ネオンとオンナ

ゲス不倫時代における「カラ嫉妬」の壊滅的インパクト

高スペックT君をつかまえたゆるふわ妻が見せたもの

文:鈴木 麻友美 02.16.2017

不倫にはいつの時代も被害者がいる。が、同情したいのは「なんもしてないのに、ただ疑われる層」。みんなしてるからあなたもしてる/するでしょ許せないわムキー!理論を持つパートナーにより、このサイレントマジョリティが生み出されている。嫉妬心のムダづかい、「カラ嫉妬」について考えてみた。

カラ嫉妬で周りを巻き込んだ「かにさん」の話

わたしがこのカラ嫉妬による、サイレントマジョリティ被害者の不条理を最初にはっきりと認識したのは10年近く前。東大卒で外資系コンサル勤務の友人T君というのがいた。高スペックなT君だが、当時26歳くらいでほぼ女性経験が無かった。お世辞にもイケメンではないしトークがおもしろいわけでもない、友人としては適度にいじりがいのある「いいやつ」だった。

そんなT君に彼女ができた。ゆるふわのいわゆるスイーツだった。

T君が彼女について話すエピソードの端々にハメられてるんじゃ感を抱いたものの、本人が幸せならまぁいいやと思い放っておいた。ゆるふわちゃんは、仕事を辞めて専業主婦になりたがっていた。

2人は、光の速さでデキ婚をした。

ゆるふわに見えた彼女の内に秘めた結婚への執念は相当のものだったようで、デキ婚の経緯を聞いた我々はT君を離さなかったゆるふわ妻に「かにばさみさん」略して「かにさん」というあだ名、いや称号を送った。実際、その表現がふさわしいほどの手腕だったらしい(察してください)。T君的にもいろいろ青天の霹靂だった模様。

で、かにさんは無事専業主婦になり、2人は着実に幸せな家庭を築いていったのだが、このかにさんがとんでもないやきもち焼きだった。

数年後、T君とその男友達と私という、1ミリも色気が無いシチュエーションで飲んでいる時にも、かにさんからガンガンいまどこ連絡が来る。メールや電話の間隔は徐々に短くなり、途中男友達が電話に出て「僕らと飲んでるだけなんで許してやってくれ」と言ったりしていたが、ついに彼は「嫁がこわい」と帰ってしまった。

残された我々は、「あいつ、いい奴だったのにな」と通夜のような会話を繰り返しながら、T君のフェイスブックページを開いた。彼のページはかにさんのタグ付け投稿で埋まっていて、我々はそれを何ともいえない気持ちで眺めた。

どう説明してもカラ嫉妬する本人に激怒されるというオチ

彼のようなカラ嫉妬を受ける人たちは、いくらパートナーに「浮気するわけない」「あなたしかいない」と説明しようが信じてもらえないらしい。

わたしはそういう人たちに「第三者として疑いを晴らしてあげたい」とおせっかいBBA的な提案をしたことが何度かある。わたしだってカラ嫉妬するし、持ちつ持たれつだし。

で、どう説明するかイメトレしてみた。

私「彼はあなたを愛しているし絶対浮気とかしないからもうちょっと信用してあげて」
妻「そんなの信じられない。彼に悪い虫がついてほしくないの」
私「大丈夫、彼にはあなたしかいないから」
妻「そんな……でも、根拠は?」
私「正直、彼はモテないので安心してください。そして万が一イケたところでその相手はイケちゃったレベルのため長続きもしないと思います。以上の理由で、ダブルミーニングで『あなたしかいない』と」

ダメだ……絶対に言えない。疑いは晴れても一生恨まれる自信がある。説得力を増す言い方をすればするほど相手に激怒されるのが関の山だ。

実際、私の友人美女Mちゃんはこの論法でカラ嫉妬の被害者となった。

ある日、仕事上LINEでよくやりとりする男性の妻から、完全なる濡れ衣で疑われ、LINEではなくフェイスブックのアカウントをつきとめられて直接「うちの旦那とどんな関係ですか?あなたのせいで揉めています」というメッセージが来てしまったそう。もちろん完全な濡れ衣なので、その旨を大人の対応で返した。

が、その男性がバカだった。奥さんに対して、「Mちゃんみたいなすごい女性が僕みたいなのを相手にするわけが無いんだ!だから安心してくれ!」と言ってしまったらしい。「僕みたいな」のと結婚した奥さんの立場がまるでない。疑いは晴れても後味の悪さが残ったにちがいない。

このあらましを聞いた時に、やっぱり第三者が客観的事実を告げるのはよっぽどの間柄じゃないとよくない、と再認識したのであった。

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