カレースター水野仁輔が明かす、モテるバターチキンカレーのつくり方
第1回:タンドーリチキン&チキンカレー特別レシピ(後編)
カレーとビールに徹底的にこだわるこのコラム。執筆するのは、その筋では超有名、東京カリ〜番長改めカレースターの水野仁輔さん。第1回は、タンドーリチキンとチキンカレーのとっておきのレシピをご紹介。
(前編はこちら)
いよいよ、スパイスの登場です。用意するのは……。
ターメリック。
レッドチリ。
クミン。
コリアンダー。

ぼくはこの4つのスパイスをカレー四天王と呼んでおります。この4つのスパイスだけで、立派なカレーが作れちゃうからです。
今回のレシピ、もし4つのスパイスがおうちになかったら、カレー粉大さじ2杯を、マリネ液に投入すれば、ちゃんとタンドーリチキンができます。
でも、せっかくだから、この連載を読んだひとは、スパイス四天王を買いそろえておいてください。ほかのカレー料理にも使えますから。どこのスーパーでも売っているはずです。ブランドはさしてこだわる必要はないです。ちなみにぼくは、インドの貿易商から直接新鮮なやつを買っています。香りが全く違う。ズルいですね(笑)。
カレー四天王を加えてきっちり混ぜる
じゃあ、スパイスをくわえましょう。

ターメリックを小さじ1/2。
レッドチリを小さじ1。
クミンを大さじ1。
コリアンダーを小さじ1。

なお、お子さんや辛いのが苦手な人むけのレシピとしては、レッドチリをパブリカパウダーで代用すれば、風味はそこなわず、辛さを抑えることができます。
スパイスを投入したら、きっちり混ぜてください。これでマリネ液の完成です。

先ほどの鶏もも肉、たぶんまた水分が出ていますから、もう一度ふきとってください。そして、この鶏もも肉を、ボウルの中のマリネ液に漬け込みます。ちょうど鶏肉の味噌漬けみたいな感じで、マリネ液を肉の裏表にしっかりすり込んでください。

ヨーグルト50gでは少ないかも、と不安に思ったマリネ液が、きっちり600gの肉を覆ってくれました。
このマリネした肉の上からラップをします。ボウルの上からではなく、肉を直接密封するように肉に貼り付けて、空気を抜いてください。そのほうがよくマリネ液がしみ込みます。

この状態のボウルを冷蔵庫に入れて、最低でも20分ほど寝かしてください。
水野仁輔のカレーうんちく「流派が2つある」
さて、20分時間ができたので、ビールでも飲みながら、カレーのうんちく、語ります。しゃべり始めたら、20分では終わらないかな(笑)。
タンドーリチキンには流派が2つ。カラッとさせる派としっとりさせる派があります。
本場インドはもっぱらカラッとさせる派。タンドーリチキン発祥の店として名高い北インド・オールドデリーの老舗レストラン「モーティマハール」に取材したとき、タンドーリチキンの焼き方に驚きました。焼き上がりまであと数分、というときに、窯から鶏肉を外に出しちゃう。すると肉汁がぼたぼた落ちるんですが、構わず高いところに鉄串ごとひっかけて干すんです。
「肉汁がもったいない!」ととっさに思いました。そもそもタンドールで焼くときは、肉を串刺しにして、宙ぶらりんで火を通すわけだから、それだけでどんどん肉汁や脂分は下に落ちちゃっているんです。
でも、シェフはこう言うんです。「カラッとした仕上がりにこそが本当のタンドーリチキンだ」と。
たしかにインド料理店で食べるタンドーリチキンってカラッとしていると思いませんか? パサパサしていると感じた人も多いかもしれません。
僕は自宅にドラム缶を改造した特注のタンドールがあるんですが、一般家庭でタンドーリチキンを焼くときは、オーブンや魚焼きグリルなどを使うことになります。そのとき、網の上において焼くと、肉汁が適度に下に落ちるので、ちょっとインド風のからっとした仕上がりになります。
一方でしっとり派のタンドーリチキンは、インドではあまり見かけません。しっとり派は日本人好みの味です。
アルミホイルの上や耐熱皿にマリネした鶏肉を直接おいて焼く場合、肉汁は逃げ場がないため、焼き汁(ソース)が残って肉をしっとりさせるんですね。アルミホイルで包み焼きにしたら超しっとりに仕上がります。こちらのほうが好きな日本人、多いかもしれません。