スーパードライ 進化と創造

人間の五感で「官能検査」、スーパードライの「どこでも同じ味」を守り抜く

構成/写真(特記のないもの):カンパネラ編集部(長坂 邦宏) 06.06.2019

「さらりとした飲み口、キレ味さえる」と表現されるスーパードライの「辛口」は、どこで飲んでも同じ——。発売以来30年以上にわたり、スーパードライの品質管理は磨き上げられてきた。不変である「辛口」という特性をいっそう明確に実現するためには、人間の五感による確認がどうしても欠くことができないという。

(前回の「辛口の再定義」はこちら

ビールのシェアNo.1の「アサヒスーパードライ」は大びん(633ml)に換算して国内で1年間に15億本以上飲まれている。しかも、その味は「どこでも同じ」なのだという。1987年3月の発売以来、ずっと同じ味を求めて厳しい品質コントロールが行われてきた結果だ。アサヒビールの高い品質管理は他より抜きん出ていると言われ、定評がある。

「さらりとした飲み口、キレ味さえる」と表現されるスーパードライの「辛口」。それを支えてきたのは、原料確保、醸造をはじめとするすべての製造工程に関わるハイレベルな生産技術に違いないが、味の基準を確認するための検査手法の役割もまた大きい。そして、技術がどんなに進歩しようと、最後は人間の五感を使った「官能検査」の存在なくしてビールという嗜好品を完成させることはできない。

アサヒビール株式会社イノベーション本部酒類技術研究所 所長で官能検査に30年間携わってきた上村和彦さんに話を聞いた。

自信を持って「どこで飲んでも同じ味ですよ」と言い切れる

──茨城工場(茨城県守谷市)の工場見学をしたとき、製造されたビールを「パネリスト」と呼ばれる専門家が試飲してチェックする「官能検査」があると知りました。その話を詳しくうかがいたいのですが、その前に、ビールの品質はどう保証されているのか、その仕組みから教えてください。

アサヒビール株式会社イノベーション本部酒類技術研究所 所長 上村和彦さん

上村和彦さん(以下、上村) ビールの品質検査には「化学分析」と「官能検査」があります。化学分析は様々な分析機器を使って客観的にデータを拾っていく方法です。機器を使いますから、当然、多くの分析項目を効率よく検査することができます。私たちが目標と定めた数値、たとえばビールの色の濃さ、苦味の強さ、アルコールの量など化学分析する項目は70以上あります。

それに対して、官能検査は人間の五感だけを頼りにビールの品質を検査する方法です。色や味や香り、のどごしなど30近くの検査項目があります。

両方とても大切な検査なのですが、現在の分析技術だけではビールの味や香りを100%再現する、あるいは表現することはできません。ビールは嗜好品ですから、いくら分析技術が進歩しても、最後は人が評価することが必要だと思っています。ですから、ビールが狙った目標に対してどこまで合致しているのか、日々、人がチェックしているわけです。

官能検査でビールの色を確認している上村さん(写真提供:アサヒビール)

──スーパードライの中長期のブランドスローガンを「THE JAPAN BRAND」と設定し、「辛口」のうまさを高い品質レベルで保つと宣言しました。その背景に、スーパードライの味の目標値や検査技術について大きな変化があったのでしょうか。

上村 味の目標と定めた数値はいっさい変えていません。色の濃さ、苦味の強さ、アルコールの量といった「目標の中心値」は1987年3月の発売以来、同じです。ただ、中心値からの振れ幅は年々改善されていて、お客様に自信を持って「どこで飲んでも同じ味ですよ」と言い切れるようになったタイミングで「THE JAPAN BRAND」宣言が行われたという言い方が正しいかもしれません。

私はこれまで30年間、官能検査に携わってきましたが、今のスーパードライは味のバラつきが一番小さいと自信を持って言い切ることができます。

仕込釜から仕込槽、麦汁ろ過槽などの温度管理や原料の管理をコンピューターを使って厳密にコントロールする。1日24時間を3交替の体制で麦汁の仕上がりを確認している(写真:茨城工場)。製造・分析の両方を担う「シンキング・オペレーター」体制の導入により、品質が飛躍的に安定するようになったという

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