海外酒場事情

大草原の羊の肉を豪快に放り込むモンゴル鍋と馬乳酒を味わう

文:中村 正人/写真:佐藤 憲一(特記なき写真) 02.06.2019

今年の初め、中国内モンゴル自治区のフルンボイル市に住む友人から年始の挨拶が届いた。中国SNSのウィチャットで送られたメールには、冬のナダムを撮った写真が数多く添付されていた。数年前、この地を訪ねて味わった豪勢なモンゴル鍋や馬乳酒のことが急に思い出された。今回は草原に暮らす遊牧民の冬のグルメとお酒の話をしよう。

ナダムとは、モンゴルの伝統的な祭りで、ふつうは夏の訪れを祝って7月に開催される。かつて大草原の各地で別々に遊牧を営んでいた彼らはこの時期、一堂に集まり、自由市場を開いて物々交換を行っていた。だから、ナダムというのは夏祭りのことだと思っていた。

ところが、日本留学経験もある友人から届いたのは、雪で覆い尽くされた平原で繰り広げられる祭りの光景だった。彼女によると、例年マイナス40度近くになるこの時期、「今日はマイナス24度で、雪も少なく、少し暖かい」という。

周辺はどこまで行っても何もない大平原の雪原が祭りの会場となる。ドローンで撮影されている(写真提供:海鴎)

民族衣装を着飾り、伝統の祭り「ナダム」に集う人々

冬のナダムでは、夏と同様、さまざまなイベントが繰り広げられていた。厳寒の雪原でモンゴル相撲の取り組みがあり、競馬やアーチェリー、スキー、馬頭琴の演奏コンテストも行われたそうだ。

この時期、長くて暖かい冬毛に覆われるラクダに乗るモンゴル族の人たち(写真提供:海鴎)
防寒のため、モコモコの民族衣装で身を包み、厚い帽子を被って会場に向かう(写真提供:海鴎)
会場には馬のモニュメントが置かれ、松明が燃やされる(写真提供:海鴎)
モンゴルの子供たちも伝統衣装に着飾っている(写真提供:海鴎)

2年前の夏、車を1週間ほど借り切ってこの地を訪ね歩いたことがある。夏は一変して40度近くにもなる草原に点在するパオを訪ねて、アポなしお宅訪問を試みたところ、ツァイ(ミルク茶)で歓迎されたのは、いい思い出だ。

今日モンゴルのメインランドと中国領に分かれて暮らす彼らだが、中国側の人たちの大半はすでに都市で定住生活を送っている。21世紀の内モンゴルには風力発電の電動機や巨大な石炭工場のような人工物が多く、興ざめな感じもあるのだが、それでも突然、絵に描いたような高く澄み渡った空と白い雲、羊がのんびり群れる絶景に立ち会えることがある。

このような土地で、人は何を食べているのか。もちろん、目の前にいる羊である。

夏の日、見渡す限り何もない大平原で羊の群れに出会う

もともとモンゴルの人たちは、羊肉を一口サイズに小さく切り刻み、串にさして焼くような、ちまちました食べ方はお好みではない。豪快に羊の骨付き太ももを塩味だけで焼いたり、茹でたりして食べているのだ。

羊の骨付き太もも肉をそのまま炙り焼きした「羊排」は定番料理

伊東食堂