じぶんマネジメント研究所

心のコップにネガティブを溜めないために

「勇気づける上司」になる方法・前編

文:高下 義弘 03.23.2017

いい仕事をしたいあなたに向けて、ヒューマン・マネジメントのヒントを送る本コラム。上司と部下のコミュニケーションを円滑にするために、まずは「勇気づける上司」になる方法を3回に分けてお伝えしたい。異動、昇進昇格、組織変更で何かと気ぜわしいこの季節、あらためて押さえておきたい“部下マネジメント”の要諦を、識者がアドバイスする。

「心のコップ」の表面張力が限界を超えると……

中尾さんは気持ちを受けとめた結果起きた部下たちの変化を、冒頭で紹介した「心のコップ」というメカニズムを使って描写する。

心のコップになみなみとネガティブな感情が注がれている状態は、水の表面張力でようやく溢れるのが防がれている様子そのものだ。ちょっとの刺激でも、表面張力が耐えきれなくなってあふれ出す。

バリバリ働いていた社員が突然うつになる、あるいは突然キレるという現象は、心のコップの例えを使うとうまく説明できる。「ほとんどの場合、プツンと切れることになった直前の刺激は、本質的な原因ではありません。心のコップにネガティブな感情を溜め込ませるシステムや環境が問題だったはずです」(中尾さん)

先の中尾さんによるパワハラ上司と部下たちの話をこの構造で説明すると、部下たちは最初、パワハラ上司のマネジメントによって、心のコップにネガティブな感情がなみなみと注がれていた状態にあった。そして当時の中尾さんは、社員一人ひとりの心のコップをクリアにする作業を行ったわけだ。

心のコップに溜まった感情を吐き出してクリアになると、人は自然と物事を冷静にとらえたり、前向きな行動を起こしたり、新しい価値観を受け入れたりするようになる。「パワハラ上司の部下たちが“復活”し、業務改革プロジェクトでチーム力が上がった理由の一つはここにあります」(中尾さん)

(中編に続く)

中尾英司(なかお・ひでし)
家族カウンセラー
1958年生まれ。協和発酵で4年に及ぶ組織改革のプロジェクトリーダーに抜擢され、システム導入・業務改革・意識改革を成功に導いた後に退職。その体験を書籍『あきらめの壁をぶち破った人々』(日本経済新聞社)に著す。2005年に「酒鬼薔薇事件」を元にした書籍『あなたの子どもを加害者にしないために』を出版し、普通の家庭から闇が生まれた経緯を解き明かす。現在は「個人の自律」「一人ひとりが活き活きと生きる」をキーワードに、親の問題が子に投影される「世代間連鎖」の観点から、個人が抱える問題を解く支援活動を展開している。2010年からは妻の中尾眞智子(家族相談士、認定心理士)と2人体制で「あるがままの自分を取り戻す講座」の開催やカウンセリングを展開している。
http://nakaosodansitu.blog21.fc2.com/
高下義弘(たかした・よしひろ)
戦略ライター/編集者
1974年生まれ。1998年に日経BP社に編集記者として入社。「日経コンピュータ」「ITpro」で経営改革と情報システム、プロジェクトマネジメント、ヒューマンマネジメント分野を追う。2010年からフリーランス。経営と技術、個人と組織、科学と芸術など、異分野が重なり合う領域を探索することに関心を寄せる。
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