ネオンとオンナ

今こそ食に、おじさんポエムを

文:鈴木 麻友美 12.28.2018

行き過ぎた美食へのアンチテーゼ?

バブル時代に高級車が持っていた価値やステイタス。バブル崩壊後の猫も杓子もルイ・ヴィトン時代。モノやブランドなど共通化した「羨望のアイコン」が存在しにくくなった今、価値や値段を多くの人に共有されているシンボリックな羨望のアイコン、その一端を人気飲食店が担っている。

予約のとれないお鮨屋さんはレアなバーキンみたいなもの。食べログの点数は誰でも理解できるものだから、高級車やヴィトンなどのモノ以上にわかりやすい。レアな店の予約がとれるということは豊富な人脈も意味する。

「モノの消費からストーリーや体験の消費が重視の時代へ」「ていねいなくらし」などそこかしこで言われるようになったけれど、案外わたしたちはなんにも変わってないんじゃないか。そこから考えると、食べログポエムはもしかしたら、行き過ぎた美食へのアンチテーゼなのかもしれない。しかも、食べログポエムは「評価」をするプラットフォーム上にあって、点数やフォロワーなどわかりやすい基準とは別の軸を築いている。もし、ポエムおじさんがそれを意図的にやっていたとしたら、かっこよすぎるじゃないか。食はあくまで「手段」であり日常を彩る一部というスタンスをとるか、または趣味は食べ歩き!と「目的」化するかで表現の仕方も変わるのだろう。

数値や評価軸からあえて外れていたとしたら

AirbnbやUberなど個人情報を軸としたプラットフォームが増えている。ユーザー同士の評価を信用担保とするこれらのプラットフォームは、新しいタイプの経済圏をつくりだしている。海外ではかつてのカード会社由来とは異なる審査基準の信用情報もできつつある。

人気インフルエンサーたちが言う、これから到来するであろう「個人の信用力」がものを言う時代。それは「個の解放」や「特定の企業にとらわれることからの自由」を意味するらしい。

ちょっと大きく言えば、「産業社会の個人化」とも言うべきだろうか。個人のパワーが企業や社会に対して相対的に強くなった結果、個人のブランド化がものを言う時代。終身雇用が崩れてフリーランスが増えて……となると一生モノの価値は、個人のブランド、というロジック。

「フォロワー数が資産価値だ」と主張する自己啓発話も出てくるほど。情報銀行などというものも出てきている昨今、ちょっとしたディストピアなSF小説を思わせる。星新一にショートショートとして書いてほしい。

その世界で為政者側にまわりたい人がバズろうとしてTwitterには名言があふれるようになってきた。そういう世の中だったら、私は会社に縛られていても匿名性に守られる方が息苦しくないし、気が楽なようにも思う。

そう考えると、フォロワーも何も意識してないように見える食べログポエムには、ますますアンチテーゼであることを勝手に期待してしまう。もう私の思いというか郷愁みたいなものを勝手にポエムに託すとする。インターネットの桃源郷として、数値や評価軸から外れていくものたちの旗手として、食べログポエムやそれなるものをあがめていきたい。

と、妄想なのかパラノイアなのかが暴走してしまったが、そうは言っても私は食べログのヘビーユーザーだしあの数値は信用している。行きつけのそば屋のページをたまにのぞいては、点数が上がっていると自分の買った株が値上がりするかのようにうれしくもなる。そして予約困難店に誘ってもらったら万難を排して家計を気にしつつも財布を握りしめ出掛ける。

と、矛盾だらけなわけですが、2019年はそのあたりもう少しシンプルに生きていきたいと思う所存であります。皆様にとっても新しい年が素晴らしい年になりますように。

鈴木 麻友美(すずき・まゆみ)
1983年、神奈川県生まれ東京都在住の会社員。テレビ局勤務。赤ちょうちんと茶の湯と蕎麦が好物で夜はたまにクラブDJに変身。都会に疲れしばらく海辺ぐらしをしていたが、現在都内に仮住まい中。本コラムではTOKYOに浸かりつつ距離もとりつつ、愛と諦めを持ってTOKYOのヒト・モノを観察します。
Twitter/Instagram @kingmayummy
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家飲み酒とも日記