じぶんマネジメント研究所

「実績値」の記録があなたの人生を変える

NASAでも使われた手法でワークライフバランスを実現しよう(後編)

文:高下 義弘 / 写真:菊池くらげ 06.27.2017

仕事、転職活動、資格試験、結婚式、家族旅行、引っ越し……あなたの人生は「プロジェクト」で出来ている。ここに米NASAの宇宙開発計画でも使われた「プロジェクトマネジメント(PM)」の知見と手法が効くという。日本の第一人者「ミスターPM」に、PMを個人の活動に適用する「パーソナルプロジェクトマネジメント」の要諦を聞いた。(シリーズその1:後編)

前編からの続き)

──パーソナルプロジェクトマネジメントの手法について教えてください。先日冨永さんが出版された『パーソナルプロジェクトマネジメント 増補改訂版』(日経BP社)に一通りのことが書かれています。「とりあえずここから始めるといいでしょう」というエッセンスをお願いします。

冨永:まずはパーソナルプロジェクトマネジメントが提示しているやり方の中で、なんとなくこれは出来そうだとか、これは気に入ったとか、目の前の仕事に役立ちそうだ、と感じたところから始めてもらえればと思っています。

一番とっつきやすいという観点で言えば、一般的にも普及しているToDoリストの作成と更新がやりやすいでしょう。

プロジェクトは1回きりというのが特徴ですが、ToDoリストはルーチンワーク以外の複数の仕事や案件を漏れなくきちんとこなすための、昔からの知恵といえます。私が教えている大学院生たちも6割以上がToDoリストを作って自分の活動に使っています。

パーソナルプロジェクトマネジメントでは、そこに日程表を加えます。やるべきことをToDoリストに書き込んでおき、リストの中で特に大事なToDo項目だけは別途日程表に書き込んでおいて、「この日までには終わらせる」などとメモしておきます。このToDoリストと日程表が、パーソナルプロジェクトマネジメントの基本的な要素です。

ToDoリストに挙がっている項目の全てを日程表に書き込むと、一覧性を確保するのが大変ですし、変更が起きたときに面倒ですから、普通は別々にしておくといいでしょう。

つまり、「ToDoリストにルーチンワークは入れない」「ToDoリストと日程表を管理対象とする」「日程表に書かないToDo項目があってかまわない」、この3点がポイントです。ルーチンワークはひたすら早く片付けるだけですから。

──ToDoリストと日程表なら普通のビジネスパーソンが実践していることかもしれません。

冨永:はい。ただ、プロジェクトマネジメントの知恵として大事なのが、完了させたToDo項目について、ほんの少しで構わないので、結果を書き加えることです。

基本は、「Done」「完了」などと書き加える。加えて、それが何月何日に始めた項目で、何月何日に終了したのかという日付も入れておくといいでしょう。

だんだん完了までの時間感覚が磨かれる

冨永:慣れてきたら、もう少し細かく項目を入力するようにします。実践される方々それぞれのやり方で構いませんが、私が20年間続けているやり方は次のようなものです。プロジェクトマネジメントの考え方に基づき、ToDoリストを拡張するというものです。これで自分の生産性、つまり「この手の仕事はいつ頃までに終わらせられそうか」という「見積もり」の感覚が養われるようになります。

まず、基本的なToDoリストは次のようなものですね。

1)項目名:A社○○プロジェクトの完了報告書をまとめる
2)期限:6/20
3)済:6/19

これは期限が6月20日までの報告書作成を、19日までに終わらせたという内容です。

私のやり方としては、これを次のように拡張します。

1)項目名:A社○○プロジェクトの完了報告書をまとめる
2)期限:6/20
3)見積もり時間:7
4)完了:50%
5)残時間:3.5
6)実績時間:
7)済:

「見積もり時間」には、そのToDo項目に着手する前に「完了させるまでに、これくらいの時間が必要だろう」と予測した時間数を記入します。

次の「完了」という項目は、その仕事の完了割合をパーセンテージで記録します。だいたいで構いません。

私はこのリストを表計算ソフトでつくっているのですが、その次の「残時間」という項目は、見積もり時間と完了割合から自動的に算出させます。見積もり時間が「7」で、完了割合が「50%」だったとしたら、この残時間には「3.5」と表示されるわけです。これは表計算ソフトの簡単な設定で表示させられます。

──「半分くらい終わった」ということで「完了」という項目に「50%」と入力すれば「残時間」に「3.5」と表示されるので、「報告書をまとめるまでにあと3.5時間は必要だな」という見当が付けられるわけですね。

冨永:はい。さらに仕事を進めてそのToDo項目が完了したら、完了という項目に「100%」と記入したうえで、その仕事が完了するまでにかかった総時間を、「実績時間」という項目に記入します。次のような格好ですね。

1)項目名:A社○○プロジェクトの完了報告書をまとめる
2)期限:6/20
3)見積もり時間:7
4)完了:100%
5)残時間:0
6)実績時間:7.5
7)済:6/19

この例だと、事前の見積もり時間が7時間であったのに対して、実績時間は7.5時間と、30分ほどオーバーした格好になります。

──本人が思っていたよりも手こずって、30分オーバーした。でも期限である6月20日の1日前である6月19日には完了した。そのような記入例ですね。

冨永:はい。私はこの形式のToDoリストを使い始めて、ずいぶんと効果を実感しました。経験上、2カ月くらいこの作業を続けていくと、新しく発生したToDo項目について、おおよそこれくらいの時間がかかるだろうな、という見当が付けられるようになってきます。

──しかし、実績時間や完了の度合いは、そこまで正確に把握できるものでもなさそうです。途中でめげませんか。

冨永:パーソナルプロジェクトでは、「だいたい半分くらいまで終わったかな」とか、「だいたいこれくらいの時間がかかったな」というおおよその数値でも構わないとします。

ピルゼンアレイ