ロジックよりマジック

部下は、女性が9割。~上司がクリエイティブだと女性が活躍する~

文:関橋 英作 06.18.2019

“管理もどき”をやめたらチームが変わった

こんな管理もどきが何回も続き、はっきり気づきました。クリエイティブの仕事をしているのに、クリエイティブと真反対のことをしていると。

そこで、私がクリエイティブであるために気をつけている12の指針を見直しました。

1. 脳に負荷をかける
2. 五感を鍛える
3. 自然と仲良くする
4. 依存体質をやめる
5. 何にでも首を突っ込む
6. 考えるときは子どもになる
7. 知らない人と話す
8. 固定観念を捨てる
9. 論理に縛られるな
10. 非常識を愛せよ
11. 人と違うことを怖れるな
12. クリエイティブは世界を変えると信ぜよ

そうだ、これだ。心が決まりました。オリエン・ブレスト会議には、職種、ポジション、年齢、性別も無関係。同じ担当なので目的・ゴールも同じ。全員が考えてこそ、チームワークなはずです。これこそが、のちに受験のお守りとして成功するキットカットチームの始まりでした。

私がクリエイティブ・ディレクターを務めていたキットカットチーム全員で。彼ら彼女らが、私にクリエイティブなチームの在り方を教えてくれました

まずは、盛り上げオープニングトーク。ファッション、酒、映画・舞台、旅行などを、ため口で話すようにしたのです。クリエイティブ、戦略プランニング、イベント、SP、IT、営業など担当者が全員揃ってワイワイガヤガヤ。ガラス越しの会議室の外から見ると何をやっているんだろうと思われたはずです。

最初はちょっと遠慮気味でしたが、おやじギャグなどを挟んでいるうちに、予想通り出るわ出るわ、仕事モードが吹っ飛んでいく。そこには、みんなから「おっさん!」と呼ばれる私がいました。

ブレストに上下関係も職種も関係ない。あるのは、いかに思ったことを口に出せるか。それができたので、女子たちもおじさんに遠慮がなくアイディアを言えるようになったのです。いま、思い出しても面白かった!

さらに気づいたのは、ファッションのこと。男性は会社に来ていくものを、あまり考えません。営業なら同じスーツ、クリエイティブならジーンズ。面倒くさくないものをルーティン的に着てくる。ところが、女性は全く違います。コーディネートや昨日着たものとの違い、会議の有無、その日の天気、体調などを考慮して決めている。女性は、朝からクリエイティブを発揮しているのです。

外資系で感心するのは、外国人男性は最初にファッションを誉める。色がいい、デザインがいい、気候に合っている、あなたにピッタリだなどと。この一言で、朝から職場はいいムードになります。

チームを意識してからしばらくして、ファッションを変えました。女性陣が反応してくれたのはもちろんうれしいですが、自分がいちばん楽しくなりました

このやりとりから気づきました。男性も会社にオシャレをしていけば、女性は必ず見ていると。それからです、自分のファッションが変わったのは。サラリーマンっぽいもの、おじさんっぽいものはNG。カラフルなものをあえて選ぶ。帽子やバックもひとひねり。世間のトレンドは気にしない。案の定、女性陣はすぐに反応しました。気軽に話しかけてくれるようになったのです。もちろん、自分がいちばん楽しくなったのですが。

みなさんもご存知のように、女性陣は好奇心が強い。映画や芝居、美術館などに行っても7割は女性。その行動力は、男性真っ青です。それだけ、いろんなことのバランスをとるのが上手だし、同時に二つ以上のこともできる。その才能こそ、クリエイティブ。これを抑えつけるほど愚かな上司はいません。

ということで、映画、芝居、ひとり飲み、街の観察、自然との戯れを求めて行くことを勧めました。もちろん、自分の判断で。インプットしないと脳はクリエイティブに働いてくれないのはみんな知っていることですから。


自分のクリエイティブ力がさらに進化した

また、私にとっての大きな決断は、任せることでした。最初のオリエンが済んだら、あとは自分で考え、つくる。プレゼン前日まで、レビューしなくてもいいことにしました。レビューは、作り手の意図の確認と、プレゼンのアドバイスだけ。もし、何かあっても後は私が何とかしようと思って。

カッコよく見えますが、私より本人の方がプレッシャーだったでしょう。それでわかったのは、任せることがいちばん力を発揮する近道だということ。女性たちは、それに確実にこたえてくれました。人一倍のがんばり屋さんです。

こうした女性と普通につきあうことが、私のクリエイティブ力をさらに進化させました。世の中の常識に囚われない生き方。クリエイティブは、自ら問い、考え、つくり、他者に話す、聴くの循環の中にある。ここから、新たな気づきが生まれてくる。

私が狂言を始めたのも、もとをたどればこの頃の経験がきっかけでした

離見の見ではないですが、メタ認知によって視界が広がるのです。きっと、女性はこれを生まれつき知っているのでしょう。羨ましい。

もし、生まれ変わったら、絶対に女性になりたいとマジに思いました。

これによって、男女の垣根がなくなり、個人的な心配事も相談してくれるようになったのです。映画や飲みにも、友だちのように行く。哲学的な話も、おバカな話も壁を感じません。みんな、女性陣のおかげです。いまでは、偏見も差別も全くなく、みんな違うから面白いという価値観が染みつくようになりました。


女性は尊敬の対象です

もし、男性のみなさんの中で、女性をどう管理するかで悩んでいる人がいらっしゃったら、女性の気持ちを、とことん考えてみることをお勧めします。いつもの固まった自分の甲羅を捨てて、自由で柔らかい自分になる。そのために必要なのは、勇気。勇気は、行動と自由をもたらしてくれます。だから、女性から警戒されず、信頼が得られるのでしょう。

女性は尊敬する対象です。女性がこの世界にいなかったら、きっとつまらない世の中でしょう。これが、私の学んだすべてです。みなさんも、いかがですか?

関橋英作(せきはし・えいさく)

1949年青森県八戸市生まれ。外資系広告代理店J・ウォルター・トンプソン・ジャパン(現JWT)に入社し、コピーライターから副社長までを歴任。

その間、ハーゲンダッツ・アイスクリーム、英会話スクールNOVA、デビアス・ダイヤモンド、ネスレ・キットカットなど多くのブランドを育て、広告賞も多数受賞(ニューヨークADC賞、ACC賞、ギャラクシー賞、NYフィルムフェスティバル賞、クリオ賞など)。

特にキットカットでは、いまや受験生のお守りになったキャンペーンを展開。クリエイティブ部門の責任者として、AME賞(アジア・マーケティング・イフェクティブ賞)グランプリを2年連続受賞するなど大成功を収めた。2009年のカンヌ国際広告祭では、日本初となるメディア部門グランプリを、投函できるキットカット「キットメール」キャンペーンで受賞。

現在、クリエイティブ・コンサルタント。ブランディングをする会社MUSB(ムスブ)の代表取締役&クリエイティブ戦略家として、主として企業のブランディング、広告戦略・制作、マーケティングを行う。

そのほかに、東北芸術工科大学企画構想学科教授、木の暮らしと文化を伝える・一般社団法人木暮人倶楽部理事、八戸市任命の八戸大使。企業研修、各種セミナー、講演、執筆などを行っている。

著書に『ある日、ボスがガイジンになったら!? 英語を習うよりコミュニケーションを学べ』(阪急コミュニケーションズ)、『チームキットカットの、きっと勝つマーケティング』(ダイヤモンド社)、『ブランド再生工場―間違いだらけのブランディングを正す―』(角川SSC新書)。『マーケティングはつまらない?』(日経BP社)など。

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