新しい飲み会を提案、「ごちそう会」がすすめる「おいしい料理とドリンク2杯」

4月は新人歓迎会の季節。新社会人や新しく部署に加わった人を取り囲んで歓迎会や宴会があちこちで行われています。ところで、みなさん、宴会はどんなスタイルで開きますか? 料理には満足していますか? 東大発サークル「ごちそう会」は、「もっとおいしい料理を食べたい、飲みたい」という思いを大切にしながら、新しい飲み会のあり方を提案しています。どんな経緯でそのアイデアが生まれ、どんなメリットがあるのでしょうか。取材に行ってきました。
新年度を迎えた今、あちこちで新人歓迎会が花盛り。幹事さん、みなさん、どんな飲み会を楽しんでいますか?
「飲み放題」に疑問を感じ、「せっかく集まるのならもっと会話を楽しみ、料理とお酒をおいしく味わいたい」という大学生の思いから生まれた集まり「ごちそう会」。創設者の一人で現在は社会人の東成樹(ひがし・なるき)さんは東大のサークル歓迎会のことが忘れられない。
料理とのマッチングを考え、おいしいお酒も紹介
「緊張して参加した会は飲み放題でした。料理は少なく、お刺身が少しあっただけ。それなのに会費3000円は高くてショックでした。高校時代の金銭感覚では600円のラーメンも高いなと思っていたくらいですから」
大学生になったばかりで3000円は経済的に負担だった。しかも、歓迎会を楽しんでいたのはビールを片手にはしゃぐ上級生だけ。「心もお腹も楽しくないというのが正直なところ。せっかくお金を払うんだったらおいしいものを食べたかった」と東さんは当時を振り返る。

その後、英会話サークルのESSで幹事を務め、様々なコミニュニティーづくりにも積極的に参加。いろんな仲間に声をかけて「食事をおいしく味わいながら、お酒を飲めたらいいな」と考え、それを実現するための構想を固めていった。そして、様々な人たちの力を生かして「ごちそう会」のホームページを立ち上げたのが2012年12月のことだ。
現在7人いるメンバーたちは飲食店に行って「料理をメインにお酒は2杯」の「ごち会コース」をつくってもらえないかと交渉する。メニューが完成したら「ごちそう会」のホームページで紹介する。学生はもちろん社会人でも、「ごち会コースをお願いします」とお店に予約すればコースが楽しめる。ホームページには現在15店舗が「ごち会コースの楽しめるお店」として紹介されている。コースの値段は3000円前後、社会人はプラスアルファの料金になっているレストランもある。
「ごちそう会」代表の野並新(のなみ・あらた)さん(東大大学院2年)は、「おいしいお酒を紹介することも大切にしています。ごち会コースのメニューには料理とお酒のマッチングを☆印で表示しています。お店のメニューにある代表的なドリンクはすべて飲んでいるんですが、それが大変なんですよ」と話す。日本酒と焼酎が好きな野並さんは懐事情がやや心配のようだ。


自分たちの「足と舌で稼いで」調べ、お店と交渉する
「ごち会コース」を一つ、つくるのに2カ月以上かかるという。まず自分たちで数百店舗をリストアップし、それを絞り込んでから実際に足を運んで料理を食べ、お酒を飲む。見極めるポイントは「料理にもお酒にもストーリーがあるかどうか」(東さん)。いいなと思ったら店長さんに自分たちの活動内容を説明し、「ごち会コース」づくりに協力してもらえないか「告白」するという。
店長さんからOKが出たら、お店の看板商品をごち会コースの中に入れてもらったり、「使っているソースは何か」など細かい話を聞いたりして、「ごち会コース」の内容を詰めていく。とても手間のかかる活動だ。


「大切なことは、私たちのコンセプトにお店が共感してくれるかどうかです」と東さんは話す。「料理で勝負したいと考えるお店の方がご協力は得やすい」そうだ。
これまで実際に足を運んだ飲食店は100軒以上。延べ30軒近くのお店を紹介してきたが、そのうち個人店が廃業するなどして現在の軒数になっている。そんななかで目に見える成果としてまとまってきたのがメニュー表だ。

表紙は耐久性・耐水性にすぐれた「ライメックス」という紙を使い、ソースがこぼれても拭き取れるようにした。中面は手触りがよい白い紙を使っている。表紙はすべての店で共通、「ごちそう会」のSNSにアクセスできる情報を入れた。中面はお店ごとに違う内容で、お店がどんな思いを込めて料理とお酒を提供しているか自分たちで取材して紹介。また料理とお酒のマッチングなどを書く。
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