ネオンとオンナ

インフルエンサーになりたい病

文:鈴木 麻友美 01.31.2019

コンテンツ作りよりもフォロワー作り

大人になると人は、点よりも線の願いを抱きがちになる。「歌手になりたい!」「プロ野球選手になりたい!」でなく、「歌手になって財をなしたら土地を転がしてあまり働かずに海辺でぼんやり暮らしたい」となるように。

インフルエンサーの狂騒は今のところは点に近い。その先を線で見せてくれたロールモデルがまだ少ないのもある。そのロールモデルが増えていくと、ちょっとしたイロモノ扱いから普遍的な新しい生き方へとポジションが変化していくのかもしれない。

ちなみにSNSの特性によって、「インフルエンサーになりたい病」の発症形態は違う。Instagramの場合はシンプルで自撮りやワンショットが増える。要するに投稿によって企業からお金をもらうことが主軸となるので自分にフォーカスしていく。一方、Twitterは抽象度を上げて共感を引きつけるような発言が増える。投稿そのものがお金になるのではなく、共感で獲得したフォロワーをメディアにしクラファンやTwitterの外のビジネスにつなげて自己実現をすることが目的だからだ。

ところで最近のTwitterの「ネオインフルエンサー」市場は、核となるコンテンツ作りではなく先にフォロワーを増やすところから始まるという指南もあるらしい。フォロワーを増やしてPV増やして……といった具合だが、そのためにオンラインサロンに入って有名人と絡みノウハウを学んだり、というノウハウが広がってるらしい。

なんだか就職活動時代の自己PRの書き方の参考書やセミナービジネスを思い出す。会社員が「脱社畜」のためにSNSを使ってインフルエンサーに成り上がろうとするのは、第二の就職活動みたいなものなのかも。

そんな感じで、第三次性徴的な様相で人を駆り立てるSNSは、すんごく本能にダイレクトな存在だ。電話やメールといった通信手段は人のコミュニケーションを変えたけど、自意識を変える点でSNSは通信手段というより道具や環境なんだなと改めて思う。

完全変態願望を刺激したトリガー

先日、とあるテレビ番組で、電気もガスも水道も使わない、比較的原始的な生活をするアフリカの部族のひとりの若い女性に対して、100円ショップのグッズを色々とプレゼントし生活をしやすくしようという企画があった。

例えば、灯りは火しか持たない彼女にソーラー発電のライトをあげたり、調理器具をあげたり、基本は部族の長老しか行けない都市部のスーパーに彼女を連れていったり。面白かったけれど、私は内心とてもドキドキしながら観ていた。

部族全体でなく、(名目上)彼女個人にあげたらば生活を変える以上に、彼女の自我やマインド、他者との関係性をも変えてしまうんじゃないか。

でも文明の利器だらけの今の日本だって、マインドが変わってしまうトリガーであふれている。前述のSNSもそうだし、シンギュラリティなんて人にどう作用していくのかもっとわからない。完全変態をする・しない、あるいはサナギなのに蝶のふりをする擬態といった具合に、向き合い方の選択肢もどんどん増えるだろう。

自分も結局、第三次性徴に憧れ、でも変態の仕方もよくわかっていないイモ虫かもしれない。インフルエンサーの世界では多動とかやったもん勝ち、出る杭は打たれろ理論が強いので、私のように特に何もせずただ観察・批評している人は完全に悪者であり「乗り遅れた人」とうつるだろう。でもそのインフルエンサー的な人と我々凡人の間に意識の格差や、観察者と被観察者という立場の違いがあるからこそ、Twitterは盛り上がる。結果、その意識の格差こそがインフルエンサーをインフルエンサーたらしめている所以でもある。(おしまい)

鈴木 麻友美(すずき・まゆみ)
1983年、神奈川県生まれ東京都在住の会社員。テレビ局勤務。赤ちょうちんと茶の湯と蕎麦が好物で夜はたまにクラブDJに変身。都会に疲れしばらく海辺ぐらしをしていたが、現在都内に仮住まい中。本コラムではTOKYOに浸かりつつ距離もとりつつ、愛と諦めを持ってTOKYOのヒト・モノを観察します。
Twitter/Instagram @kingmayummy
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家飲み酒とも日記