海外酒場事情

懐かしい光景が残る台南で台湾ビールを飲み、駅弁と小吃を楽しむ

文/写真:中村 正人 06.20.2019

コンビニで見つけたご当地ビールのブドウ味

これらの案内書で紹介される台南の数ある名物小吃のうち、ビールに合うのは何だろうか。それは、市街地から少し離れた安平という港町の食堂で食べた蝦捲(シャチェン、エビのロール揚げ)と蚵仔煎(オアチェン、カキ入りオムレツ)だった。このあたりではカキの養殖が盛んで、たくさん獲れるそうだ。

細い入り組んだ路地がどこまでも続く古い町で、17世紀にオランダ勢力を追い出した鄭成功(チェン・チェンコン)の一族が居城とした安平古堡では、彼のイラスト入りの「成功ビール」が売られていた。台湾ビールが製造したご当地ビールである。

安平の周氏蝦捲總店の蝦捲と蚵仔煎を台湾ビールと一緒に
台南のご当地ビールは鄭成功ブランドの「成功ビール」

ご当地ビールといえば、コンビニで見つけたのが、マンゴー味の台湾ビールだ。ブドウやパイナップル味まであった。試しにブドウ味を飲んでみると、意外や甘さは控えめで悪くない。昔飲んだファンタグレープのような口に残るベトツキ感もない。ビールとは別物と思えば、日本の焼酎割りよりいける気がする。果汁6.5%、アルコール2.8%というバランスがいいのかも。


台湾ビールのグレープ味、マンゴー味、パイナップル味は39元(約134円)

今春出版された台湾在住の作家、片倉佳史さんの『台北・歴史建築探訪 日本が遺した建築遺産を歩く』(ウェッジ)に、台湾菸酒有限公司台北啤酒工場のことが書かれていて、施設の一部にビアガーデンがあるというので、後日訪ねてみた。

同工場は1919(大正8)年に設立された、日本統治時代に唯一のビール製造工場だったという。当初は「高砂ビール」と名付けられたが、戦後「臺灣啤酒」と改められた。

台湾菸酒有限公司台北啤酒工場。地下鉄「忠孝復興路」駅から徒歩10分

工場内に直販店があり、同工場で製造する数多くの種類のビールが購入できる。さらに、施設の外のビアガーデンでは生ビールも飲める。たまたまアメリカ人の旅行グループが来ていて、一緒にテーブルを囲んで飲んだ。

台湾ビールは日本のビールに比べ、コクやキレがなく、さっぱりとしており、のどごしや苦味に欠けるというのは本当だろう。だが、この南国に遊びに来ていて、日本と同じ苦味がなくてもそれほど気にならない。台湾の食事にも合っている気がする。

片倉さんが書いているように、台湾には日本統治時代の建築が多く残っている。台南でも、2003年に開館した国立台湾文学館や今年1月に相次いでオープンした美術館1号・2号がある。文学館は元台南市政府庁舎、美術館1号は元警察署の建物をそのまま残しつつ、モダンな装いで増築したものだ。

また1932年に開業した林百貨店という老舗デパートがあり、数年前リニューアルオープンしている。同百貨店のコンセプトは、ズバリ1930年代だ。販売スタッフの女性の制服も、当時の流行に似せた丸襟という徹底ぶり。屋上には当時あった鳥居が再現されていた。パンフレットには「1930年代は台湾にとって現代文明の幕開けだった」と書かれている。彼らにとっても「昭和」はそんなに大切な思い出だったのかとあらためて思った。

いま頃、もう台南は相当蒸し暑いに違いない。でも、また行きたい。台南の小吃で唯一店が休みで試すことができなかったのは、集品蝦仁飯のエビメシだった。ダシの染み込んだご飯にエビがのった一品である。心残りがあるほうがまた行く口実になる。

中村正人(なかむら・まさと)
エディター、ボーダーツーリスト
「地球の歩き方」のロシア極東、中国方面を担当。とりわけ国境地帯の動向に詳しい。ウエブサイト「ボーダーツーリズム|国境観光を楽しもう」を運営。国内ではインバウンドツーリズムの取材を続けており、ブログ「ニッポンのインバウンド『参与観察』日誌」を主宰。著書に「『ポスト爆買い』時代のインバウンド戦略」(2017扶桑社)。2018年4月に2泊3日で楽しむ旅行ガイド「Platウラジオストク」(ダイヤモンドビッグ社)を上梓した。
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