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自動車生産の知識をもとに「クレープの生地づくりロボット」開発、人は創意工夫のある仕事を

文・写真(特記なきもの)/カンパネラ編集部 01.26.2018

クレープの生地を自分で焼いて楽しめる「クレープロボットQ」(写真:モリロボ提供)

ITや高度な生産技術の考え方を応用して、料理プロセスをスマート化する試みが少しずつ増えている。調理が難しいクレープの生地づくりをロボット化しようと取り組んでいるモリロボット(静岡県浜松市)の森啓史さんが開発した「クレープロボット Q」もその一つだ。

食に関心が高まり、食や料理の分野におけるイノベーションが注目されている。ITや高度な生産技術の考え方を応用して、料理プロセスをスマート化する試みが少しずつ増えている。

調理が難しいクレープの生地づくりをロボット化しよう取り組んでいるモリロボ(静岡県浜松市)の代表取締役・森啓史(もり・ひろふみ)さんが開発した「クレープロボット Q」もその一つ。開発のきっかけは学生時代に経験したクレープ屋のアルバイトだった。

「シンプルな生地づくりを自動化できないか」

「アルバイトの人が1カ月ほど練習して100枚から200枚の生地を焼けば、クレーブの生地づくりは大体一人前になれると言われています。でも、その間もアルバイト代を支払わなければいけませんし、一人前になったと思ったらすぐ辞めてしまうこともあります」

そう説明し、森さんは続ける。「しかも、生地づくりはルーチンワークでおもしろ味が少ない。クレープは300円から800円などと値段に幅がありますが、その価値を決めるのはクリームやフルーツの盛り付けなんです。お客さんの好みを聞きながら今日のおすすめを話したりする盛り付けは価値のある仕事です。それならルーチンワークのシンプルな生地づくりを自動化できないかと考えたんです」

「クレープロボットQ」を開発した森啓史さん

実は森さんは機械技術系の大学院を卒業後、自動車メーカーに入社し、ロボットや溶接、金型を担当。生産ラインに張り付いて省人化を追求する仕事に携わったこともある。どの作業を何秒縮めればトータルでどれだけ縮められるか、それにより生産性はどれだけ高められるかといった、いわゆる「乾いた雑巾をさらに絞る」という省人化の限界に挑戦する仕事だ。

自動車生産技術の知識を得た森さんは起業を決断。クレープ屋でアルバイトした時代に頭の中をよぎった「クレープの生地焼きロボットがあれば便利」という思いを実現するため開発に取り組んだ。

熱変換効率の良いIH方式を採用

焼く生地の最大径は40センチほど。クレープ屋の焼き器は電熱線によるものだが、森さんは熱変換効率が良いIH(電磁)方式を採用した。熱変換効率は30%から50%ほどにアップするのだという。

クレープロボットQはこんな仕組みだ。メインタンクに詰めた生地の液が圧力一定で落ちるようにサブタンクを設け、2カ所の穴から液を垂らし、アルミ棒に特殊コーティングしたローラーで均一に広げるように工夫した。焼き上がると作業台が移動し、その端を使って生地をペロリとすくい上げて載せる。最後に手作業で生地に盛り付けをすれば完成だ。

(図:モリロボ提供)

クレープロボットを試作してみてわかったことも多かった。クレープロボットでは40センチの生地1枚を焼くのに45秒かかる。ところがプロの人間が焼くと40秒。クレープ屋では1日に1000枚も焼くため、5秒の差は大きい。しかもクレープ屋では、人の手で焼くことにこだわりが強い。

「料理をつくる人は創意工夫を高めることが大切」

「クレープロボットQは、クレープ屋さんにはまったく相手にされなかったですね。でもホテルやレストラン関係の方が関心をもってくださいました。バイキングを提供するスペースにおけば、お客さまが自分で焼いて楽しめます。しかも家族連れであれば、お子さんがとても喜んでくださるというのです」

森さんが考えているのは、プロ向けではなく、初めての人でも使えるクレープロボットだ。

「私が自動車メーカーで学んだことは、すべてをロボット化しようと思うな、価値ある仕事は人に任せろ、ということ。料理も同じだと思います。ルーチンワークはロボットなどを用いてスマート化し、料理をつくる人は創意工夫を高めることが大切だと考えています」と森さんは語る。

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