今月のビッグイシュー

【NZ】ロード・オブ・ザ・リングの自然とワインを愉しむ

Walk on the Wild Side:ニュージーランド編 前編

文/写真:谷口 潤 11.06.2014

映画「ロード・オブ・ザ・リング」は、ニュージーランドの大自然に関わりの深い作品である。ニュージーランドを旅するなら、風を直接感じられるオートバイがいい。大自然の旅の見どころを紹介する。

映画「ロード・オブ・ザ・リング」は、ニュージーランドの大自然に関わりの深い、素晴らしい作品である。興行成績も世界最大級であったこの映画、ほとんどのシーンがニュージーランド南島で撮影された。

ニュージーランドをツーリングしたいと思うようになったのは、この映画で映し出された圧倒的な大自然の景観に魅せられたことが大きい。既に公開から10年ほどが経つが、未だに作品の魅力は色あせていない。近年は同じJ・R・R・トールキンの原作に基づく映画「ホビット」シリーズも公開され、再び脚光を浴びている。

とりわけロード・オブ・ザ・リングの世界を味わいたいのであれば、南島は最適だ。シリーズ2作目にあたる「二つの塔」の重要な舞台となったローハンの国を含めた大自然の雰囲気を存分に味わえる。

映画の中の架空の世界「中つ国」は、有史以前のヨーロッパ地方という設定になっている。アルプスを思わせる切り立った山々と、ドイツのシュバルツバルトのような深い森の両方を有するニュージーランド南島は、ロケ地には最適であったのだろう。

この地を巡る際に参考にした一冊の本が『Lord of the Rings Location Guidebook』だ。ニュージーランド各地のロケ地の場所と解説が丁寧に記されている。

大都市が少なく広大な自然が拡がる国なので、ロケ地を紹介するにも際立つ目印などはない。だからこの本には単に座標を示しているだけのページも多い。しかし、そこにたどり着くと、まさに映画のワンシーンに身を置いたような体験ができる。

一方、ページを繰っていくと映画を監督したピーター・ジャクソンが住む北島にはスタジオやセットによる撮影現場が多いことや、南島には島全域にロケ地が拡がっていることなどがわかる。実に手堅くまとめられているのである。

『Lord of the Rings Location Guidebook』の表紙イメージ

今回は現地でオートバイをレンタルすることにした。屋外のロケ地までは奥まったダート道や私有地を通り抜けることがままあるため、四輪で巡るか、現地のツアーに頼るしかない場所も多々ある。しかし、それでも大自然の風を感じながら周りたかったのだ。

ニュージーランドと日本の時差は4時間。この程度であれば時差ボケもなく体にはかなり楽だ。時間はニュージーランドが先行しているので日本との連絡もなにかと余裕をもって行える。飛行時間は約11時間で、夜便であれば昼前に現地に到着し、初日から時間を有効に使える。直行便の予約が取れないとバンコクやシンガポール経由となり、所要時間が大幅に増えるので要注意だ。

オートバイでの旅には入念な準備が必要

今回は18時30分に成田を発ち、翌日10時頃にクライストチャーチ国際空港に到着した。空港からそのままレンタルバイク店に向かう。車両をピックアップして午後一番から乗り出せる好都合な展開である。

選択したレンタルバイク店は「Te Waipounamu Motorcycle Tours」。インターネットで探し出し、メールをするとオーナーのマットさんが丁寧に対応してくれた。メールにてバイクに付属している装備を確認したところ、彼はバイクに取り付けられたパニアケース(サイドの収納ボックス)、トップケース(後部のボックス)、フロントスクリーン(風防)などの写真を事前に送ってくれ、大助かりであった。

バイクで持ち運ぶのは、私と妻の二人分の荷物。数日分なので、それなりの大荷物だ。これに雨具や修理キットなどバイク旅行で必須の荷物が加わる。なのでバイクの積載量の把握は四輪のクルマ以上に重要であり、事前に各ケースの容量がわかるととても助かるのである。今回はサイドのパニアケースがかなり大きかったので、予定していた荷物はすべて搭載できた。

バイクレンタル店オーナーのマットさんとバイク後部のケース群

レンタルしたバイクはHonda VT1100。さすがホンダ車で、まったく不安を感じさせない安定した挙動である。そして何よりもアメリカンタイプであるのがいい。のんびりと長距離ツーリングをする際には、このアメリカンタイプが最適だ。車高が低いため、多少の悪路を走っても、また少々風や雨が強くなってもしのぎやすいからである。そのうえ前屈みにならなくて済むので肩への負担も少ない。

レンタル料金は一日当たり150NZドルであった。これに対してBMWやハーレーだと一日当たり250ドル以上になる。日本車はどこの国でもレンタル料金が一番安い(笑)。ちなみに米国内にかぎってはハーレーのレンタル料は格安であり、最高級車でも一日当たり120米ドルくらいで乗ることができる。

道中にて。後部座席に妻を乗せて走る

ニュージーランドの都市はどこも日本に比べれば小さいため、街を出るとすぐに大自然の真っ直中に放り出される。そのうえ人口密度が低いので他の自動車とすれ違うこともほとんどなく、とりわけ自然を身近に感じることができる。

このツーリングで絶景の街道・ミルフォードロードを走ってみた。ナショナルジオグラフィック誌が推薦しており、旅行の計画時から一番楽しみにしていた道である。内陸からミルフォードサウンドというフィヨルドの名所までを通っている。ここは降雨地帯であるにもかかわらず、私が走った時は運良く雨は一滴も降らず、素晴らしい天気だった。

ただ、往復で220kmにも及ぶこの道にはガソリンスタンドがない。ミルフォードロードに入る前日、バイクを満タンにしたうえで走行距離を測ってみたところ、190kmが限界であった。そこで別途購入したポリタンクにガソリンを詰めていくことにした。バイクにガソリンを積むのはいささか危険なのでやりたくはなかったが、山中でのガス欠は避けたいのでやむをえない。

ミルフォードロードで見られる絶景

しかし、そんな苦労をしてでもバイクで走る価値は十分にあった。ミルフォードロードは絶景が続く。映画ロード・オブ・ザ・リングの中でアラゴルンやレゴラスなどの登場人物が駆け巡っていた場所とそっくりな景色を、そこかしこに見ることができる。平原にゆったり吹く風を感じながら映画のワンシーンのような場所を走ると、バイクで来てよかったとしみじみ感じる。

入江に到着してからのミルフォードサウンドのフィヨルドは見事だ。非常に複雑に入り組んでいるこの入り江は、その地形だけで訪れる者を圧倒する迫力を持っている。

ミルフォードサウンドのワンシーン
ピルゼンアレイ