ロジックよりマジック

部下は、女性が9割。~上司がクリエイティブだと女性が活躍する~

文:関橋 英作 06.18.2019

部下は、女性が9割。本のタイトルのようですが、これは本コラムの著者で、数々の実績を残したクリエイティブディレクター・関橋英作さんが体験した「リアル」。関橋さんが試行錯誤を経て獲得した、女性たちのクリエイティビティを引き出すための在り方とは? ロジックよりマジック、最終回。

どこかで聞いたことのある本のタイトルのようですが、私の体験したリアルです。上司は男性・部下は女性という図式ではなく、男性である私の部下は女性が非常に多く、彼女たちの活躍のおかげで今の自分があるという本当の話。最終的にもった感覚は、上司部下というよりチーム同士。楽しかったし、かなり助けられました。いまは、感謝しかありません。

前回のコラム「『人間の五感』VS.『植物の二十感』、どっちがクリエイティブ?」で書いた、植物のクリエイティビティ。その凄さは、ほとんどの個体にいろんなクリエイティブが備わっていて、それを十分に生かしているということ。そのクリエイティブは、まさに女性にオーバーパップしてくると言っても間違いありません。

でも、講座などでクリエイティブの話を持ち出すと、多くの人が逃げ腰になるのはなぜでしょうか。たぶん、クリエイティブは特殊な才能で、アーティストたちのものだと思いこんでいるのです。

しかし、人間種がここまで繁栄した秘密は、クリエイティブにあるのは否定できない事実。ホモサピエンスが登場したときに、脳が劇的に変化を遂げたのですから。

そのとき獲得した能力が、アナロジー。類推、類似、比喩といった違うものの共通点を探したり、他のものに喩えるというものです。

これによって、自然から法則を見つけ科学的思考法を生みだしたり、洞窟の壁に絵を描くことで芸術的技法を獲得したり。音楽、調理、コミュニケーションに気づき、「考える」という哲学的思考をもつに至ったのです。

これらの思考法はすべて想像力が出発点。そこから描き方を発見、向上させる創造力へと飛翔していったのでしょう。想像力のない人間はいません。つまり、クリエイティブはすべての人間に備わっているものなのです。「Everyone is creative.」。

どんな仕事をしている人も、どんな勉強をしている人も、生きている人は、みんなクリエイティブ。その前提に立てば、臆することはありません。

それだけ、クリエイティブは人間社会の奥底まで染み込んでいる。普段は意識しないだけなのです。

女性部下を泣かせてしまって気がついたこと

では、部下は9割が女性の話に戻りましょう。

みなさんが最初に思い浮かべるのが、管理という言葉だと思います。様々な管理方法があるでしょう。

言われたことをきっちりやらせる、効率を優先させる、突飛なことはさせないなどの保守型。経験と知識が豊富な自分が教えてやっているというパワハラ型。勝手にやらせて、結果でばっさりという成果型。質問を繰り返すフィードバック型。なにやらビジネス本に書いてあるような臭いがしますね。クリエイティブとは無縁な感じです。

私は、外資系広告代理店で上司という立場を経験。クリエイティブ・ディレクターというポジションで、制作チームを統率する役割でした。

もともと外資系は女性社員の比率が高いのですが、私の持った部下はなんと9割が女性。羨ましいと思われるかもしれませんが、ご存知のように、多くの外資系女子は意志が強い。なかなか手ごわい相手です。

しかも、部下はコピーライターやアートディレクターなどのクリエーター。さらに主張が激しく、自分の作品にこだわりをもった人ばかり。管理という言葉が不似合いな職場でした。

日本企業においては、管理職になったとたん、現場から離れてマネジメントに専念する傾向が強い。それで、上司VS.部下の構図が鮮明になるのでしょう。しかし、外資系はほとんどがプレーイングマネージャー。上司もチームの一員であることが根づいています。

クリエイティブ部門では、その傾向がより強いので管理職という感覚ではありません。もちろん、私にとって管理は苦手どころか大嫌いな代物。人が人を管理するなんてできるわけがない、と思っていたので外資系でラッキーでした。

それでも、上司をしなければならない日がやってきました。相手は、女性コピーライター。5年くらいの経験者です。ま、コピーの審査でもするような気持ちでやればいいと思い、書いてきたコピーを広げてもらいました。

ここで大きな間違いをしでかす。ネガティブチェックです。

「これは、既視感がある」「これは、表面的で心が伝わらない」「レトリックに走りすぎ」「インパクトがない」「意味が分からない」などなどの、批判。私はアドバイスをしているつもりでしたが、彼女の眼から涙がこぼれ落ちました。そして、怒った顔をしてブースから出て行ってしまったのです。

しばらく、何が起こったのか理解不能でした。次第にまずい!という感情が湧き、彼女を探しましたが、姿が見当たりません。

しばらくして、私のしたことに気づきました。パワハラ型管理です。たしかに指導と管理は紙一重。上から目線が、パワハラを生んだのです。自分でもレビューをしていて、心地悪さを感じていたのは事実です。

もう一つの間違い。プレゼンです。広告制作にとって、プレゼンは死活問題になるくらい重要な会議。クリエイティブに方程式はありませんから、それをクライアントにどう納得させるか。ここも、腕の見せ所です。

とはいえ、プレゼンは経験や場数がものをいう。それでも、担当クリエーターにプレゼンさせた方がいいと思い、任せてみました。彼女は、一生懸命にプレゼンしているのですが、見ているうちにこっちがイライラ。思わず口をはさむんでしまったのです。

私としては、助け船のつもりでした。しかし、そうなるとクライアントも私の方に耳を傾ける。ついには納得して、プレゼンは成功してしまいました。ここには、上司という自分はいません。ひとりのプレゼンテーターがいただけなのです。

私は、彼女の顔を見て微笑みましたが、硬い表情のまま。嬉しくないのかなあ、と微妙な気持ちになってしまいました。あとでそれを問いただすと、同じことを言っているのに、結局クライアントも偉い人の話だと納得する。上司がいいところだけもっていくのは、ずるいです、と超不満顔でした。

そして再び気づき。上司でもなければチームメートでもない。熱くなって視野の狭い男になっていたのです。その行為が、彼女の意欲を阻害してしまったのでした。

家飲み酒とも日記