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若手フレンチシェフが「海のフードロス」の解決に挑戦

規格外のホタテやカキを使った高級ソーセージが第1弾

文/特記なき写真:カンパネラ編集部 03.19.2018

農業や漁業の現場では、味や栄養は同じにも関わらず、大きさや見た目の問題で"規格外"とされ、廃棄されてしまう「フードロス」は意外に多い。東京・白金台のフレンチレストラン「TIRPSE(ティルプス)」のシェフ・田村浩二さんは、プロのマーケッター、味と香りを科学的に分析する専門家と組み、「海のフードロス」を減らす取り組み「ETHICAL SEAFOOD CHALLENGE(エシカルシーフードチャレンジ)」をスタートさせた。価値ある日本の食材を発掘し、商品開発を通して市場へとつなげていこうという彼らの熱意ある活動は、食の世界に新しい風を巻き起こそうとしている。

東京・新宿にある伊勢丹新宿店の地下食料品売り場は、昼下がりともなると全国の美味しいものを買い求める客でごった返す。その一角、鮮魚や精肉、野菜・フルーツが並ぶフレッシュマーケットの売り場に、3月7~20日の2週間限定で出品されている商品がある。白金台のフレンチレストラン「TIRPSE」のシェフ・田村浩二さんが監修した高級フィッシュソーセージ「シーフードフランク」だ。

2018年3月7日〜20日の2週間限定で、伊勢丹新宿店の地下食料品売り場に出品されている「シーフードフランク」。宮城県三陸地方で獲れた"規格外"のホタテやカキを主原料にして作られている

じつはこのソーセージ、宮城県三陸地方の若手漁師たちが収穫した魚介類の中で、規格外として本来は廃棄されるものを原材料に使っている。味や栄養は同じなのに、大きさや見た目の問題で規格外とされ、廃棄されてしまう「フードロス」。今回出品された「シーフードフランク」は、このフードロス問題の解決策のひとつとして、フレンチシェフの田村さんたちが取り組んでいる新プロジェクト「ETHICAL SEAFOOD CHALLENGE(エシカルシーフードチャレンジ)」の第1弾だ。

危機に瀕している「食の生産現場」を守りたい

田村さんがシェフを務める「TIRPSE」は、2017年に、英国で150年以上の歴史を持つ出版社「William Reed Business Media」が毎年発表している「The World's 50 Best Restaurants」のディスカバリーシリーズに選出。また田村さん個人としても、フランスのレストランガイド「ゴ・エ・ミヨ 」の日本版である「ゴ・エ・ミヨ ジャポン」の2018年度・期待の若手シェフ賞に選ばれるなど、今注目される新進気鋭の料理人だ。

「私は、フランス南部でイタリアとの国境が近いマントンという町の「Mirazur(ミラズール)」と、パリの「Restaurant ES(レストラン エス)」で1年間修業しました。そのときに感じたことは、日本の食材の作り方や扱い方が優れていること。その一方で、自分自身、日本の食文化をあまりよく知らないということに気づきました。「Mirazur 」の同僚に、『醤油や味噌はどうやって作るんだ』と聞かれて、ちゃんと答えられなかったのです」(田村さん)

帰国した田村さんは、全国の農産物の生産者を訪ね歩くようになった。そうするうちに日本には優れた食材としての農産物がたくさんあることを知る。だが、そうした生産現場の多くが「次の担い手がいない」という共通した問題に直面していることも知った。

「いいものを作っているのに、それがなかなか収益に結びつかないことに構造的な問題があると思いました。収益を生む仕組みさえ作ることができたら、担い手も増えていくはず。このままでは、優れた食材がなくなり、私たち料理人の仕事も成り立たなくなります。だから料理人である私たちが生産現場を守らなくてはならない。生産者の現状を世の中に伝えていかなくてはと思いました」と、田村さんは話す。

「私たち料理人が食の生産者を守っていかなくてはいけないと考えています」(「TIRPSE(ティルプス)」のシェフ 田村浩二さん)
家飲み酒とも日記