです。なるべく境界がないほうがいいのかなと。オンとオフがないとバランスが取れないってよく言われますけど、今の時代、オフの時間って作りようがなくないですか?

電車でも飛行機の中でもインターネット接続ができちゃう時代です。どこでも仕事ができてしまいます。こうなると、むしろオンの時間をオフっぽくすることが発想として重要なのではないかなと。

――オンの時間をオフっぽく。難しいですね。

佐々木:ちょうど、今日の昼間、freeeの使い勝手を改善するためのユーザーテストをしていたんです。利用者が実際に使っているところを後ろからビデオで撮影し、離れた別の場所で社員が集まって、今後の開発に生かそうという試みです。

通常であれば大事なテストですから、会議室に映すでしょう? うちの場合はオフィスの一角にある居間みたいにくつろげる場所があって、そこのテレビに映し出して社員がわいわい集まって見るんです。ソファに座ったり、床に寝そべったりして。

何も知らない人がその光景を見かけたら、大学生が集まってファミコンしているようにしか見えないでしょうね(笑)。

「労使」ではなく「みんなが使用者」

――最近だと、オンとオフをはっきり分ける風潮が広がっていませんか?仕事とプライベートはきっちり分ける人が増えている気がしますよね。

佐々木:仕事とプライベートはきっちり分けます!という人はそもそも採用しないですね。僕たちはスタートアップ企業ですから、そもそも会社対従業員という考え方がありません。

昔の人は「労使」を対義語みたいに扱ってきましたよね。労働者と使用者と分けるというよりも、みんなが使用者というイメージです。社員は現在、40人ほどですが、今のところそういう人材はいませんね。

――スタートアップ企業は採用がすべてとよく聞くんですが、採用時に重視していることってありますか?

佐々木:重要な軸はいくつかありますが、最も重視しているのはビジョンに共感できるかどうかです。

僕たちのビジョンの1つは「スモールビジネスが創造的な活動にフォーカスできるように」。このビジョンに共感してもらえるかどうかがまず大事です。あとは、挑戦する姿勢でしょうか。これまでやったことのないことを実現したい、新しいスキルを身につけたいという人を採用しています。

逆に「僕はこれができる」「このスキルを買いませんか?」という人は採用しない。外注先としてつきあえばいいだけですから。

24時間一緒に過ごせない人は採らない

佐々木:あとはですね、僕が前にいたグーグルでもやっていたんですが、「エアポートテスト」です。

――エアポートテスト?

佐々木:エアポートテストは、飛行機も飛ばない、ホテルも取れない状況下で空港のラウンジに閉じ込められたとき、あなたは24時間その人と一緒にいられますか?と自問自答するというものです。気持ちよく過ごせるかどうかが重要なんです。

うわっ、この人と24時間2人きりは辛いなって人、いませんか?

――確かにいるかも。けど、いまどきの学生もその辺、うまく取り繕いそう。限られた時間でどうやって判断するんですか?

佐々木:感覚的なものですよね。すごい優秀だけど24時間は無理という人がいます。どれだけ素晴らしいスキルを持っていても、仮に天才でも、24時間一緒に過ごせない人は絶対採らないですね。

能力というのも、潜在的な頭の良さという意味だったらわかるんですが、経験という観点での能力は全く重要視しない。経験は誰でも積めるものですから。

逆に経験が邪魔する場合もあるんです。例えば、僕たちのマーケティングの舞台はインターネットです。古くからマーケティングの経験を積んできた人には一度全部リセットしてもらわなければならないんです。これが実はかなり時間がかかってしまうんですよね。

ともすれば、未経験の人以下になってしまうことだってあります。何十年も積んできた経験が発想を縛っちゃうんですね。

家飲み酒とも日記