塩見なゆの一寸一杯

神田「藤田酒店」:「大人の駄菓子屋さん」的な懐かしさを楽しめる憩いの場

文/写真:塩見なゆ 06.11.2019

平日の夜は多くの会社員で賑わう東京・神田(千代田区)。周辺のオフィスビルに勤める人や、隣接するビジネス街の大手町からも今夜の一杯を楽しみにたくさんの人が訪れます。大衆酒場から立ち飲み、そしてオシャレなビストロまでお店の種類は様々ですが、軽く一杯を楽しむならば「角打ち」(酒店の店内で買ったお酒を飲むこと)という選択肢はいかがでしょう。酒場案内人の塩見なゆさんが紹介する銀座線の沿線酒場、第3回は会社勤めのお父さんたちに人気の街・神田の「藤田酒店」です。

神田駅西口、出世不動通り沿いにある昭和3年(1928年)創業の酒販店「藤田酒店」は、いまでは珍しくなった酒販店内で飲酒できるお店です。こちらは、笑顔が素敵な3代目ご夫婦が迎えてくれます。


木造2階建て、昭和中期の酒販店の佇まいを残しています。風情ある建物はそのままに2013年に立ち飲みコーナーを整備し、最近は店奥の倉庫スペースも立ち飲みスペースとなりました。

職場、家庭に次ぐ、サードプレイスのような居場所

利用方法は簡単です。店内に並ぶお酒や乾き物の中から好きなものを選んで、キャッシュオンでお支払い。あとはお好きなスペースでどうぞ、というスタイルです。びんビールや缶チューハイは自分で冷蔵庫から取り出すのですが、これが子どもの頃の駄菓子屋さんの記憶と重なってなんだか楽しく感じます。



営業は17時から。人々が忙しく働いていたオフィス街も、夕暮れとともにゆったりとした時間の流れに変わり、定時退社してきた人がひとり、またひとりと藤田酒店を訪れては、びんビールを手に取り、一日の疲れを癒すように喉を潤しています。

スーツ姿のお父さんたちで賑わうお店で、会社の飲み仲間数人でやってくる人も多く、先輩に教えてもらい以来一人でも来るようになったという若い人の姿も増えています。女将さんがカウンターに立ち、笑顔いっぱいで接客されているので、初めての人でも入りやすいのもポイントです。お酒が好きならば、老若男女、みんな楽しく過ごせます。


お一人だとカウンタースペースで、グループの場合はテーブルコーナーと分かれていて、いずれも立ち飲みではあるものの、居心地が良くてつい長居してしまいそうです。初めての人も常連さんも一緒なって楽しむカウンターは、見知らぬ人とも打ち解けて話せる不思議な空間。ここで仲良くなって、お酒の話に花が咲くことも多いようですね。仕事の立場を抜きにして、ここはフラットな付き合いができる場所。職場、家庭に次ぐ、サードプレイスのような居場所に思えます。

ピルゼンアレイ