海外酒場事情

極東ロシアの先住民族ナナイの郷土料理はウオッカが合う

文:中村 正人 / 写真:佐藤 憲一 04.15.2019

先住民族の装飾アートと新石器時代の岩石画

極東ロシアには彼らのような先住民族が多く住んでいるが、なかでもナナイ人の伝統文化、特にテキスタイルのユニークさ、デザイン的な美しさは高く評価されている。それというのも、古来彼らはアムール川に棲むサケなどの魚の皮を素材とした衣服を着ていたからだ。

博物館内にも実物の展示があるが、2015年の冬、パリのセーヌ川沿いにあるケ・ブランリ美術館で、ナナイ人をはじめ、ニヴヒやアイヌなどの極東ロシアの先住民族のテキスタイルをテーマとした企画展「アムール河の美学〜極東シベリアの装飾アート」が行われている。

■ケ・ブランリ美術館の企画展「アムール河の美学〜極東シベリアの装飾アート」のホームページはこちら

パリのケ・ブランリ美術館の企画展「アムール河の美学~極東シベリアの装飾アート」のカタログ
図録にはナナイ人などの魚皮でできた美しい衣装が収録されている
衣装に使われた魚皮は、接写すると、うろこがはっきりわかる

ケ・ブランリ美術館は、ヨーロッパ以外の地で生まれた文明と芸術との新しい関係をテーマに掲げた「原始美術(プリミティブ・アート)」のコレクションが有名で、アフリカやアジア、オセアニア、アメリカ大陸の先住民族の文化を紹介している。なかでも興味深いのが、テキスタイル・コレクションである。それらのデザインには、地域を問わず、呪術的なアニミズムやシャーマニズムの反映が見られるが、極東ロシアにおいても同じである。

ナナイ人の暮らすシカチ・アリャンは人口250人ほどの小さな村だが、もうひとつ必見の場所がある。集落の近くの川岸に、新石器時代の初期(1万2000年前)のものと思われる岩石画(ロシア語でペトログリフィПетроглифы)が多く残されている。ここはかつてナナイ人の礼拝の場だったという。

新石器時代の先住民族アートは世界に共通する世界観が見られる

夏であれば、村の岸辺から小型ボートに乗り、5分ほど川を進むと、大きな玄武岩が転がる岸辺に着く。そこには、ヘラジカやマンモスなどの動物や鳥、人間による狩りの光景、不思議な表情をしたシャーマンの仮面などの絵が描かれている。この新石器時代の遺跡群を初めて日本に紹介したのは、1919年にシベリア調査の旅に出て、この地を訪ねていた著名な人類学者の鳥居龍蔵だ。

伝統グルメと文化を堪能できるシカチ・アリャン村の訪問は、ハバロフスクから車をチャーターした1日がかりの旅になる。現地の旅行会社で事前に手配することになる。

中村正人(なかむら・まさと)
エディター、ボーダーツーリスト
「地球の歩き方」のロシア極東、中国方面を担当。とりわけ国境地帯の動向に詳しい。ウエブサイト「ボーダーツーリズム|国境観光を楽しもう」を運営。国内ではインバウンドツーリズムの取材を続けており、ブログ「ニッポンのインバウンド『参与観察』日誌」を主宰。著書に「『ポスト爆買い』時代のインバウンド戦略」(2017扶桑社)。2018年4月に2泊3日で楽しむ旅行ガイド「Platウラジオストク」(ダイヤモンドビッグ社)を上梓した。
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家飲み酒とも日記