生きるチカラの強い女性へ

処方箋7 女性は、時代や感情に流されず、不動でいるべき!

文:ひきた よしあき / イラスト:神谷 一郎 01.22.2018

仕事一辺倒でキャリアを重ねるのはもう古い? それよりも大切な家族と一緒に豊かな時間を過ごし、人生を謳歌する女性が少しずつ増えている。名スピーチライター・ひきたよしあきさんが、そんなスマートで力強い女性たちに会い、その魅力的な「生き抜くチカラ」を探る。第7回は、女性の「感情に流されず本質を見る姿勢の力強さ」についてです。

世田谷区池尻で、子育てサロン「SVAHA(スワハ)」を営む小林睦子さんは、4人の子どものママだ。スタジオを訪問したときも、6月に生まれた赤ちゃんを抱かれていた。

劇団に所属されていたせいか、声がよく通る。目がキラキラと輝いて入る。この若さで立派なスタジオを持ち、4人の子宝に恵まれている。誰から見ても順風満帆。すると睦子さんは、

「それが違うんです。何度も離婚の危機があったんです」

と、笑顔を返してきた。

危機は、第一子誕生の時に遡る。

夫が愛人を作って、睦子さんの元から消えた。

出産し、おたふく風邪、インフルエンザと立て続けにかかった。やがて精神も乱れ始めた矢先に、

「あなたには、女性を感じられない」

という言葉を残して去っていった。同じ劇団で知り合った人だ。風来坊なことは十分知っている。

睦子さんは、働けなかった。その前に、動けなかった。

「女性は、どっしりとしてなければいけません」

すがるような気持ちで「産後ヨガ」に飛び込み、体力の回復に専念した。

「でも、そのインストラクターが、私より体が硬いんです。決してポーズがきれいなわけじゃないけれど、言葉がすごかった。ヨガの経典って195語のマンダラでできているのですが、そのうちポーズに関することは3つだけ。残りの192は、生き方に関する教えなんです」

睦子さんが「木のポーズ」をとる。木のように動かずにいる。しかし、目の前に動くものがあると心が奪われ、体が揺らぐ。

「人間はね。流動的なものに心を流されるものなのよ。それじゃダメ。女性は、どっしりとしてなければいけません。卵子はひとつでしょ。それに何億という精子が向かってくるんです。男は、流動的なものです。そこに目を奪われることなく、女は不動でいることが大事なんです」

この言葉に、睦子さんは、はっとした。

女は、動かない。流動的なものに、心を奪われない。時代、流行、感情に流されず、本質を見る。

心の闇に「夫を許せない自分」がいた

睦子さんは、変わった。動かないために、活動を始めた。

1年で夫は帰ってきた。睦子さんは、許した。

二人目が欲しいと思った。しかし、どうやってもできない。今度は当時まだ日本には少なかったリストラティブヨガの門を叩く。そこで自分の心の闇に「夫を許せない自分」を見つけたという。ヨガをしながら、泣いた。泣くうちに、闇のうちにある塊が溶けるのを感じた。

ほどなくして二人目の子どもを宿した。

「今は、子宝を授かるヨガから産前産後のヨガ、ベビーマッサージ、幼児から7歳までの教育プログラム、介護、インド占星術と幅広くやっています」

頂いたパンフレットのカリキュラムの充実ぶりは見事なものだ。それもただバラバラにあるのではない。睦子さんが、妊活から子育てまでの期間に必要なものを選りすぐっている。トータルのバランスが非常によくとれている。それも睦子さんが、流動的なものに流されず本質を追い求めた結果だろう。

女は、動かない。

女と妻と母の強さを同時に見た気がした。

ひきた よしあき
1960年兵庫県西宮市生まれ。早稲田大学法学部卒業。博報堂クリエイティブプロデューサー、スピーチライター。学生時代から第8次「早稲田文学」学生編集委員、NHK「クイズ面白ゼミナール」のクイズ制作などで活躍。84年(株)博報堂入社。クリエイティブディレクターとして数々のCM作品を手がける。また、明治大学をはじめ多くの大学で講師を務める。15年、朝日小学生新聞でコラム「大勢の中のあなたへ」、コラム「机の前に貼る一行」を連載。著書に『あなたは言葉でできている』(実業之日本社)、『ゆっくり前へ ことばの玩具箱』(京都書房)がある。
伊東食堂