ネオンとオンナ

本当にイイ女が操る5つの「そ」

男を手のひらで転がす女が使うのは、「さしすせそ」ではなく、「そ」なのです

文:鈴木 麻友美 03.05.2018

バリエーションが少なくて、情報量が少ないからこそ美しい

私はしーちゃんの「そ」が聞きたくてお店に向かうのかもしれない。

とりわけ、全ての話に「私はね」「俺ってさ」のカットインが飛び交う情報量の多すぎる飲み会や仕事の後に、足が向かう。あぁ今日も自分は情報を撒き散らしてしまったなぁと反省を抱えながら。

あえてバリエーションの少ない「そ」だからこそ、繰り返される「そ」のニュアンスの違いが際立つ。情報量が少ないからこそ(主体であるしーちゃんが魅力的な女性だから、ってのが前提ではあるが)、想像が増す。ミニマリズムから生まれる、波紋や微差の美というべきか。なんだろう、たとえばもはや茶の湯っぽい。茶席の、気持ちよさと緊張感の同居に似ているというか。

そういえば赤レンガで観たジェレミー・ベランガールの肉体も、パフォーマンスの冒頭で見せたある短い不思議な動作の繰り返しが、後半映像と音楽に昇華される伏線になっていて、それがとても気持ち良かった。舞踊や舞踏はすこぶる疎いし普段は鑑賞にも出かけないけれど、その他あらゆる芸術における、様式美や繰り返しっていう品を守ったうえでそれをあえて壊したり問いかける不調和は普遍的に好きだ。

お酒を飲んだ上でのコミュニケーションや男女の口説きあいの妙は、そんな楽しみかもしれない。私はといえば飲みすぎるとだいたい、ただの不協和音のループになり翌朝はだいたい膝を抱え絶望している。いつの日か、青い鳥を匂わせられるイイ女になれますように。

追伸:

私含めて周囲の仕事に疲れた態度の悪い女たちはというと、母音だけの「あ」行で解決しがち。

あ・あぁ(上の空)
い・いいねぇ(上の空)
う・うける(あんまウケてない)
え・えぇ?(拒否)
お・おぉ~(喜び・唯一の肯定反応)

いざ文字にしたらなんか最低だ。

もうこれからは、母音の相槌は封印しようと思う。

鈴木 麻友美(すずき・まゆみ)
1983年、神奈川県生まれ東京都在住の会社員。テレビ局勤務。赤ちょうちんと茶の湯と蕎麦が好物で夜はたまにクラブDJに変身。都会に疲れしばらく海辺ぐらしをしていたが、現在都内に仮住まい中。本コラムではTOKYOに浸かりつつ距離もとりつつ、愛と諦めを持ってTOKYOのヒト・モノを観察します。
Twitter/Instagram @kingmayummy
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