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お天気キャスターと振り返る2014年、一緒に占う2015年

「年に1度か2度かといった大きな事象が、今年は5回も起きました」

文:高下義弘 / 写真:的野弘路 12.25.2014

活躍中の気象予報士・お天気キャスターたちが一挙に集まるトークイベント。森田正光さんたちに、私たちが天気にどう向き合えばいいかを聞きました。

「リスクのことをもっとしっかり伝えたい」

【木原実さん(お天気キャスター、俳優、声優、防災士)】

僕が気象予報士だけでなく防災士の資格を持っていることもあるんだけど、2014年のお天気関連の重要キーワードは「防災」に尽きると思うんです。

これまでは天気予報ってお洗濯できるかどうかとか、傘を持っていくかどうかとか、そういう日常的な生活情報という位置づけだった。でも2014年からは、特別警報が5回も出るような時代になり、明らかに変わったんです。中長期の天気を確実に予測するのは難しいけれども、2015年も油断はしないほうがいいですよね。

僕、以前家族でキャンプに行こうとした時に、こんなことがありました。途中でかなり強い雨が降ってきて、クルマの中で待機していた。すると子どもが「怖い」と言いましてね。それでキャンプを設営するのは止めて、街に戻って、ファミレスでご飯を食べて帰ったんです。

あのときキャンプに行っていたら、危険な目に遭っていたかもしれない。逆に、全然大丈夫だったかもしれない。でも、僕はその時、キャンプに行かない判断をして良かったと思っています。

そのような判断ができるかどうかは、気候変化によるリスクを知っているかどうかだと思うんです。実際に雨や風で危険な目に遭った人って、日本の人口に対してそれほどいないかもしれない。けれども、気象現象の変化が激しい今、もっと多くの人にリスクの面を知ってほしい。

そういう判断にかかわる天気の情報をどうやって伝えるかというのは、僕ら気象予報士やお天気キャスターの課題です。最近は、今までのテレビなどで用いてきた気象情報の伝達方法がうまくいっていないのかな、と感じています。これだけ連続して特別警報が出されるような状態が続くと、例えばどんなに「すごい雨ですよ」と言っても、それを「自分や家族の安全確保に関わることだ」と認識する気持ちが薄まってしまう。

毒蝮三太夫さんって僕の大学の先輩なんですけれども、あの人は毒舌ですよね。でも実はすごく温かい目で人を見ていて、他人を傷つけるような言い方は絶対にしない。だからみんな安心して笑えるし、心に残る。

報道においては情報を均一に伝える必要もあるからだけど、毒蝮三太夫さんの話のような、心に残るような要素が抜けてしまうし、そもそもそういう考え方がない。

でもお天気の情報って先ほども言ったように身の安全に関わる。「雨が100ミリ降りますから警戒してください」とただ伝えるのがいいのだろうか。「あぶないんだよ、避難して」というニュアンスも一緒に加えて、聞いている人の心に訴えかけることも必要なんじゃないかと思っています。

お天気や災害関連の情報を受け取るときは、自分が住んでいる地域の環境がヒントになりますよ。近所に木造家屋が多いのか、川のそばなのか、といったように、自分と家族が住んでいる土地の特性によって、注視すべき情報の種類や判断基準は違ってきますから。土地の特性が分かっていれば、安全確保がしやすくなります。(談)

「本当に人ごとではないんです」

【半井小絵さん(元『NHKニュース7』の天気情報担当キャスター、現在はNPO法人火山防災推進機構の客員研究員などを務める)】

2014年のお天気を振り返ると、「災害は人ごとではない」という一言に尽きます。

私はいま気象だけでなく、防災全般を対象領域にして活動しているのでその視点からのコメントになりますが、2015年はもっと一般の人に、気象や防災について関心を持っていただける活動や、知識を深めていただけるような活動をしていこうと思っています。災害に巻き込まれてしまう人をとにかく減らしたいので。

私は講演などでよく「避難勧告」と「避難指示」の違いや、どちらがより緊急性が高いかといったことを、来場者の皆さんに質問します。すると、感触としては大体会場の半数の方が、「避難勧告の方が緊急性が高い」とお答えになるんです。

実際には避難指示の方が強制力が強く、身の安全に直接関わる重要な情報です。言葉のニュアンスとして勧告のほうが強いと感じられる人が多いようですが。このような言葉の定義や情報の中身を理解しておかないと、命を確実に守ることは難しいのではないでしょうか。

気象や災害に関する知識が深まれば、日々メディアを通じて発信されるお天気や防災に関する情報がもっと役に立ってきます。ある大学の先生が、「自分の生活圏の特性を知るのは『生活の作法』だ」とおっしゃっていました。

その機会をつくるのはなかなか難しいかもしれませんが、生活している地域に潜むリスクは事前に知っておいたほうがよいでしょう。自治体が作成しているハザードマップ(本誌注:国土交通省のハザードマップポータルサイト)や、過去の災害の記録などは、比較的身近な情報ですので参照しやすいと思います。

こうした情報を調べておくと、緊急事態が発生した場合にも素早く行動に移せるようになります。日々の生活を送る際の安心感がぐっと高まるはずです。(談)

高下 義弘(たかした・よしひろ)
フリーランス編集者/ライター
1998年に日経BP社に入社。日経コンピュータ、ITproの編集記者を経て2009年に独立。フリーランスとしての活動に加え、引き続きITpro、日経BP「課長塾」、日経BPビジョナリー経営研究所の編集スタッフおよびライターとして取材・記事執筆を担当。人と組織の創造力を高めるテクノロジーに関心を寄せる。
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