フード&テクノロジー

農と食の進化に“効く”、レーザー通信技術とは?

NTTグループのICT企業が農業に進出した理由

文/写真(特記なき写真):高下 義弘 06.13.2017

食材の特性を活かしたレシピを食卓に

──この品質検査を通じて、どう事業として展開しようとしているのですか。

酒井:4月から9月末までネット上で行っている「時短料理キャンペーン」を足がかりとして、事業展開の可能性を探ります。

このキャンペーンでは、野菜のネット販売サイト「ザファーム・ウェブショップ」と、そこに掲載する「ソラレピ」のレシピ集を軸に据えています。

キャンペーンで販売する野菜は、生野菜の「あまばんか」という糖度の高いミニトマトと、冷凍野菜6種類です。これらの野菜は農園を運営するザファームさんが販売するのですが、当社が分析した成分情報を、ネット通販サイトに表示しています。消費者の方は、野菜を購入する時にこの成分情報を参考にできます。

キャンペーンで売っている冷凍野菜と、ザファームが運営する販売サイト上における分析結果の表示例
キャンペーンで売っている冷凍野菜と、ザファームが運営する販売サイト上における分析結果の表示例

また通販サイトからは、ソラレピによるその野菜を使ったオリジナルレシピへのリンクが張られています。レシピはソラレピ所属の管理栄養士さんが開発したもので、糖度が高いとか、特定の栄養素が優れているといったような、ザファームさんの野菜の特徴を活かしたレシピになっています。

「ソラレピ」上で掲載している、キャンペーンと連動したオリジナルレシピの例。
「ソラレピ」上で掲載している、キャンペーンと連動したオリジナルレシピの例。

今回のキャンペーンで扱っている冷凍野菜は、農家さんが旬の時期に収穫した栄養素の高い野菜を、細胞膜を壊さない冷凍技術で加工しています。しかも独自の脱水技術を使っているため、生野菜の食感を損なっていません。切ったり刻んだりする手間が不要ですから、仕事と家事の両立で忙しい、けれども家族の健康と味にも気遣う主婦層に特に支持されるとみています。

意識の高い消費者は、従来のレシピ情報では物足りない

酒井:私がこの事業を手がけて分かったことなのですが、どんなレシピでもやっぱり素材が命なんです。例えばキャンペーンでは一つ「あまばんかのおひたし」というレシピを推しているのですが、このレシピで使うトマトは、ザファームさんで売っているあまばんかのような甘いミニトマトであることが大事なんです。酸味の強いトマトだと、このレシピの良さが活きてこない。

──同じ野菜でも、レシピによって向いているものと、向いていないものが明確に別れているということですね。

酒井:はい、素材とレシピの組み合わせが、料理の最終的な仕上がりに大きく影響してくるわけです。しかし、この辺りの情報やノウハウが、従来のレシピサイトではあまり明示されていません。なので「レシピ通りに作ったのにおいしくない」という事態がしばしば発生します。

食に関する関心が高まっている中、今後は従来のレシピサイトの情報だけではもの足りない、と感じる消費者が増えてくるでしょう。そうなると、同じトマトでも、今買おうとしているトマトの糖度や栄養分が実際にはどうなのかを知りたい消費者が相対的に増加するはずです。

今回のキャンペーンを通じて、感度の高い消費者の動向をつかみ、食分野に関するサービスを拡充しようと考えています。

生産者、流通、食卓を結ぶ“線”の最適化を狙う

──ICTの会社として、どんな工夫をしようと考えていますか。

酒井:食品品質のモニタリングサービスとして拡充していきます。まずは野菜の品質検査サービスを継続し、クラウドサーバー上に野菜のデータを蓄積していきます。

次の段階として、これらのデータを、他のデータと組み合わせて分析を進める計画です。例えば気象のデータや、生産者さん側で得られた土壌のデータなどですね。これらを総合的に分析することで、気象や土壌の条件によって野菜の品質がどう変わるかという傾向を割り出していきます。

さらには消費者の販売データを掛け合わせて分析していく構想です。そうすれば、気候などの外部条件と野菜の品質、それらが売り上げにどう反映したかといった全体像が見えてくる。これによって、生産者は消費者の好みに応じた野菜をどう作り分ければ売れるのか、といったマーケットインのアプローチができると見ています。

──生産側における野菜や土地に関するデータ、流通における販売データ、販売動向という消費者のデータを集めることで、3者を結ぶ線の最適化を図ろうというわけですね。

酒井:はい。生産者と流通側に対しては、しっかり売れる仕組み作りで貢献できます。逆に消費者に対しては、欲しい野菜が手に入りやすい環境作りで貢献します。さらにはレシピ通りに作れて美味しくなる。これはレシピ開発者にとってもうれしいはずです。こうした各者それぞれのメリットを、テクノロジーの力を使って支援していきたいと思っています。

高下義弘(たかした・よしひろ)
戦略ライター/編集者

1974年生まれ。1998年に日経BP社に編集記者として入社。「日経コンピュータ」「ITpro」で経営改革と情報システム、プロジェクトマネジメント、ヒューマンマネジメント分野を追う。2010年からフリーランス。経営と技術、個人と組織、科学と芸術など、異分野が重なり合う領域を探索することに関心を寄せる。

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